
真言宗における戒名の位号とは?戒名のつけ方や相場も徹底解説します
故人のお位牌などに何やら書かれている長い漢字の名前を戒名といいますが、実は宗派によっていろいろ異なるのはご存知でしょうか?そして、宗派により戒名に特徴があるのは真言宗でも例外ではありません。今回は真言宗での戒名のつけ方や相場などについて見ていきましょう。
2019-11-13
真言宗の戒名について

亡くなった方には葬儀の際に戒名と呼ばれる名前がつけられるのがごく一般的です。
戒名とは「〇〇院××居士」というように、仏様の弟子としての故人の名前のことを指します。
実は亡くなった方につけられる戒名が、宗派によって特徴があるというのはあまり知られていません。
そして、日本有数の仏教宗派の1つである弘法大師空海によって伝えられ、高野山に本山がある真言宗においても戒名には独特の特徴があります。
そこで今回終活ねっとでは、特に真言宗の寺院の檀家や信徒となっている方向けに、真言宗における戒名について、つけ方や金額の相場を見ていきます。
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真言宗における戒名とはどのようなものなのか?
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真言宗でつけられる戒名の用語・種類とは?
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真言宗の戒名の金額相場は?
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真言宗ではどのように戒名をつけていくのか
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真言宗では生前であっても戒名を頂けるのか?
真言宗で戒名をつけてもらう際にいろいろと参考になる情報を盛り込んでおりますので、ぜひとも最後まで読んでいただければ幸いです。
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真言宗での戒名とは

まず最初に、真言宗における戒名の意味や、戒名を故人に対してつける目的について見ていきましょう。
戒名の意味
戒名とは亡くなった方が来世で生きる際に持つ名前のことです。
より具体的には仏様の弟子(仏弟子)としての名前のことを指します。
実は仏教の教えに照らして見ていくと、戒名は故人が仏の世界で生まれ変わる上で不可欠なものとされています。
後で見るように、戒名はいわば仏教のルールである戒律を守る誓いを立てた証としてつけられるため、戒名がなければ仏様の方が成仏するのを認めてくれないと考えられているためです。
ちなみに戒名の呼び方は、同じ仏教でも宗派によって若干異なる場合もあります。
例えば浄土真宗であれば「法名」、日蓮宗であれば「法号」という具合です。
また戒名の読み方には「居士(こじ)」のように特殊なものもあります。
戒名の読み方などが気になる方は下のリンクを参考にしてみるのもいいと思いますよ。
なぜ戒名をつけるの?
それでは、なぜ亡くなった方に対して戒名と呼ばれる名前が授けられるようになったのでしょうか?
「戒」とは「戒律」、つまり仏様の弟子として生きていくうえで守るべきルールのことですが、仏様の弟子として生きる以上は戒律を守っていくことを誓わなければいけません。
そこで戒律を守っていく誓いを立てた者の名前という意味で、古くから仏教では戒名がつけられてきました。
そして、かつては生きているうちに仏門に入って修行に励むという人も少なくありませんでした。
このため、出家した方が生きているうちに戒名を授かるということがごく日常的な風景だったといえます。
現在、仏教各宗派では故人は亡くなった後に極楽浄土にて成仏する(つまり、仏様の弟子になる)ものとみなされているため、葬儀の際に戒名をつけられるのはかなり一般的です。
戒名の用語・種類

ここでは、真言宗独特の戒名にまつわる用語や種類について、より詳しく見ていきましょう。
梵字とは
真言宗の戒名での際立った特徴として、最初に梵字と呼ばれる曲線の多い見かけの字がつけられているという点が挙げられます。
梵字は古代インドのサンスクリット語の文字のことで、真言宗の戒名に梵字がつけられているのは本尊である大日如来の弟子であることを意味するためです。
なお、成人の場合にはアの字を、15歳以下の子供にはカの字をつけます。
成人の戒名にアの字をつける理由は、真言宗の根本的な教えに「アの字より出て、アの字に回帰する」という考え方があることに由来するためです。
また、15歳以下の子供につけるカの字は地蔵菩薩の導きを意味します。
院号とは
戒名といえば、最初に「〇〇院」とつくのをイメージされる方も多いでしょう。
戒名において「〇〇院」の部分を院号といい、生前に菩提寺や宗派(ここでは真言宗)、社会に対して特別な貢献を行った方に対してつけられます。
ただし、真言宗で院号がつけられるようになったのは、実はごく最近のことです。
ちなみに院号の由来は、天皇が出家して法皇となった際の戒名や上皇を意味する言葉から来ています。
歴史の教科書に登場した「院政」とも実は深く関わっている言葉であるといえるでしょう。
法号とは
法号とは、日蓮宗における戒名(特に男性)の呼び方です。
これは、日蓮宗では新たに弟子になった方に戒律を与えるという習慣がないことに由来します。
ただし、実際には日蓮宗で戒名という呼び方を使っても大丈夫です。
ちなみに真言宗では、基本的に法号が使われることはありません。
道号とは
道号は院号の次につく、2文字からなる名前のことです。
もともと、中国の仏教において特別な存在だった僧侶に与えられる尊称を意味していました。
戒名における道号は、戒名を与えられる人の生前の地位や特技、性格に基づいてつけられます。
道号もまた本来は亡くなった方に対してつけられる例が一般的ですが、中には臨済宗の一休宗純(一休さんとして有名)のように生前から道号をつける例もあります。
位号とは
位号とは院号と道号、さらに後述する本来の戒名の後に続いてつけられる、戒名のランクのことです。
一般的な戒名では最後に「〇〇居士」といった締めくくり方をするイメージがありますが、ここでいう「居士」の部分が位号に相当します。
そして真言宗における位号には、大きく分けて以下にご紹介する4つのランクがあります。
ただランクといっても仏様の弟子としてのランクではなくあくまでも戒名を授かる方の品格の基準という意味です。
院居士・院大姉
院居士、院大姉は位号の中でも最高位のランクに位置します。
先ほども触れた「院」、つまり院号がつけられていることから後で触れる居士や大姉のように信仰心が篤いだけでなく、菩提寺や宗派、社会への貢献度が高い人物に贈られる位号です。
信士・信女
信士、信女は位号でも最も低いランクとして位置づけられる種類で、信士が男性、信女が女性につけられます。
だからといって決してありがたみがないというわけではなく、むしろ仏教の中では仏様の残した5つの戒律を守る品格のある信者という意味です。
むしろランクが他よりも低い分、戒名料は30万円から50万円と最も安い相場という特徴があります。
なお、日蓮宗では院信士・院信女というランクも存在します。
居士・大姉(清居士・清大姉)
居士、大姉は真言宗の中でも最もつけられることの多い位号のランクで、居士が男性に、大姉が女性につけられす。
先ほど見た信士・信女より菩提寺や宗派、社会に貢献したことを指すため、より高いランクとして位置づけられています。
より高いランクに清居士や清大姉もあります。
禅定門・禅定尼
禅定門、禅定尼は位号の中でもあまり聞き慣れない種類ですが、まず読みかたとしては「ぜんじょうもん」「ぜんじょうに」と読みます。
生前に出家して髪を下した方、つまり生きているうちに僧侶や尼さんになった方につけられる位号です。
禅定門・禅定尼の位号そのものの意味としては、心が正されており、仏法と心とが合わさっている品格の持ち主を指します。
童子・童女・嬰児・孩児・水子
ここで紹介する種類は、いずれも成人する前に出家することのないまま亡くなった人々につけられる位号です。
このうち童子・童女は4歳から15歳までの男女に、嬰児は3歳までの子供につけられます。
また、孩児は妊娠6ヶ月から7ヶ月の段階の胎児に、水子は出産する前に流産した子供につけられる位号です。
なお、童子・童女の場合は宗派によって禅童子・禅童女(禅宗の場合)というように異なった使われ方をする場合もあります。
霊位とは
日本で使われるお位牌には戒名に続いて霊位と書かれる場合があります。
これはお位牌でも、故人が亡くなって四十九日を迎える前まで使われる白木のお位牌に記される文言のことです。
これは、四十九日を迎えるまで故人の霊は白木のお位牌に宿っていると考えられているためです。
ちなみに、四十九日を過ぎると故人の霊は成仏して仏様となるため、霊位から「霊」の字が抜けます。
加えて、白木の位牌に代わって黒色の本位牌が作られ、あらためて仏壇に安置されるのも四十九日以後のことです。
なお、霊位は仏教の各宗派以外の宗教(神道やキリスト教、無宗教)でもよく使われます。
この場合は仏教の場合と異なり戒名ではなく俗名の下に霊位をつけるのが一般的です。
真言宗の戒名の費用・値段相場は?

位号の中では先述の通り、他に比べると低い位である信士・信女が30万~50万、そして居士・大姉が50万~70万というのが一般的な相場です。
対して、位の高い院居師や院大姉となってくると100万円以上が相場となってきます。
この相場は真言宗以外の院号のつく宗派(浄土宗と浄土真宗以外)でも同じです。
なお院号をつけてもらう場合も100万円が一般的になってきます。
位の高い戒名はその分値段も他と比べ少し張ってしまうことも頭にいれておきましょう。
真言宗での戒名の付け方

実際のところ、真言宗で戒名をつける際にはどのような構成でつけられるのでしょうか。
あわせて、よく使われる漢字を取り上げつつ、真言宗での戒名のつけ方とその実際について見ていきましょう。
戒名の構成
真言宗(特に智山派)での戒名は、院号(3文字)・道号(2文字)・戒名(2文字)・位号(2文字)の合計9文字の文字数が基本的な構成です。
そして、本来の戒名は院号と道号の後に続く2文字を指しており、すでに生前の段階で出家した方の場合はこの戒名の部分に僧侶としての名前が入ります。
さらに先ほど触れたように、戒名の最初にア(大日如来の意)もしくはカ(地蔵菩薩の意)の梵字がつくというのも重要な特徴です。
戒名をつける際には菩提寺の僧侶の方がいろいろと考えます。
命名元となるのは膨大な量のお経で、そこから故人の品格や生前の職業・地位などを表現するのにふさわしい字を選び、加えて故人の俗名の一字とを組み合わせて戒名を決めるのが一般的です。
戒名によく使われる漢字を紹介
戒名をつける際には故人の生前の職業や性格、人柄などからふさわしい漢字を取り上げて使う場合が非常に多いです。
例えば、故人が生前農業に携わっていた場合であれば「田」や「成」という字が、故人の人となりが誠実であった場合は「誠」や「浄」といった字が使われます。
また、真言宗を特徴づける漢字であれば開祖である弘法大師空海にあやかって「空」や「海」、本尊である大日如来にちなむ場合は「照」、さらに真言から「真」の字が使われることも多いです。
中には菩提寺の住職の方から一字を授かることもあります。
これらの字に、生前の故人の名前である俗名の一字を組み合わせて戒名をつけるというのが、一般的な戒名のつけ方です。
戒名では付けられない漢字とは?
戒名でよく使われる漢字がある一方で、逆に使われない漢字も存在します。
主に使われない漢字としては、読むのが難解なものや悪い意味を持つものが代表的です。
もちろん、死や衰、枯、禍といった縁起の悪い漢字も使われることはありません。
このほかにも故人に対して差別的な意味を持つ漢字も避けられます(被差別部落の方に対する「革」や「僕」、在日コリアンの方に対する「朴」など)。
戒名は生前にも頂ける?

戒名といえば、現在では亡くなった方に葬儀の際につけるのが一般的ですが、ここまで見てきたようにかつては生前につけていました。
はたして、現在でも本来の仏教のように生前に戒名を頂くことはできるのでしょうか?
結論から先に書けば、生前であっても戒名を授かることは一般的です。
方法としては、菩提寺の住職の方に依頼するというのが自然な流れとなります。
相場も40万円から50万円というのが一般的です。
ただし、生前に戒名をつけてもらう場合には、まず身内でのトラブルを防ぐためにも、ご家族にきちんと相談することが重要です。
また、最近では戒名をめぐる詐欺も横行しているため、そちらにも十分に注意しましょう。
さらに、お墓に生前の戒名を彫る際には、赤色で着色することを忘れないことも大切です。
真言宗の戒名のまとめ

いかがでしたか?
今回終活ねっとでは、真言宗における戒名のつけ方や戒名料の相場について見てきました。
内容をまとめますと、次のようになります。
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戒名はもともと仏様の弟子として、仏教のルールである戒律を守る誓いを立てた証につけてもらった名前を指す。
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真言宗では戒名の前に梵字をつける。戒名は院号・道号・戒名・位号から構成されるが、このうち本来の戒名を指すのが位号で、故人の品格に基づいて4つにランク分けされる。
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真言宗での戒名の金額相場は信士・信女が30万~50万、居士・大姉が50万~70万、院居士・院大姉など位の高い戒名は100万円となっている。
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真言宗での戒名は、院号(3文字)・道号(2文字)・戒名(2文字)・位号(2文字)の合計9文字の文字数が基本的な構成で、戒名の最初に梵字がつくのも特徴
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生前に戒名を受け取ることはできるが、戒名をめぐる種々のトラブルには注意する。
真言宗の戒名は梵字がつくのが特徴のようですね。
葬儀などの際に戒名をつけてもらう時に役立てていただければ幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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