
永平寺の修行、厳しいって言うけどどんなもの?
永平寺の修行は厳しいと言われていますが、どんなものでしょうか?食事は、読経、座禅は?永平寺での体験修行の様子や、日常の規律・作法、お休みや修行期間など気になることを調べてみました。このとても厳しい修行を積んだ僧侶、住職さんたちって本当にすごいと思います。
最終更新日: 2020年03月16日
そもそも永平寺ってどんなところ

曹洞宗大本山・永平寺は、室町時代の1244年、道元禅師によって創建された「日本曹洞宗」の第一道場で、多くの修行僧が厳しい禅の修行を行なっています。
福井駅から永平寺門前まで、直行バスで30分ほどで、年間140万人近い観光客で賑わっています。
境内には樹齢約700年といわれる老杉に囲まれた静寂なたたずまいのなかに、70棟ほどの殿堂楼閣が建ち並んでいます。
道元禅師が説き示された禅の仏法は、今では全国に1万5千の末寺があり、信徒数は800万人といわれています。
永平寺は道場なので一般的な寺院とは違って檀家制度はなく、世俗と離れ、日々黙々と200〜300人の雲水(修行僧)が修行しているところです。

「終活ねっと」運営スタッフ
今回「終活ねっと」では、永平寺の修行について以下の点を中心にして解説します。
- 永平寺とはどんなところ?
- 永平寺の体験修行
- 雲水(修行僧)になるための方法
- 雲水の日常はどんなもの?
永平寺の修行は厳しいと言われていますが実際はどのようなものなのか、この記事を通して学んでみてください。
ぜひ最後までご覧ください。
永平寺で体験修行を味わうことも

雲水(修行僧)が修行する場の永平寺ですが、一般の人もその修行を体験できるコースがあります。
禅の道場にて禅三昧の時間を過ごすことのできる参禅と、永平寺で一夜を過ごし修行道場の雰囲気に身を入れることができる参籠(さんろう)があります。
一泊二日の参禅は1万円、三泊四日の参禅は2万円、一泊二日の参禅は中学生以上が9千円、小学生は5千円となっています。
他にも写経体験(1,000円)や座禅体験(500円)ができます。
*体験修行のプランや料金は変更になることがあります。
一泊二日(参籠)はややソフトな入門コース
午後4時までに受付を済ませ、滞在中の作法やスケジュールの説明を受けて、入浴から修行が開始されます。
第一日目
16:00 入浴
17:30 薬石(夕食)
18:50 座禅・法話・映画
21:00 開枕(消灯)
第二日目
3:20 起床
3:50 座禅
5:00 朝課(朝のおつとめ)
6:00 永平寺内の拝観
7:00 小食(朝食) その後下山
座禅や掃除といったプログラムも組まれているのですが、食事は雲水と呼ばれる修行僧の質素な食事とは違って副食も十分にあり、食事したお椀を自分で洗うこともないとのことで、修行の規律としてはやや甘い、お客様扱いのソフトな入門コースのようです。
三泊四日(参禅)はきつい修行体験が
日課や食事の内容も雲水と呼ばれる修行僧の人たちとほぼ同じ、厳しい修行の内容を体験できます。
厳しさゆえ下山、逃げ出し脱落してしまう人もなかにはいるそうです。
修行が始まる前、修行に不必要なものは回収されます。
携帯電話、カメラ、腕時計など、そして女性の化粧品も回収されてしまいます。
日課
3:30 起床
3:50 暁天(きょうてん)座禅
5:00 朝課(朝のおつとめ)
7:00 小食(朝食)
8:30 作務(掃除などの作業)
10:00 座禅
11:00 日中(昼の勤行)
12:00 行鉢 中食(昼食)
13:00 作務
14:00 座禅
16:00 晩課(夜の勤行)
17:00 薬石(夕食)
19:00 夜坐(夜の座禅)
21:00 開枕(消灯)
最終日は午前10寺ごろ下山。
とにかく1日に5時間も座禅の時間があって、ひたすら座るのが参禅の体験修行、食事の時ももちろん座禅です。
体験修行とはいえ、この参禅の場合は永平寺のルールも徹底されます。
永平寺基本ルールは以下のようです。
自分より上の立場の人の【目】を見てはいけない。
見習い期間中、はい、またはいいえ以外しゃべることは出来ない。
はい、またはいいえ以外でしゃべる必要がある場合は、合掌して上の人の許しを待つ。
足音や鼻をすする音など、その他全ての【音をたてる行為】の禁止、ただし、返事は大きい声でする。
寒くても寒がるな。暑くても暑がるな。感情を表にだすな。
雲水(修行僧)になるまでの方法

雲水というのは中国、朝鮮、日本における修行僧の呼称で、師をたずね道を求めて各地を巡り行雲流水のごとく一ヶ所にとどまることなく修行する僧ということから名づけられています。
永平寺の雲水になるには、2月下旬から4月上旬の間に予め願書を出してまず許可を得る必要があります。
そして指定された日に山門に行き修行したいことを伝えるのですが、なかなか中には入れてもらえません。
平身低頭、問答を繰り返して、やっと山門をくぐって中に入れてもらえるのですが、この段階ではまだ雲水ではなく見習い僧の状態です。
最初に旦過寮というところに入り、ここで一週間ひたすら座禅をし、永平寺内での作法を徹底的に叩きこまれ、修行に耐えられるかが試されることになります。
旦過寮が終わると次は僧堂です。
ここからは古参の雲水たちと修行生活を送ることになりますが、まだ見習い、10日ほどしてやっと正式に修行することを許されます。
禅堂に入り、寮舎に配属されて古参僧たちと共に修行に励むことになります。
山門をくぐってから1ヵ月以上たった5月上旬、「掛塔式」という入学式を経て、やっと正式な雲水になることができるのです。
雲水の日常、すべてが修行の場

食事は? 作法は?
食事は肉や魚抜きのいわゆる精進料理と勘違いしている人が多いかと思いますが、修行僧はそんなご馳走は食べていません。
精進料理には違いないのですが、朝はお粥とごま塩に漬けもの。
昼は麦入りの白米と味噌汁に香の物とお菜、夜は昼にもう一品お菜がつくという質素なものです。
食事は布に包まれた応量器(食器)というものを広げることから始まりますが、応量器の置く場所、置く順番、指の使い方、箸を置く角度、肘の張り具合など、あらゆること全てに作法があります。
食事中はもちろん無言、音をたててもいけません。
食事のペースも皆と合わせて、早すぎず遅すぎずです。
食事が終わると箸や匙を舐めます。
そして刷(せつ)というもので拭い、拭った刷を舐める。
そのあと、お茶で器を拭い、白湯で器、箸、匙、刷を洗って、布巾で拭います。
その順番、方法、全てに作法がありますので、はじめは食べた気がしないかもしれませんね。
もちろん、足は座禅を組みながらのことです。
起床から開枕(消灯)まで 全てが修行
雲水の日課は三泊四日の参禅体験修行とほぼ同じものです。
禅宗では、全ての日常生活が修行の場とされています。
規律と作法に則った行動が重んじられます。
食事を除いた、起床から就寝までの修行生活をみてみましょう。
ここで偈文を唱えながら歯を磨き、頭から顔、耳の裏までを桶一杯の水で洗います。
座禅:線香が燃え尽きる時間を一炷(いっちゅう)と言いますが、この時間の間、座禅が行なわれます。座禅は朝、昼、夜の3回、合わせると1日、5時間ほどの時間になります。
勤行(おつとめ):朝と昼と晩の3回、行なわれます。合掌一礼や礼拝の作法がこまかくあり、晩の勤行の場合は唱える経典が日ごとに決められています。
作務:主に掃除ですが、この掃除の時だけは音を立ててもよいとされる時間で、雲水もこの時ばかりは渾身の力で雑巾をかけます。朝と昼、2回行ないます。
開枕(消灯、就寝):夜9時、開枕鈴(かいちんれい)が鳴り響き、就寝の時間です。
開枕というのは折りたたみ式の木製枕を用いていたことからきているそうです。
眠り方や体の横たえ方など、寝る時もいろいろな作法が細かく定められていて、大事な修行の一つとされています。
お休みは? 修行期間は?
こんな日常が毎日続いたらどうでしょうか?
もちろん、お休みの日はあります。
放参(ほうさん)といって、参禅を放免するという日で、4の付く日と9の付く日がこれに当たります。
つまり、10日に2日あるわけですが、普通のお休みとはやはり異なり、外出などは一切できません。
日課が休息モードになるということで、起床時間が遅くなったり、夜の座禅や掃除などの作務が原則行なわれないだけで、日常の作法の厳しさに変わりはありません。
この日だけ入浴ができたり、身支度を整えるのに時間が費やせるのが、雲水の人たちの一番の楽しみのようです。
僧侶になるだけが目的であれば修行に行く必要はありません。
僧侶になってから住職になる時に、修行歴と学歴を合わせた資格のようなものが必要になります。
一般的なお寺の住職になれる「2等教師」を取得するためには、一般大卒で約1年間以上、高卒で約2年間以上、宗門大学卒の場合は約半年間以上の修行が目安とされているようです。
永平寺の修行についてまとめ

永平寺の修行、大変なものですね。
朝起きてから寝るまで、厳しい規律・作法での修行、普通の人だったらとても出来ないでしょうね。
体験修行もできますが、一泊二日はやや甘い入門コースです。
三泊四日のコースは雲水とほぼ同じ日課を体験しますが、逃げ出して下山してしまう人もいるそうです。
この修行を1年、2年と経験しないとなれない住職さんって、本当にすごいですね。
あらためて見直してしまいます。