火葬炉の仕組みについて

葬儀が終わるとご家族や親族は火葬場に赴き、故人と最後のお別れをしてから火葬します。
故人の家族や親族、親しい友人として火葬に立ち会った人は火葬場の様子を知っていますが、火葬炉の仕組みはよく知らない人がほとんどではないでしょうか。
今回、終活ねっとでは火葬炉の仕組みについて
- 火葬炉と火葬場とは?
- 火葬炉の種類と仕組み
- 火葬炉の温度と燃料
- 火葬場の仕組み
を中心に、あまり知ることができない火葬場や火葬炉について解説します。
誰でも、いつかは入る火葬炉について知ることができる内容になっています。
最後までご覧ください。
火葬炉の種類と仕事

日本では亡くなった方のほぼ100%が火葬に付されています。
誰でも最後にお世話になる施設で、ご家族や親しい人たちとお別れをする場所になるのが、火葬場です。
では、火葬炉はどのような種類、仕組みがあるのでしょうか。
日本で一番多く火葬炉を製造しているのは、富山市にある宮本工業所です。
他にも煙や匂いがしない火葬炉を開発し、海外に進出しているメーカーもあります。
また、東京ガスと共同で開発を行っている会社もあります。
斎場によっては24時間予約が可能で、ハイテク化した火葬炉にはロストル式と台車式があります。
ここでは両方の仕組みとメリット、デメリットについて説明します。
火葬場・火葬炉とは?
そもそも火葬場と火葬炉とは一体どんなものなのでしょうか。
火葬炉を知るには、火葬場についても知ることが大切です。
最近は火葬場とは言わず、斎場、葬祭場と呼ぶ火葬場が多くなりました。
本来、火葬場は亡くなった方を火葬する場所です。
斎場や葬祭場は通夜や葬儀をする施設ですが、同じ敷地内に火葬場を持つところもあり、混同されやすくなっています。
近頃は火葬場のみの施設でも斎場と呼ぶことが多くなり、火葬場のイメージも変わり、建物も明るくなりました。
火葬場の歴史について
火葬場の歴史は古く、紀元700年ごろにまでさかのぼります。
中国から帰国した高僧の遺命により、火葬されたのが最初だと言われています。
平安時代には僧侶による火葬が常識となり、次第に武士、庶民の間にも火葬が増えてきました。
江戸時代は一時、学問や宗教上の問題から火葬を禁止する藩もありましたが、江戸や大阪などの人口が多い地方では埋葬地が限られるため、火葬にすることが多くなりました。
明治に入ると、伝染病予防のためすべて火葬にすべきと定められ、これ以降、各地に公営の火葬場が設置されました。
火葬の方式も川原や人里離れた窪地で薪やわら、炭などで火葬する方法から、火葬専門の建屋を作り火葬するようになり、近代的な火葬場と変化してきました。
では、火葬する火葬炉の仕組みや火葬場の設備はどのようになっているのでしょうか。
まず火葬場には公営と民営があり、料金、利用条件などが異なります。
公営は主に、その火葬場のある市の市民が利用しますが、料金は自治体によって違います。
市民以外の人も利用できますが、火葬料金に違いがあります。
次から台車式とロストル式の火葬炉の仕組みとメリット、デメリットについて解説していきます。
台車式
台車式は、近年の火葬炉の主流になっているものです。
ご家族や親族と最後のお別れをしてから、台車乗った棺を主燃料炉に入れて火葬する方法です。
一般的に火葬とは台車式のことを言うので、実際にご覧になった方は多いでしょう。
仕組み
電動のチェーンコンベアーで炉底台車を炉に送り込む方式は、平成に入ってから新設された火葬場で取り入れています。
台車式は、正転も逆転も可能なチェーンを使い、棺を炉に出し入れできることやタイヤの数を多くしているのでレールが途切れていても脱線しないのが特徴です。
また、一般的には電動チェーンコンベアー方式の操作ボタンが前室側面の扉を開いた場所に設けられているので、遺族がいる前室の扉を閉めた後に係員が棺の状態を確認することができます。
台車が納められてから耐火扉を閉め、扉と台車を施錠するスイッチを押すと主炉バーナー点火スイッチが解錠され点火可能となります。
係員が手動で行う方式は、前室扉を閉めてから係員が手押しで炉底台車を動かして炉から出し入れしますが、前室付台車式火葬炉で手動式を採用している火葬場はごくわずかです。
特徴
台車式の火葬炉の特徴は主燃焼室の容積が小さいため、燃料効果が高く不完全燃焼を少なくすることができる点です。
前室付台車式は消耗したり、汚れが集中する台車を炉外に抜き取ることができるので、予備台車と交換すれば炉を休止することなく修繕ができます。
メリット
台車式のメリットは次の通りとなっております。
- 棺を入れるときに炉前にいる参列者に炉内を見せることがない
- 前室扉を閉めると、参列者に見られずに棺を開けてドライアイスや副葬品を取り除くことができる
- 棺を台車に乗せて火葬するので、ご遺骨がきれいに残る
- 炉体と炉前に3メートルほどの前室があるので、燃焼騒音があまり聞こえない
- 火葬後にご遺骨を取り出すとき、炉内の臭気や熱気が炉前ホールに広がらない
- 前室に残骨灰吸引清掃装置があるので炉前ホールから見られず、少人数で短時間に残灰処理とご遺骨を収骨台へ移すことができる
デメリット
台車式のデメリットは次の通りです。
- 設備コストが高額になる
- 燃焼時間が長い
- バーナーに使われる重油やガスはコストがかかる
- 環境に良くない
費用とかかる時間
台車式は隙間のない構造になっているので、酸素が少なく燃焼効率が低いため、火葬に平均60分から70分かかります。
火葬にかかる費用は、台車式やロストル式でも金額に差はなく、公営か民営の違いになります。
公営の場合は数千円~5万円程度で、民営の場合は4万9千円〜15万円程度が相場となっています。
ロストル式
ロストル式のロストルとはオランダ語のrosterが語源となっており、火格子と言う意味で使われています。
ロストル式とは金属棒を炉内格子状に渡したものに棺を乗せて火葬するので、その名前がつきました。
現在はロストル式を採用している火葬場は全体の3%程度と言われています。
仕組み
ロストル式は仕組みが単純で、ロストルの上に棺を置いて火葬します。
ロストル式は格子部分から落ちたご遺骨を受けるための底があるので上部が燃え尽きても、皿の部分が高熱になっているため、効率よく火葬できます。
特徴
ロストル式は全火葬場の3%ほどで数が少ないです。
ですが、燃焼効率が高いので、火葬回数を多くできる利点があり、東京や京都などの大規模火葬場ではロストル式を採用しています。
メリット
ロストル式のメリットは次の通りです。
- 燃焼効率が高く、燃費が良い
- シンプルな構造で設備コストが低い
- 燃焼時間が短い
デメリット
ロストル式のデメリットは次のようになっています。
- ロストルの隙間からご遺骨が落下してしまう
- 炉前ホールまで臭気や燃焼音、熱気が洩れる
- 火葬で、冷却と焼却を繰り返すので炉を作っている耐熱煉瓦の寿命を縮めることになる
- 故障すると炉を休止して修理する必要があり、時間も人も要する
- 火葬の時に、耐熱扉を開くと炉内部をご遺族が見てしまう
費用とかかる時間
ロストル式は下部から空気を供給できるため、燃焼効率が高く火葬時間は、平均1時間程度と短縮できます。
最速の炉であれば35分程度で火葬は終了します。
火葬にかかる費用は台車式と変わりません。
火葬炉の温度と燃料
では、火葬炉の具体的なシステムはどうなっているのでしょうか。
火葬炉の温度と燃料について見ていきましょう。
温度は800〜1200℃
台車式とロストル式は、火葬の温度が800度から1200度と決まっています。
火葬場には大気汚染防止法が適用されています。
「大気汚染防止法」は窒素化合物やダイオキシンなどの排出を規制したもので、火葬場も有害物質が発生しない温度を守らなければなりません。
また、ご遺骨を骨壺に収めるためには、温度が低すぎると大きなお骨が残ってしまうことがあります。
逆に高温だとご遺骨が粉々になり収骨することが困難になります。
最近の設備は全自動のセンサー付きで、温度と圧力が自動制御されており、殆んど人の手がかからないようになっています。
都市ガスを使用する火葬場が多い
2000年以降の燃料は都市ガスや、液化石油ガスを使用する火葬場が増えています。
昭和初期から後期にかけて火葬に使う燃料は、重油や薪、石炭でしたが、昭和後期以降からは白灯油が使われるようになりました。
コスト的に安い重油ですが、排煙には硫黄分が多く含まれ、脱硫装置が必要となります。
灯油の価格は不安定な上に、重油、灯油とも安全な保管場所が必要となります。
都市ガスの利点は供給面において貯蔵の必要がなく、煤塵などの発生が少ないことや排煙の透明化、バーナーの清掃など維持管理が容易であることが挙げられます。
都市ガスを使用することで従来の長い煙突ではなく、短い煙突や排煙口だけでも対応できるようになり、近隣住民への配慮ができるようになりました。
火葬場の仕組み

火葬場は火葬炉以外にも告別式や精進落としを行える、遺族が疲れを癒せる設備を整えているところもあります。
ここでは、火葬場の仕組みについて説明します。
告別室
告別室は故人に最後のお別れをする部屋です。
棺の小窓を開けてもう一度故人の顔を見たり、最後にお線香を手向けて、お別れをしたいなどの理由から火葬前の故人との時間を過ごす場所として使用します。
また火葬場まで僧侶の方が付き添われた場合は、告別室で火葬前の読経をします。
炉前室
炉前室は炉の前にあるスペースで、告別室の代わりに読経や焼香したり、お骨上げをする場所となります。
ご家族や近親者のみの少人数で故人を送る場合、炉前室で最後のお別れをします。
控え室
控え室はご遺族や付き添ってきた僧侶が火葬の終了を待つ部屋です。
控え室で精進落としの料理や茶菓の接待で参列者をねぎらいます。
また、火葬場によってはマンション並みの広さやベッドルーム、ジェット機能の付いたお風呂などで遺族の疲れを癒せる控室もあります。
火葬炉の仕組みのまとめ

いかがでしたか。
今回、終活ねっとでは、あまり知ることのない火葬炉の仕組みについて解説しました。
- 日本の火葬は紀元700年ごろ、中国から帰国した高僧によって始まったとされる
- 火葬炉のパイオニアである宮本工業所をはじめ、いくつかのメーカーがあり無公害化システムなどを開発し、火葬炉のハイテク化が進んでいる
- 火葬炉は台車式とロストル式があり、台車式のほうが多く使用されている
- 台車式はご遺骨がきれいに残るなどのメリットがあるが、燃焼時間が長いなどのデメリットもある
- ロストル式は燃焼時間が短いなどのメリットがあるが、ロストルの隙間からご遺骨が落ちてしまうことがある
- 火葬にかかる費用は台車式とロストル式で違いはない
- 火葬炉の温度は「大気汚染防止法」により、800度から1200度に決まっている
- 火葬するための燃料は都市ガスや液化石油ガスを使用する施設が増えている
- 火葬場には火葬炉以外にも施設があり、告別式や精進落としを行える場合もある
などについて、知ることができました。
火葬炉はハイテク化が進み、短時間でダイオキシンを発生させることなく火葬できるようになりました。
故人を火葬した後に、ご遺族や親族とお骨上げをしますが、これは日本だけの習慣です。
ご遺族の気持ちを考え、少しでもきれいに火葬したいという日本人の心が火葬炉の技術を高めました。
火葬の技術も進歩していますが、故人を想う気持ちは変わらないでしょう。
終活ねっとでは、他にも終活に関する記事を多数掲載しています。
ほかの記事も併せてご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。