仏教では死後の世界はいったいどのようなもの?死生観を解説

仏教はインドから伝わりました。インドは輪廻転生を信じる国であり、この輪廻転生を断ち切るのが本来の仏教の目的でした。この死後観が、中国を経由して日本に伝わると、中国の道教思想を受けた日本特有の死後観が成立しました。今回は、日本特有の死後観を見ていきます。

目次

  1. 古代日本人の死後観と仏教の死後観
  2. 仏教・十王経の影響の受けた死後の世界
  3. 日本仏教の地獄世界構造
  4. 仏教・死後の世界「極楽」
  5. 仏教・十王経以外の死後観
  6. 仏教の死後の世界のまとめ

古代日本人の死後観と仏教の死後観

古事記には黄泉の国が出てきます。
古代の日本人は、古事記に示されている通り、死後、黄泉の国に行くと考えていたのでしょうか。
最近の神道の研究では「違う」と考えられています。
魂だけになり常世国という魂だけの世界に行き、子孫を見守ると考えていました。

仏教伝来以降、古事記に出てきた黄泉の国が基になり、死後の世界観が形成されていきました。
仏教と共に中国の道教思想が伝わったのです。
黄泉の国の亡者が鬼に変わり、これから説明する十王経に登場する人物が、黄泉の世界にどんどん乗り込んできて、仏教特有の死後の世界に変わってしまったのです。

仏教・十王経の影響の受けた死後の世界

仏教は正典(お経)に対して、緩い部分があるといわれることもあります。
お経は「如是我聞」からはじまります。
お釈迦様からこのように聞きました、という意味です。

つまり、文章の最初に「如是我聞」をつければお経とみなされたのです。
だから、実際にはお釈迦様が説いた説法ではなくてもお経とされているものがたくさんあります。
これを偽経といいます。
主にインドで作られた偽経、中国に仏教が伝わった際、作られた偽経があります。
この中に「十王経」があります。
このお経には死後どうなるかが明確に記載されています。

死後の世界・賽の河原と三途の川

十王経によれば、死後、人は河原に立っています。
子供達が石を積み上げています。
この子供達は親よりも先に死んだのです。
親より先に死んだ親不孝のため石を積み上げる罰を受けているのです。
そして、目の前には大きな川が広がっています。
有名な三途の川です。
この川の向こうに極楽があります。
死人は極楽を目指さなければなりません。
三途の川を渡るには、三通りの方法があります。
 ・泳いで渡る。
 ・渡し船に乗せてもらう。
 ・橋が架かっているので橋を通る。
橋は平安時代まで架かっていましたが、最近はなくなりました。
洪水で流されたのでしょうか!?だから、渡し船がお勧めです。
6文を支払わないといけません。
子孫や葬儀屋さんが6文だけ棺に入れてくれていたおかげで、渡し船に乗れるのです。
犬畜生などは6文を持っていません。
渡し船の横を必死になって泳いでいる犬や猫を見かけるかもしれません。

死後の世界・脱衣婆が現れる

川を渡り終えると、服をはぎ取る脱衣婆という大きな老女がいます。
服を着て生まれてくる赤ちゃんはいません。
だから、死後の世界で服を着ているのはおかしいのです。
生まれた時と同じ財産に戻るのです。
渡し船の代金を服で頂くとか、生前の行いが悪かったので服をはぎ取られるというように言われています。

死後の世界・閻魔大王登場

十地経によれば地獄を治める10人の王様がいます。
その王様の前に死人は行かなければなりません。
秦広王、初江王、宋帝王、五官王、閻羅王、変成王、太山王、平等王、都市王、五道転輪王 の10人です。
だけど、実際は閻魔王(閻魔大王)が、1人で仕事をしています。

死人は閻魔大王が住む閻魔王宮に入って閻魔大王に合わないといけません。
閻魔大王の前に立つと、閻魔大王は閻魔帳をひろげ、生前のおこないを吟味します。
そして、公平に裁きが下ります。
嘘はついていないか。
盗みはしていないか。
人殺しなどをしていないか・・・など人として間違った行動が罪に問われます。

罪に問われた人は地獄に落ちます。
罪のなかった人だけが極楽に行けるのです。

仏壇

仏教では、死後、閻魔大王による裁判が行われると考えています。

日本仏教の地獄世界構造

地獄思想は、インドの須弥山思想に基づいています。
地獄世界は、八熱地獄と八寒地獄に分かれています。
八熱地獄は、責苦の軽い順に
(1)等活地獄
(2)黒縄地獄
(3)衆合地獄
(4)叫喚地獄
(5)大叫喚地獄
(6)焦熱地獄
(7)大焦熱地獄
(8)阿鼻叫喚地獄
にわかれています。

また、八寒地獄は、責苦の軽い順に
(1)頞部陀(あぶだ)地獄
(2)刺部陀(にらぶた)地獄
(3)頞听陀(あただ)地獄
(4)臛臛婆(かかば)地獄
(5)虎々婆(ここば)地獄
(6)嗢鉢羅(うばら)地獄(青蓮地獄)
(7)鉢特摩(はどま)地獄(紅蓮地獄)
(8)摩訶鉢特摩(まかはどま)地獄
にわかれています。

各地獄の詳細

八熱地獄の詳細は以下のようになっています。
(1)等活地獄(想地獄)
殺生をした人が落ちます。
鬼に体を切り刻まれます。

(2)黒縄地獄
盗みを働いた人が落ちます。
熱した鉄板の上に寝かされて、鬼に体を切り刻まれます。

(3)衆合地獄
邪淫を働いた人が落ちます。
鉄でできた山と山の間で押しつぶされます。
また、きれいな女性が木の上に居ますが、木を登り女性に会いに行こうとすると、木の葉が刃物に変わり、体が切り刻まれてしまいます。

(4)叫喚地獄
酒におぼれた人が落ちます。
猛火により苦しめられます。

(5)大叫喚地獄
嘘をついた人が落ちます。
舌を抜かれたり、眼玉をくりぬかれます。

(6)焦熱地獄
仏教に反する悪い教えを広めようとした人が落ちます。
火の海地獄です。

(7)大焦熱地獄
尼僧・童女を強姦した人が落ちます。
焦熱地獄の10倍の苦しさです。

(8)阿鼻叫喚地獄
父母・僧を殺害した人が落ちます。
他のすべての地獄の合計の1000倍の苦しさです。
(参考:水木滋著「水木少年とのんのんばばあの地獄めぐり」マガジンハウス)

八寒地獄は、寒さにより責苦を与えられる8種類の地獄ですが、その詳細についてはあまりよくわかっていません。

仏教・死後の世界「極楽」

死後の世界は地獄だけではありません。
何一つ不自由なく暮らせる極楽という世界があります。
ここは、生前、何も悪い事をしなかった人が行くことができます。
平安時代、この世に極楽を再現しようとする運動がありました。
その結果、建立されたのが平等院鳳凰堂です。
このような御殿に住み、毎日、美味しい食べ物を食べて暮らすのです。
すべての欲が満たされる完璧な世界です。

仏教・十王経以外の死後観

日本仏教には、様々な宗派が存在します。
この中で死後の世界を強調する宗派があります。
浄土宗・浄土真宗です。
鎌倉時代、十王経がもとになった地獄と極楽思想が中心でした。
だから殺生などは身分の低い者がおこなっていました。
つまり、生きるために魚や動物を殺さなければならない漁師や猟師、草木を刈り取る農民は地獄行きであったのです。
身分の低い者は地獄に落ち、身分の高い者が極楽に行くという思想が定着していました。

この思想を拒絶したのが、法然・親鸞だったのです。
親鸞にあっては、悪人正機という論まで持ち出しました。
有名な「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。
」という歎異抄の一説に悪人正機に対する親鸞の想いが込められています。

浄土思想

浄土真宗では、現世は穢土であり、死後、阿弥陀様の力により浄土に行くことができると考えます。
「南無阿弥陀仏」と唱え続けるだけで浄土に行くことができます。
穢土では、どれだけ修行をしても、煩悩を滅することができないので悟りを開くことができないのです。
だけど、死後、煩悩が断ち切られた世界である浄土に行き、浄土で修行をおこなうと、誰もが煩悩を断ち切ることができ、菩薩を経て仏になることができます。
仏になると極楽浄土に行くことができるのです。

悪人正機

法然(浄土宗の開祖)は念仏を唱えることを修行と考えます。
親鸞(浄土真宗の開祖)は、念仏を唱えることを、自己の放棄、救済を全面的に仏に頼ることと考えます。
悪人正機は非常に誤解を招きやすい教えなので、若干、解説しておきます。

「南無阿弥陀仏」と唱えるということは、自分がどれだけ努力しても悟りを開くことは無理であると考える自力に対するあきらめなのです。
努力しても無駄なのだから、自分は一切、努力しないで、ただ仏にすがるのです。
同時に自分が如何に穢れた存在であるかを自覚したことになります。
この自分が穢れていると悟る自覚が大切なのです。
これを絶対他力思想と言います。

自分が穢れていると察知し、もう仏に頼る以外になすすべがないと自覚した時、もはや善人や悪人の違いなど無いと説くのです。
決して善人は救済されて当然であり、悪人でも念仏を唱えれば救われるというのではありません。

親鸞自身は、死後の世界がどうなっているかはわからないと主張していました。
これは、「たとい法然聖人にすかされまいらせて、念仏して地獄に堕ちたりとも、さらに後悔すべからず候。
」という言葉に見られます。
ここにも、悪人正機の思想を伺うことができます。

仏壇

仏教の死後の世界のまとめ

仏教では、死後、悪人は恐ろしい地獄に落ちると考えていました。
また、善人は理想郷ともいえる極楽に行けると考えています。
この思想は、中国の道教思想の影響を受けています。
また、浄土真宗では、死後、浄土という世界に行き、そこで修行をすることにより仏になれると考えています。
この思想は、親鸞が考え出した絶対他力思想に基づいています。

今回は多くのことについて触れたので、もっと一部について細かく知りたいという方は、せっかくの機会なので気になった部分について深く調べてみてください。

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