生命保険に加入したいけどピロリ菌が…

自分がいなくなったら残された遺族が生活していけるよう、ちゃんと生命保険に入っておきたい。
生命保険は終活において、考えておくべき項目のひとつでしょう。
しかし、もし健康診断などで、胃がんを引き起こす可能性の高いピロリ菌が見つかった場合、生命保険の加入に影響はあるのでしょうか?
- ピロリ菌に感染していても、生命保険に加入できる方法はあるの?
- そもそもピロリ菌とは、どんな菌?
- ピロリ菌に感染すると、どんなリスクがあるの?
- ピロリ菌は除去できるものなの?
- ピロリ菌の除菌に、健康保険は適用されるの?
いろいろな不安がわいてくるかもしれません。
ここでは、ピロリ菌と生命保険加入の問題について、わかりやすく解説していきます。
どうぞ最後までおつきあいください。
ピロリ菌に感染すると生命保険加入が難しい

ピロリ菌は、正式な名称を「ヘリコバクター・ピロリ」といい、1983年に発見されました。
それまでは、胃の中は強酸性に保たれているため細菌が生息できないと考えられていたのですが、このピロリ菌は特殊な酵素を生み出すことで胃酸を中和し、胃内にとどまることができることが明らかになりました。
そしてピロリ菌が、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなど様々な病気の原因になっているという研究結果が報告されています。
そのため、ピロリ菌に感染していると、生命保険に加入することが難しい場合があります。
しかし、もし感染していても、薬の服用でピロリ菌の除菌をすることができます。
除菌したことを証明する書類を保険会社に提出すれば、多くの場合生命保険への加入が認められるといわれています。
ピロリ菌のリスク

ピロリ菌に感染すると、次のような病気を発症するリスクが高まるという研究結果があります。
慢性胃炎
最近の研究によると、慢性胃炎を引き起こす原因のほとんどはピロリ菌ということです。
ピロリ菌がいったん胃に入ると、まず自然に出ていくことはなく、一生にわたり感染が続きます。
胃の粘膜に取りついたピロリ菌が増殖して炎症を起こし、それが慢性化して慢性胃炎となるのです。
胃潰瘍
胃の炎症がさらに進み、粘膜だけでなく、その下にある粘膜下層や筋層にまで達したものが胃潰瘍。
ピロリ菌に感染していると、胃潰瘍になるリスクも上がるといわれています。
胃がん
ピロリ菌感染者が胃がんになるリスクは、非感染者の5倍といわれています。
慢性胃炎が悪化すると「萎縮性胃炎」となりますが、この萎縮性胃炎を起こしていると、胃がんを発症するリスクがさらに高まる、という研究結果もあるとのことです。
十二指腸潰瘍
胃を出たところにあり、胃と小腸をつないでいる十二指腸。
ピロリ菌が胃の中にい続ける状態(持続感染)が続くと、胃酸が過剰に分泌されて十二指腸の粘膜を傷つけ、その結果十二指腸潰瘍を発症するリスクも高まるといわれています。
加入前にピロリ菌感染の告知義務がある

生命保険に加入を申し込む際、保険会社に対し健康状態や既往歴などについて、必ず報告する義務(告知義務)があります。
告知しなかった場合は?
生命保険の加入手続において、ピロリ菌への感染があるかないかについて聞かれた場合、ほかの質問項目と同じように告知しなければなりません。
もし、ピロリ菌の感染の事実を知りながら告知しなかった場合、告知義務違反となります。
告知義務違反とみなされると、契約が解除され、保険金が給付されなくなることもあります。
ピロリ菌の感染の有無について保険会社から質問されたら、隠さず必ず告知しましょう。
ピロリ菌でも加入できる生命保険

もしピロリ菌に感染していたら、生命保険に入ることはできないのでしょうか?
あきらめる必要はありません。
感染していても、以下のようなタイプの保険に加入できる場合があります。
- 引受条件緩和型:保険への加入条件が緩和されており、持病や既往症など健康上の問題があっても加入できる保険
- 無選択型:健康状態などの告知や医師の診査なしで加入することができる保険
引受条件緩和型の生命保険は、加入する前にかかっていた病気が再発したり悪化したりした場合でも、入院や手術に対して保険金の給付があります。
保険会社により加入の条件が異なりますので、資料を集めて比較検討し、自分に合った商品を探してみるとよいでしょう。
ただし、上記のいずれのタイプの保険も、保険料や給付される保険金について下記のようなデメリットがあります。
- 引受条件緩和型:加入後1年以内に入院・手術した場合、給付される金額が基本的に50%減額される。また、支払保険料が割高となる(通常の約1.5~2倍)。
- 無選択型:加入後一定の期間内に病気で死亡した場合、支払われるのは保険金ではなく、それまでに払込んだ保険料に相当する金額となる(ケガの場合は保険金が支払われる)。また、保険料が割高になったり、保障される限度額が通常より低く抑えられたりする。
次の項目では、ピロリ菌の除菌について説明します。
ピロリ菌に感染しても加入できる保険のメリット・デメリットを念頭に置きつつ、よりよい方法を考えていきましょう。
ピロリ菌を除菌してから加入申請を

先にも説明したように、ピロリ菌に感染していても除菌したことが証明されれば、たいていの場合、通常の保険への加入が認められるようです。
ピロリ菌の除菌には、健康保険が適用される場合と適用されない場合があります。
ピロリ菌の除菌と健康保険
ピロリ菌の除菌は、かつては胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを発症していないと、健康保険の適用の対象となりませんでした。
しかし、医学的な研究が進んで、ピロリ菌と胃がんの関係が明らかになってきたことから、2013年2月より保険適用の範囲が広がって、胃潰瘍の前の段階である慢性胃炎にも、保険の適用が認められるようになりました。
ただし、ピロリ菌による慢性胃炎にかかっておらず、また、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気も発症していない場合は保険の適用が認められず、自費での負担が必要になります。
自費で除菌する場合の費用は病院により異なりますが、合計30,000円程度(内視鏡による検査費用を含む)かかるといわれています。
ピロリ菌と生命保険〜まとめ〜

以上、ピロリ菌と生命保険、ピロリ菌の除菌と健康保険について説明してきました。
内容のまとめは、以下のようになります。
- ピロリ菌に感染していると、生命保険に加入するのが難しい場合がある。
- ピロリ菌の感染により、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんなどの疾病を発症するリスクが高まる。
- ピロリ菌感染の事実を保険会社に告知しなかった場合、告知義務違反とみなされ保険金が支払われなくなる可能性がある。
- 引受条件緩和型や無選択型といった、ピロリ菌に感染していても加入ができるタイプの保険がある。ただし保険料が高かったり、保険金の給付額が少なかったりするなどのデメリットもある。
- 一般的には、ピロリ菌の除菌が証明されれば、通常の生命保険に加入できる。除菌には健康保険が適用される場合がある。
いかがでしたでしょうか。
ご自身のため、そして大切なご家族のためにも、ピロリ菌に感染した場合の生命保険はじっくり考えて決めたいものですね。
この記事を読んでいただくことで、終活するうえでの不安が少しでも解消されれば嬉しいです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。