袱紗の家紋について

冠婚葬祭では祝儀袋(不祝儀袋)は袱紗に包んでお渡しするのがマナーですが、その袱紗に家紋が入っているのを見たことがありますか?
また、家紋入りの袱紗を嫁入り道具の一つとして、ご実家が用意することも多いです。
袱紗は女性に限らず男性にも必要な道具でもあります。
皆さまがお持ちの袱紗には家紋が入っていますか?
また、ご自分のお家の家紋をご存知ですか?
今回終活ねっとでは、袱紗の家紋について解説していきます。
- 袱紗の家紋について
- 冠婚葬祭で使われる袱紗について
- なぜ袱紗に家紋の刺繍をいれるのか
- 袱紗に名前の刺繍も入れるのか
- 結納の時の袱紗について
以上の点を中心に解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。
冠婚葬祭で使われる袱紗

まずは、冠婚葬祭で使われる袱紗について見ていきましょう。
まだアスファルトや石畳もない時代に、お届けする贈り物に砂埃がかからないようにするために四角い布をかけていたのが袱紗の始まりとされています。
金銭を送るようになってからも袱紗が使われているのは、お渡しする相手への礼節を重んじてのしきたりとされています。
また、祝儀袋が汚れたり水引などが折れたりしないようにする実用的な面もあります。
袱紗は慶事なら暖色系、弔事なら寒色系と色を変えて使いますので、そこには細やかな心遣いも感じられます。
慶事や弔事で包み方に違いがあり、包み方にも意味があります。
葬儀ではどう使われる?
では、冠婚葬祭で使われる袱紗は葬儀ではどう使われるのでしょうか?
葬儀では不祝儀袋をお渡しする時だけでなく、法事などで僧侶にお布施をお渡しするときにも使われます。
弔事での包み方は
- 袱紗を開いたら中央からやや右寄りに不祝儀袋を置く
- 袱紗の四隅、右→下→上→左の順に折りたたむように包む
- 右側にはみ出した部分は内側に折りたたむ
となります。
着物でいうところの死に装束の右前であり、三番目にくる四隅の角が下を向いて不幸を溜め込まないという形にします。
受付の前で袱紗をひらくようにして不祝儀袋を取り出し、折りたたんだ袱紗の上にのせたら、お渡しする相手に不祝儀袋の正面が向くようにして両手でお渡しします。
袱紗に包んだままお渡しはしません。
結婚式ではどう使われる?
結婚式の御祝儀袋は水引きに趣向が凝らしてありますので、水引きを保護するためにも袱紗を利用する方は多いです。
慶事での包み方は
- 袱紗を開いたら中央からやや左側に御祝儀袋を置く
- 袱紗の四隅、左→上→下→右の順に折りたたむように包む
- 左側にはみ出した部分は内側に折りたたむ
となります。
着物を着るときと同じ左前になるようにし、三番目にくる四隅の角が上を向いて幸せを溜め込むという形にします。
結婚式などの受付で御祝儀袋をお渡しするときも、袱紗をひらくようにして御祝儀袋を取り出してお渡しします。
なぜ袱紗に家紋の刺繍を入れるの?

なぜ袱紗に家紋の刺繍を入れるのか、疑問を抱く方も多いかと思います。
家紋は多くは祖先から伝わるものとして代々受け継いでいます。
お墓に家紋が入れられていることからもわかるように、家紋はその家のシンボルマークの役割を持っています。
その家の家柄つまりは格式を表し、家紋を見ればその家がわかるとも言われています。
家の歴史だけでなく、家紋自体にそれぞれ意味があり家紋に込められた願いや思いがあります。
家紋が受け継がれることは子孫繁栄の証でもあります。
なので、家紋は和服や袱紗などに入れて人生の節目ごとに使うことで大切にされてきました。
また、嫁いでも花嫁側の家紋が途絶えないように、女性の場合は母方の紋を受け継ぐ習わしもあります。
家紋を区別するために男性は丸で囲んだ紋(男紋)、女性は丸で囲まない紋(女紋)としています。
女性の紋については地域や家によって受け継がれ方に違いがありますが、家紋には長い歴史もあり、今では日本文化の一つになっています。
とはいうものの、実は家紋には決まりごとはなく、ご自分が好きな紋を選んだり家紋をデザインすることもできます。
ただし好きな紋を選べるといっても、皇室家の十六菊の紋と徳川家の三つ葉葵は使用しないのが慣例になっています。
また、袱紗に入れる家紋の場所ですが、包み終わったときに一番上になって見えるように角に入れることになっています。
袱紗に名前の刺繡は入れるの?

続いて、袱紗に名前の刺繡は入れる必要はあるのか、見ていきましょう。
家紋の種類は数千から一万個近くもあり、戦国の時代から褒美として与えた(拝領紋)という歴史もあります。
なので、同じ家紋を使用している人は意外と多いです。
苗字同様にそれぞれの家のものとして使っていても、他家も同じ家紋を使っていたら区別がつきません。
特に袱紗など、色や形、素材にそれほど変わりはないので、間違えないようにするために名前を入れる場合がありました。
なので、必ず袱紗に名前を入れなければならないというものではありません。
ですが、一家に一枚ではなく、大人のたしなみとしてひとり一枚持っておきたいものです。
個人の持ち物として他と区別するためにも、男性なら苗字をまた女性ならご自分の下の名前を入れておくことが多いようです。
家紋入りの袱紗の場合は、家紋の付いている角と対角にあたる角に名前を入れるようにします。
結納の際には家紋入り袱紗を持参しましょう

正式な結納をされるのなら、新郎が持参した結納の目録・家族書・親族書の上にのせるのは家紋入の正絹の掛け袱紗です。
略式で行う場合でも、家紋入りの掛け袱紗は必須です。
今ではもっと簡素化されて結納自体をしないという場合もあります。
ですが、それでも婚約指輪や結納金をご用意する方は多く、その時には袱紗に包んでお持ちになるのが礼儀です。
また、袱紗で包むことは日本固有の「包む」という文化の一つです。
それは礼儀や思いやりの文化ともいわれていますが、大事なのはその行為だけでなくそこに至るまでの気持ちです。
包んである袱紗に家紋が入っているというのは、家柄が良いことの証明だけではありません。
祖先から受け継がれたものを大切にしていることの表れでもあります。
ですので、結納の際には家紋入り袱紗を持参しましょう。
結納も堅苦しいといわれる方も増えて省略する傾向があるようです。
ですが、結納も意味のある大切な日本の文化の一つですので、ぜひ行っておきたい儀式です。
袱紗の家紋についてまとめ

今回終活ねっとでは、袱紗の家紋についてみてきましたが、いかがでしたか?
先祖の思いや願いが込められた家紋が入った袱紗を使うことは、祖先が大切にしてきた細やかな心遣いを受け継ぐだけでなく、そこには豊かに広がる日本の精神文化を感じます。
この記事では
- 祝儀袋は袱紗に包むのがマナーであり、包み方は慶事と弔事によって違う
- 家紋にはそこに込められた意味があり、祖先からのメッセージでもある
- 袱紗に家紋を付けて使うのは、家紋を大切に思うことからきている
- 袱紗は大人のたしなみとして、ご自分用に持っておく
以上のことがわかりました。
祝儀袋を袱紗で包むことは汚れや穢れから守るというだけでなく、慶びや哀しみをともにする意味合いもあります。
袱紗がなくてもハンカチなどで代用することもできますが、もしこれから袱紗をご用意されるなら、できるだけ家紋入りのものを用意したいですね。
最期までお読み頂き、ありがとうございました。