葬儀で使用する樒(しきみ)とは?

「樒」という漢字を見ただけで読めたり、どのようなものなのかを想像できる方は少ないのではないでしょうか。
「樒」は「しきみ」と読み高木の常葉樹で、葬儀の際にお花と共に飾られる木と言えば何となく思い出される方も多いのではないのでしょうか。
葬儀や仏前にも飾られるため木偏に「佛」と書く「梻」という国字まで作られている仏教と所縁の深い木なのです。
今回は終活のテーマとして葬儀で使用する樒について深く掘り下げて解説してゆきたいと思います。
- どうして葬儀で樒を使のか。
- 葬儀で樒をどう使うのか。
- 神棚に供える榊とどう違うのか。
- 樒と使いたい場合はどこで手に入れたらいいのか。
- 京都では花輪の代わりに樒を使用する?
上記のことを中心に解説していきますので、終活で葬儀を考えている方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
どうして葬儀で樒を使うの?

常葉樹なら他にもたくさん種類があるのだから好きな木を使えばいいのではないかと思う方も多いと思います。
実は、樒は葉も花も根もその実も全て有毒で、特にシイの実に似た果実は毒性が強く、誤って食べてしまうと死亡してしまうほど強い毒性を持っています。
では、ある意味こんな有害な樒がなぜ葬儀に使われるようになったのでしょうか。
明治時代に刊行された『和漢真俗仏事編』によればその種は天竺、つまり今のインドからもたらされれ、その花の形が天竺無熱池の青蓮華に似ていることから鑑真和上が日本に来た時に一緒に請来したものの一つであるとされています。
この青蓮華は、仏教では「菩薩の目」に喩えられ、また青蓮華に似ていることから弘法大師空海が密教の修法に使ったために、以後仏前に供える木となったのです。
もうお気づきと思いますが、樒の「密」は密教を意味しており、他にも「仏前草」という呼び名もあるくらい仏教と所縁の深い植物なのです。
また、茎、葉、果実は独特の香気があり、白檀のような香木をほとんど産しない日本では樒を香木の代用として用い、樒の毒気のある香りが邪気を浄める力があるともされているのです。
葬儀での樒の使われ方は?

では実際に葬儀で樒はどのように使われているのでしょうか。
ここでは、葬儀での樒の使われ方について解説します。
門樒(かどしきみ)
門樒は大樒や樒塔とも言います。
門樒は葬儀の際に玄関やお寺の門前に立てます。
また、祭壇の両脇後ろにも二天樒を建てる場合もあります。
樒について先の項でもお話ししましたが、樒には邪気を払う力があるとされているので門樒と二天樒の4つを以って結界を張り、死者を邪気から守る意味合いがあるのです。
門樒を用いるかどうかは地域性によるところが大きく関東ではほとんど用いられませんが、関西では花環や献花よりも丁寧なお供えもとして扱われ、また樒塔には名義の順番もあります。
また、門樒は正月に門松の代わりに立てる寺院もあります。
板樒・紙樒
板樒・紙樒は樒と書いても樒そのものではありません。
門樒は大変大きなものなので、樒を花輪の代わりに用いる関西では会場に樒が置ききれなかったり、小さな会場であった場合に、紙や板に墨で名前を書いて樒の代わりに用います。
樒を飾る習慣のある葬儀会場では受付で一定の金額を支払えば、すぐに名前を書いて掲示してもらえます。
お供え物としても使われる
樒は青蓮華の代用品として使われる仏教所縁の植物です。
仏壇に生花や常花をお供えるのと同様にお供え物としても使われます。
また、樒が邪気を払う力があるのと、仏壇が極楽浄土を表現いているとされる浄土真宗では仏花に使う青木は樒が良いとされています。
枕飾りとして使われることも
枕飾りとは通夜までの間に用いる臨時の礼拝台です。
この時に花入に一本花として樒が用いられます。
一昔前までは日本は土葬であり、埋葬したご遺体を獣や邪気から守るために樒の香気や毒気が必要だったのです。
枕飾りに樒が用いられるのはこの名残で、死者を邪気から守る意味があるのです。
納棺の際に樒の葉を敷くことも
樒は葉も強い香気があるため、納棺の際にご遺体の下に樒の葉を敷いて使うこともあります。
一昔前まではご遺体の保存のためにドライアイスを用いることもなかったので、腐敗臭をごまかす役目も果たしたのです。
樒と榊(さかき)の違いは?

ここでは、樒と榊の違いについて見ていきましょう。
神道では祭壇に榊が用いられます。
日本では古くから木には神が宿るとされており、榊は神の依り代となる木で、葉の形も玉串に似ており漢字も国字で木偏に「神」です。
また、榊の語源は「境木」であり、神と人との境界線を示す結界の木で注連縄や鳥居と同じ意味合いで用いられます。
一方樒は、仏教の教えを表し浄土にあるとされる青蓮華の代用品として用いられ、その香気や毒気で邪気を払う結界を作るために用いられます。
樒も榊も共に邪気からお墓を守る結界を作るという点では同じで、古代では樒を挿した水は腐りにくかったため樒は神社でも用いられていました。
そもそも古代の神社で用いる「境木」は常葉樹であれば余り関係がなく、神道でツバキ科の榊が用いられるようになったのは全国的に育てやすく手に入りやすい植物だからで、京都の愛宕神社では今でも榊ではなく樒が用いられています。
樒を手配したいときは?

樒を手配したい場合はどうすればいいのでしょう。
ここでは樒の手配方法や費用について解説していきます。
葬儀屋に依頼する
関西では花輪の代わりに用いられるので葬儀屋に依頼すれば樒を用意してくれます。
また、樒は一対で用いられます。
樒の価格相場
では、樒の価格相場について見ていきましょう。
葬儀の会場の門に飾る大きな門樒であれば一対で安いもので1万円から、高いもので3万円程度です。
花輪の代用として用いら得る樒であれば一対で5千円から1万5千円が相場です。
京都の葬儀では花輪の代わりに樒を使用

全国的に葬儀では生花が祭壇を彩ります。
しかし、関西の特に京都の南部地方での葬儀では樒が所狭しと並べられます。
京都の葬儀では花輪の代わりに樒を使用しているのです。
現在はハウス栽培で年がら年中菊などの生花を手に入れること出来るようになりましたが、一昔前までは生花を手に入れる季節は限られていまいた。
一方樒は、常葉樹で一年中手に入れることができ、しかも花と同様に香気があり、仏教所縁の植物であるので樒はどんな季節に葬儀があっても飾ることが出来るのです。
経済観念が発達し始末屋とも呼ばれる京都人らしい考え方と言えるでしょう。
葬儀の樒についてまとめ

この記事では葬儀の樒について解説しましたが、いかがでしたか?
樒に絞ったお話でしたが、葬儀や仏前に使う他の植物と違い華やかさには欠けますがとても深い意味があることがご理解いただけたかと思います。
最後に今までお話しした樒に関しての内容をリストでまとめておきます。
- 樒は花の形が仏教と関わりの深い青蓮華に似ていることからその代用品とされ、弘法大師空海が密教の修法の際に祭壇に用いるようになったことから仏事でも用いるようになりました。
- 葬儀では花輪の代用品として樒で作った門樒や、門樒の代用として紙や板に葬儀に参列した方の名前を入れて献花の代わりとする紙樒・板樒があります。また仏前や墓前のお供え物、枕飾にも用いられます。
- 樒は独特の香気と樒全体に毒があるため、死体を漁る獣や得体のしれない邪気などから死者を守る力があると考えられていまいた。また榊を備えることで結界が張られると考えられたため一昔前までは神道の榊と同じように神社でも境木として使われていまいた。
- 常葉樹で木自体からも香気を発する樒は四季を通じて入手することが出来るため、項とでは葬儀に使う生花の代用として葬儀に使われます。
終活では葬儀に参加することもあるかと思いますが、そこで飾られる樒の意味が分かれば、葬儀に対する気持ちもまた変わって来るのではないでしょうか。
今回終活ねっとでは、「葬儀の樒」について解説しましたが、他にも終活に関する記事を多数掲載していますのでそちらも参考にして見てはいかがでしょうか。
最後までご拝読頂き、誠にありがとうございました。
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