分骨の手続きについて

亡くなった方のご遺骨は、お墓を建てた後でカロート(納骨室)に納骨するというのが多くの方にとっての納骨を意味するものではないでしょうか。
もちろんこの場合、ご遺骨はすべて1つの骨壷に納めた状態で入れる、というのが世間一般で考える納骨の際のご遺骨の状態というと、ほとんどの方が賛同してくださるでしょう。
しかし、面積では狭い日本でも実に多様な価値観があるように、故人のご遺骨を1つにまとめるのではなく、もう1つ別の骨壷を用意してそちらにご遺骨の一部を納めるという方法もあります。
これが分骨と呼ばれる方法で、日本の仏教の宗派では浄土宗や浄土真宗で行われ、また地域でいえば関西でも用いられている方法です。
また最近では、手元供養という方法でご遺骨の一部を手元において供養するというやり方を取る方もいますが、こちらも分骨という行為の範囲に入るととらえることができます。
これらの人々にとって分骨というのはなじみの深い方法ですが、それではこの分骨という方法は自由にできるのでしょうか?
それとも何らかの手続きを経ないとできないものなのでしょうか?
今回終活ねっとでは、分骨にまつわる手続きについて見ていきます。
この記事では、以下のポイントを中心に話を進めていきます。
- 勝手に分骨をしてはいけないのか?
- 納骨前の段階でご遺骨を分骨するための手続きとしてどのようなものがあるのか?
- すでに埋葬し終えたご遺骨を分骨するためにはどのような手続きが必要なのか?
- ご遺骨を海外で分骨するにはどのような手続きが求められるのか?
終活で葬儀のことをお考えの方で、ご遺骨の分骨を希望される方はぜひともこの記事をご一読いただければ幸いです。
勝手に分骨してはいけないのか

先ほどもふれたように、日本では人によって分骨という方法がなじみの深い場合が少なくありません。
それでは、実際のところ分骨は勝手にできるものなのでしょうか?
残念ながら分骨は勝手にやることができず、所定の手続きを踏む必要があります。
これは、「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の第5条に分骨に関する規定があるためです。
つまり、この規定に基づいて手続きを取る必要があります。
この条文では分骨についていくつかのケースで届出が必要であることを明記しています。
納骨前にご遺骨を分骨する手続き

分骨を行う際には所定の手続きを踏まなければいけないというのをご理解いただけたのではないでしょうか。
それを踏まえてここでは、納骨前にご遺骨を分骨する手続きについてより詳細に見ていきましょう。
ご遺骨を手元に置いておくのに許可は必要か
ご遺骨を手元に置いておくかどうかについて考える方も少なくないかと思われます。
ご遺族によっては、亡くなった方のご遺骨を手元で供養したいと考える方も少なくなく、中にはご遺族の方を身近に感じたいと考える方もいます。
では、ご遺骨を手元に置いておくのに許可は必要かどうかについて、気になる方は多いと思います。
ご遺骨を手元に置いておく場合は、特に許可は必要ありませんし、法的に問題があるというものでもありません。
ただし、手元にご遺骨を置くということであれば、事前にご親族のうちで話し合っておくとよいでしょう。
そうすることでいらぬトラブルを回避することができます。
なお、一時的に手元に保管し、将来のどこかの段階でご遺骨を分骨する場合は、その際に分骨証明書の発行と提出が必要となります。
火葬証明書を発行・提出する
火葬の際に分骨を行うということであれば、その火葬場の管理者に火葬証明書を発行してもらったうえで、火葬場に提出する必要が出てきます。
申し出る際には火葬場の職員の方に直接申し出るという方法もありますが、葬儀会社の方に申し出た方が火葬が終わった後のお骨上げの際にスムーズに分骨を行うことができるため、おすすめです。
埋葬済みのご遺骨を分骨する手続き

ご遺骨の分骨でよく見られるのが、一度埋葬したご遺骨を再び取り出して分骨するというものです。
ここでは、埋葬済みのご遺骨を分骨する手続きを流れを追っていく形で見ていきましょう。
家族や親族の間で相談する
お墓から故人のご遺骨の一部を取り出して分骨するとなると、ご家族やご親族の間で相談して同意を得る必要があります。
逆に同意を得ないまま分骨の手続きなどを進めてしまうと、ご家族やご親族の間のトラブルのもとになりかねません。
そうならないためにも、事前にご家族やご親族とよく話し合ってから、分骨の手続きや準備に入ることが大切です。
なお、ご遺骨の所有者がご自身ではない場合は、その所有者として登録されているご家族もしくはご親族の方の承認が不可欠ですので、忘れずにご遺骨の所有者の同意や許可を得るようにしましょう。
分骨証明書を発行・提出する
お墓にご遺骨を残したうえで一部を分骨する場合は、墓地や霊園の管理者に分骨証明書を発行してもらう必要があります。
この点は、火葬証明書の発行や提出とほとんど同じです。
ちなみに、墓地や霊園の管理者は墓地の種類により異なり、寺院墓地であればその墓地を管理する寺院、民営霊園であれば公益法人、公営霊園であれば市区町村ということになります。
さて、分骨証明書の発行が済めばひとまず法的な手続きは終わりという場合がほとんどですが、場合によっては分骨受け入れ先での受け入れを証明する書類の提出も求められることもあります。
閉眼供養・開眼供養をお願いする
まず、分骨のためにご遺骨の入った骨壷をカロートから取り出す際には閉眼供養を行って魂抜きをする必要があります。
そして、分骨するご遺骨を別の骨壷に移し替えた後は、再び骨壷をカロートに戻す際に開眼供養によって魂を入れることとなります。
このため、閉眼供養と開眼供養の執り行いに向けた段取りや相談をしつつ、お経をあげてくれる僧侶の方へのお布施やお車代の準備や参列を希望するご親族の方への連絡も忘れないようにしましょう。
石材店にご遺骨を取り出してもらう場合
次に、石材店にご遺骨を取り出してもらう場合について解説します。
分骨に先立ってご遺骨を取り出す際と、分骨が終わった後に骨壷をもとに戻す際にカロートを開いたり、閉めたりしなければいけないため、石材店にその作業を依頼するのであれば石材店への連絡や相談が必要です。
カロートの開け閉めは個人の手でもできなくばないのですが、カロートの開け閉めの方法を間違えるとカロートの扉がうまく閉じられなくなって、後になってからカロートやお墓全体のメンテナンスにも影響を及ぼしかねません。
そのため、石材店との事前連絡や相談の際には閉眼供養や開眼供養の日程や段取りなどをよく伝えたうえで、ご遺骨の取り出しをどのように進めるかを決めておくことが大切です。
改葬の際にご遺骨を分骨する場合
分骨を行うケースの中には、改葬に伴って墓じまいをする際に、納骨されていたご遺骨の一部を手元供養するといった場合もあります。
ここでは、改葬の際にご遺骨を分骨する場合に必要な手続きを見ていきましょう。
分骨するうえに改葬するとなると、こちらもやはりご家族やご親族の間での話し合いが必要となります。
そして、ご遺骨の所有者とお墓の所有者がご自身ではない場合は、ご遺骨の所有者の方の承認や許可が必要です。
その次に、手続きに先立ってそのお墓のある墓地や霊園の管理者や、そのお墓を建てた石材店に改葬と分骨を行う旨を伝えます。
改葬に関しては管理者や石材店のいずれにも誠意ある説明を心がけるようにしてください。
この点を誤ると、墓じまいのために高めの費用を請求されるなどのトラブルのもとになりかねません。
また、管理者が寺院である場合は、そこの住職の方に対する説明の仕方に気を配りましょう。
こちらについてもひとつ間違えると、法外な離壇料を請求されるといったトラブルに発展する場合がありますので、注意が必要です。
まず、改葬に関する手続きが必要です。
この場合は、改葬元の墓地・霊園の管理者が発行する埋葬証明書と、改葬先の墓地・霊園の管理者が発行する受入証明書を入手し、改葬許可申請書とともに市区町村の担当窓口に提出して改葬許可証を発行してもらいます。
そして、現在のお墓がある墓地・霊園の管理者に分骨証明書の発行してもらいましょう。
その後、閉眼供養と骨壷の取り出しを経て、分骨する一部のご遺骨を専用の骨壷に納めて、受け入れ先に分骨証明書とともに持参します。
そこで分骨証明書を受け入れ先の管理者に提出すれば、受け入れ先での分骨を行うことができます。
ちなみに、この際に改葬証明書も一緒に管理者に提出することを忘れないようにしましょう。
ご遺骨を海外に分骨する際の手続き

分骨を希望する方の中には、海外への分骨を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは、ご遺骨を海外に分骨する際の手続きについて見ていきましょう。
ご遺骨を海外に持ち出してもいいのか
とはいうものの、まず国外にご遺骨を持ち出すことに問題がないのかどうかについて気になるという方も少なくないでしょう。
まずは、ご遺骨を海外に持ち出してもいいのか、この疑問を解決することにしましょう。
結論から先に書けば、海外へのご遺骨の持ち出しは可能です。
ただし、できればご遺骨をそのまま骨壷に入れた状態ではなく、粉骨という段階を経ることで粉状にしてから骨壷に納めるのがおすすめです。
さて、海外へのご遺骨の持ち出しに関しては特に法的な規定はないため、事前に何らかの手続きを役所などで申請しなければいけない、というわけではありません。
ただし、海外に持ち出すということは日本から出国するにしても、また外国に入国するにしても税関を通らなければいけないため、その場合に備えてどなたのご遺骨を何のために持ち込むかを説明できるように埋葬許可証(火葬許可証)の原本は携帯しておくべきといえます。
遺骨証明書を発行する
海外へご遺骨を持ち出すうえで不可欠なのが、遺骨証明書と呼ばれる書類です。
この書類は、その国にご遺骨を持参した状態で入国する場合に、税関を通る際の手続きでその国で輸入禁止品が含まれていないことを証明するものとしても役立ちます。
また、多くの国で遺骨証明書があれば、飛行機内の手荷物という扱いでその国に持ち込むことが可能です。
なお、遺骨証明書は死亡診断書と埋葬許可証(火葬許可証に印を押してもらったもの)、葬儀費用の明細を添えてご遺骨を持ち込む予定の国の大使館や領事館に提出すると、それらと引き換えに発行してもらうことができます。
分骨の手続きまとめ

今回終活ねっとでは、分骨の手続きについていろいろと見てきましたが、いかがでしたか?
今回の内容をまとめますと、以下のポイントのようになります。
- 分骨は自由勝手にできるものではなく、法律(墓地、埋葬等に関する法律施行規則第5条)の規定に基づいた所定の手続きを踏む必要がある。そして、この条文には分骨に関するいくつかのケースごとに必要な手続きについても明記している。
- 納骨前にご遺骨を分骨する手続きとして、火葬の際の分骨の場合が挙げられる。この場合は火葬証明書を火葬場に発行・提出してもらう必要がある。火葬場にそのまま申し出てもよいが、火葬直後のお骨上げの際に分骨する流れとしたいのならば葬儀会社に申し出るのが望ましい。
- 埋葬した後のご遺骨を分骨する手続きとしては、まずご家族やご親族の間で相談をし、同意などを取り付け、分骨証明書を墓地の管理者に発行・提出する。その後ご遺骨の取り出しと再納骨のための閉眼供養と開眼供養を依頼し、同時に石材店にご遺骨を取り出してもらうための作業を依頼する。改葬の際に分骨するのであれば改葬許可証も必要となる。最終的にはご遺骨の受け入れ先に分骨証明書を提出することとなる。
- ご遺骨を海外に分骨する場合は、法的手続きは特に必要ないが、埋葬許可証の原本と遺骨証明書を携帯するのが望ましい。また、ご遺骨は粉骨しておくとよい。
ご遺骨の分骨は、現在では宗派の慣習や地域の伝統というだけでなく、手元供養や散骨といった新しい形の埋葬においてもよく用いられる方法となってきています。
このため、終活に取り組んでいらっしゃる方の中にも何らかの埋葬法を検討する中で分骨することを考えておられる方も多いのではないでしょうか。
そのような場合に分骨のことやそれにまつわる手続きに関する知識を身に着けておくと、いざ分骨するときになった場合に、煩雑そうに見える手続きをする際にもあまり戸惑ったり迷ったりすることがありません。
ぜひともこの機会に分骨の知識や、それにまつわる手続きについてさらなる知識を深めていただければ幸いです。
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