
葬儀費用は凍結された銀行口座から引き出せる?法改正について解説!
家族が亡くなると、すぐに葬儀費用を用意する必要があります。多額の支払いとなるので、お金を故人の銀行口座から引き出したいと考える方も多いですが、可能なのでしょうか。葬儀費用をスムーズに支払えるよう、故人の銀行口座の取り扱いについて解説していきます。
目次
最終更新日: 2020年12月18日
葬儀費用は故人の銀行口座から引き出せる?

配偶者や父母などが亡くなると、自分が中心となって葬儀を執り行うことになります。
葬儀は一般的に数日から1週間ほどの間に行いますので、深い悲しみの中で葬儀に関する全ての手配をしなければならないのは、大変だと感じる方が多いでしょう。
しかも、葬儀費用は、地域にもよりますが200万円前後が相場で、葬儀終了のタイミングで支払う場合がほとんどです。
銀行振込などの場合も、葬儀から1週間ほどで支払う必要がありますので、早急にお金を用意しなければいけません。
葬儀費用の準備が十分にできていない場合、故人が銀行に保有していたお金を引き出して支払いたいと考える場合もあると思いますが、それは可能なのでしょうか?
そこで、今回「終活ねっと」では、葬儀費用と故人の銀行口座についての疑問を解決すべく、次の項目について解説していきます。
死亡後に銀行口座が凍結されてしまう?
凍結された銀行口座からの引き出しは可能か?
葬儀費用を支払った後に相続放棄はできるのか?
葬儀費用の生前信託のメリットは何か?
これらの項目を中心に、葬儀費用の支払いについて詳しく掘り下げていきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
死亡後の銀行口座の凍結とは?

銀行口座の名義人が死亡すると、口座は凍結されます。
口座からの預金の引き出し、公共料金の支払いなどの引き落とし、現金の預け入れなど、資金の移動は一切できなくなるのです。
このように銀行口座を凍結する理由は、相続のトラブルを防止するためです。
凍結されず自由に預金を引き出すことができると、遺産相続について話し合う際に、引き出したお金の使い道について親族で揉めることがあります。
銀行は、名義人の死亡を親族から申告されたタイミングで、銀行口座を凍結します。
逆に申告されない限りは、銀行から預金を引き出すことが可能ですが、相続人同士のトラブルを防止するため、できるだけ早く銀行に申告するようにした方が良いでしょう。
「終活ねっと」では、銀行口座の凍結に関して詳細に解説した記事を掲載しております。
ぜひ、そちらもご覧ください。
法改正により銀行からの引き出しが可能に

銀行口座が凍結されると預金が引き出せなくなりますが、実は相続法が改正され、2019年7月1日から施行されたことにより、死亡後に預金を銀行から引き出すことが可能になりました。
法律の改正によって、葬儀費用を捻出する方法の選択肢が増えたことになります。
ここからは、相続法がどのように改正されたかを詳しく解説していきたいと思います。
法改正前
法改正が行われる前は、遺産分割協議が終了するまでは口座は凍結されたままで、基本的にお金を引き出すことはできませんでした。
どうしても凍結された口座からお金を引き出したい場合には、死亡診断書や名義人の戸籍謄本、相続人全員の同意による署名、実印、印鑑証明書、遺言書などが必要だったのです。
銀行によって書類は多少異なりますが、すぐに集めるのは難しい書類を揃えなければならないので、葬儀費用の支払いまでに手続きを終わらせることは困難でした。
遺産分割前に預貯金が払い戻せるように
法改正により、遺産分割協議が終了する前でも、1人の相続人の判断で故人の銀行口座からお金が引き出せるようになりました。
預金を払い戻すのに全員の同意を取る必要がなくなり、手続きも簡単になったので、短期間でお金を引き出して葬儀費用に充てることが可能となったのです。
ただし、全ての預金を引き出せるわけではなく、用意しなければいけない書類もあるので注意しましょう。
金額の上限
銀行口座から預金を引き出すときの上限金額は、法定相続分の3分の1までと決まっています。
また、1つの金融機関につき150万円までしか引き出すことはできません。
同じ金融機関に複数の口座があっても金額は変わりませんが、A銀行で150万円、B銀行で50万円というように複数の金融機関から引き出すことは可能です。
150万円引き出すことができれば、葬儀費用の大部分はまかなえるはずですので、葬儀費用の支払いに困った際はこの制度を利用するのが良いでしょう。
必要な書類
法改正によって故人の銀行口座から預金を引き出しやすくなりましたが、手続きに必要な書類が何点かあります。
基本的には、本人確認書類、名義人の戸籍謄本または全部事項証明書、相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書、預金の払い戻しを受ける人の印鑑証明書が必要です。
必要書類は銀行によって異なる場合があるので、払い戻しを受ける銀行に確認をするのが良いでしょう。
書類を遠方から取り寄せる必要がある場合は、早めに書類を依頼するなど、葬儀費用の支払いに間に合うように手続きをしましょう。
葬儀費用の支払い後に相続放棄はできる?

無事に銀行から預金を引き出し、葬儀費用の支払いを済ませた後に、銀行口座の預金についてあらためて相続の手続きをしなければいけません。
遺産相続は、故人との関係により相続できる割合が異なり、相続人同士の話し合いで合意がとれた後に銀行との手続きに入ります。
ただ、ここで注意しなければいけないのは相続放棄の問題です。
遺産分割前に預金の払い戻しを受けていると、相続放棄ができない場合があるのです。
ここからは、払い戻しが葬儀費用の支払いのためであった場合、相続放棄ができるのかという疑問について解説させて頂きます。
相続放棄とは
遺産相続をするときには、相続放棄という選択肢があります。
故人が残したものが預金や家などの財産であれば良いのですが、負債があった場合などに、相続を拒否することができるのです。
しかし、相続放棄をする前に相続財産を一部でも使うことは認められません。
もし使ってしまった場合は、単純承認となってしまいます。
この単純承認とは、故人の財産を無条件で相続すると認めることです。
相続には、放棄・単純承認・限定承認というものがあります。
放棄は一切の相続を拒否すること、単純承認は全ての財産を相続すること、限定承認は財産もあるけれど負債もあるという場合、差し引きで手元に財産が残った場合のみ相続するという方法です。
しかし、故人のお金を使ったことで単純承認が認められてしまうと、放棄や限定承認をすることはできなくなります。
故人に負債があり、相続放棄をしたい場合には、財産の管理には注意しなければいけません。
「終活ねっと」では、相続放棄に関して詳細に解説した記事を掲載しております。
ぜひ、そちらもお読みください。
葬儀費用の支払い後の相続放棄は可能
相続放棄ができない場合について知ると、葬儀費用を支払った後では相続放棄ができないのではないかと考える方も多いかもしれません。
しかし、葬儀費用の場合は相続放棄が可能なのです。
その理由について、詳しく見ていきましょう。
葬儀費用の支払いは単純承認ではない
葬儀費用を支払うことが単純承認になるのかという疑問についてですが、常識的な金額であれば単純承認にはあたらないという判決が出た例があります。
葬儀は故人にとって最低限必要な社会的儀式であり、葬儀をするのに必要なお金がない場合に故人の財産を使わないことは、むしろ非常識であるとされました。
そのため、葬儀費用の支払いは財産を処分したことにはならず、相続放棄ができる可能性が高いです。
ただし、相続放棄ができるのは、葬儀費用が妥当な額である場合のみあてはまります。
一般のものと比較して高額すぎる場合は、単純承認とされてしまう場合がありますので注意しましょう。
葬儀費用に含まれるもの
葬儀費用とされるものには、葬儀社などへ支払うお葬式やお通夜の費用、お寺へのお布施や読経などの費用、埋葬や運搬費用があります。
これらの費用については単純承認とされない可能性が高いですので、故人のお金で支払うことに問題はないといえます。
しかし、お墓や仏壇の購入は、葬儀とは関係がないという理由で葬儀費用には含まれません。
後日行われる四十九日などの法要の費用も、葬儀費用ではありませんので注意してください。
また、終活ねっとには相続に関する無料ご相談窓口があります。
提携している相続診断士やファイナンシャルプランナーが遺言や生前対策など相続全般に関するご相談を伺います。
葬儀の費用についても、もちろんご相談いただけます。
ご相談は初回無料ですので、些細な疑問でも下記のリンクからお気軽にご相談ください。
葬儀費用の生前信託

葬儀費用は、生前信託によって銀行に預けておくことが可能です。
自分が生きているうちに、葬儀社に見積りを取った上で契約をし、その分の金額を通常の預金とは別に銀行に預けておくことができる制度です。
凍結された口座から預金を引き出す手間に比べると、とても簡単に葬儀費用を支払うことができます。
生前信託をすることによって、故人にも遺族にも様々なメリットがありますので、ご紹介させて頂きます。
自分で葬儀内容を決められる
葬儀の内容は、一般的に亡くなってから遺族によって決定され、執り行われることとなります。
しかし、生前信託をしておけば、葬儀の内容を自分で決めることができるのです。
どの程度の金額の葬儀にするのか、プランや宗派、こだわったオリジナルの内容なども細かく決めておくことができます。
最近は、自分の葬儀のことは自分で決めておきたいという人が増えてきましたので、希望がある場合は事前に葬儀社に相談をしておきましょう。
遺族に負担をかけないで済む
家族が亡くなってから葬儀内容を決めるのは、遺族にとって大変な作業です。
葬儀に関しては故人の希望がはっきりしないことが多いので、故人や親族に失礼のないようにと、少し高めのプランを選択する場合もあります。
生前信託をしている場合は、故人の希望通りのプランで葬儀を行えば良いので、様々な決定や手続きが少なく、遺族の負担が少ないのです。
また、葬儀費用は生前信託により、銀行から葬儀社へ直接支払われることになります。
費用や相続に関しての事を遺族が考える必要がなく、スムーズに葬儀を行うことが可能です。
親族がいない場合にも適している
少子高齢化に伴い、頼れる親族がおらず、自分の葬儀に関して不安に思うケースが多くなってきました。
その場合、喪主候補者を決めて生前信託をすることが良いとされています。
友人や弁護士などを喪主候補者とし、元気なうちに葬儀社と契約を結んでおくのです。
ただし、葬儀費用は自分で払う必要があるので、生前信託の制度を使うことになります。
葬儀費用の引き出しについてまとめ

いかがでしたか?
今回「終活ねっと」では、葬儀費用と故人の銀行口座に関して、みなさんが疑問に思われている点についてご説明させて頂きました。
今回の記事の内容をまとめましたので、ご覧ください。
死亡後は、相続のトラブルを防ぐため銀行口座が凍結される。
法改正により、遺産分割の前に葬儀費用を引き出すことが簡単になった。
葬儀費用は単純承認にあたらない場合が多く、葬儀費用を支払った後でも相続放棄は可能である。
葬儀費用の生前信託は遺族の負担を減らし、親族がいない場合にも適している。
故人にとって重要な儀式となる葬儀は、心配する必要がないように準備しておきたいものです。
葬儀費用についての知識を身につけることで、いつか来るお別れに備えるようにしましょう。
「終活ねっと」では、故人の口座から支払う方法以外にも、葬儀費用を安く抑える方法について解説した記事を掲載しております。
ぜひそちらもご覧ください。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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