お墓の権利を放棄する方法~相続と墓じまい・改葬の手順について~

お墓を相続したけれど、今後の管理は困難であるという人が増えています。グルーバル化や少子化などでお墓を持つことが難しくなってきています。だからといって、放置していいのでしょうか?いえ、放置はいけません。ここでは、お墓の権利を放棄する正しい方法をお伝えします!

目次

  1. お墓の放棄が社会問題となっている
  2. そもそもお墓の相続とは
  3. お墓の継承権利の放棄方法
  4. お墓の継承権と相続権の関係
  5. お墓をたたむ手順
  6. お墓の権利放棄と墓じまい
  7. 放棄したお墓は無縁墓地へ

お墓の放棄が社会問題となっている

お墓

今の時代、さまざまな理由からお墓を放棄するということはやむを得ないことだとも考えられつつあります。
ここではお墓の権利を放棄する方法を紹介いたしますので、けっして放置することのないよう、参考にしてみてください。

ここでは、以下の2つのことについて、解説していきます。

  • お墓の放棄方法
  • お墓をたたむ手順

ですが、その前には、まずはお墓を相続するとはどういうことなのか?を知り、終活につなげていきましょう。

そのために、まずは

  • お墓の相続
  • お墓の継承権

を理解し、その後にお墓を放棄するとはどういうことなのか?を考えていきましょう。

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そもそもお墓の相続とは

お墓

一般的に相続といわれているのは、被相続人が残した財産や権利を残された相続人が継承することをさしますが、お墓もその相続財産に当たるのでしょうか?

ここでは、お墓を相続するとはどういうことなのかをみていきましょう。

祭祀財産と継承とは

遺産相続に関する規律は民法によって定められていますが、お墓もこれに従うことになります。

ただし、お墓などは祭祀財産とよばれ、民法でいうところの「被相続人の財産に属した一切の権利義務」、つまり一般的にいわれる『相続財産』とは切り離されて扱われ、相続する人は「祖先の祭祀を主宰すべきもの」と規定されています。

これは複数の被相続人がいれば、相続財産は法律に従ってその複数で相続=継承することになりますが、祭祀財産の場合は相続人が複数いてもそれを継承するのは1人であるということを意味しています。

祭祀財産は祖先の祭祀を行うという性質上、相続人で分割することが適当ではないことから、継承者も1人にするように法律で定められているのです。

ここでは、祭祀財産の種類と法律上の継承について解説します。

祭祀財産

祭祀財産とよばれるものには「系譜」「祭具」「墳墓」の3つがありますが、それぞれについてみていきましょう。

系譜

系譜とは先祖からその子孫まで、先祖代々の血縁のつながりが記されている記録のことで、掛け軸や巻物として残っている場合があります。

また、家系図だけでなく過去帳もこれに含まれ、寺院墓地であれば、過去帳を寺院が管理している場合もあります。

祭具

祭具とは祭祀を行う際に使用される器具の総称のことで、仏壇や位牌、仏像や神棚、またこれに付属した用具のすべてをさします。

お盆参りで一時的に使われる盆提灯などの道具もこれに含まれます。

墳墓

墳墓とは故人の遺体や遺骨をはじめ、それらが祀られている設備すべてをさします。

祭祀財産の継承

上に記された3つの祭祀財産についての所有権ですが、民法897条で誰に引き継ぐのかが定められています。

お墓などの祭祀財産を相続する人のことを、民法では「祖先の祭祀を主宰すべき者」という表現を使うので、祭祀財産の継承者を「祭祀主宰者」とも呼びます。

ここでは、祭祀財産の継承についてみていきましょう。

故人から相続人としての指名されていたもの

故人の遺言書に書き残されていたり、また、生前から口頭で指名があった場合は、指名を受けた相続人が祭祀財産の継承者となります。

口頭での指名はなかなか証明されにくいものですが、生前にお正月やお盆など兄弟や親族が集まるところで、ことあるごとに継承者について述べていたりすれば、それだけでも指名を受けたとされます。

慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべきもの

誰がその祭祀継承者であるかは、それぞれの地方や地域の慣習に従うことを原則としています。

ここでいう慣習とは、被相続人の住所地のある地域のことを指しますが、出身地や職業による特別な慣習があれば、それに従うことになります。

長男でなくても家業を継いだものが後を継ぐ、また、地域によっては一番若い末子が後を継ぐというところもあります。

いまでも長男が祭祀継承者になるという慣習がのこっている地域は多いですが、家制度での長男や男性の遺族の継承というのは民法でいうところの慣習には含まれません

家庭裁判所の判断によるもの

故人からの指名もなく、地域の慣習も明らかでない場合においては、慣例として遺族間での話し合いがまとまれば、継承者は誰でもいいことになっています。

話し合いがまとまらない場合には、残された遺族が家庭裁判所に祭祀継承者決定のための調停や審判を申し出ることができ、家庭裁判所の審判によって祭祀継承者を決めることになります。

地方では、祭祀を行うのに手間や費用が掛かることなどから、祭祀の継承者になりたくなくて裁判になることがあるようですが、都心の一等地に墓地を持っている場合などでは、祭祀継承の権利を奪い合うために裁判になることもあるようです。

ちなみに、裁判所の審理をゆだねた場合は、「一切の事情を考慮する」ということで、被相続人との血縁的な関係だけでは決まらないことになります。

継承権の共同継承や分割継承

基本的に、祭祀財産の継承権を継承するのは1人ですが、特別な事情により共同継承や分割継承が認められたケースがあります

先妻の子と後妻との間で分割継承を認めた事例、また二つの家の祖先が同じで、共同墓地になっていたことから共同継承を認めた事例などですが、認められるのはあくまでも特別な事情の場合のみに限られ、それも裁判所の判断にゆだねられます。

お墓の継承権利の放棄方法

葬儀

祭祀財産は「承継」とも呼ばれることからわかるように、継がなければならないものという仕組みになっており、祭祀継承者に指定された場合は拒否も辞退もできません。

しかし、継承したからといって、法事などの祭祀を執り行わなければならないという義務はなく、祭祀継承者は祭祀財産を自由に売却や処分できるという権利を持ちます

なので、継承するものを処分することで、放棄できない継承権をなくしてしまうという方法があります。
つまり、祭祀財産を処分してしまえば、その祭祀財産とともに継承した権利自体が存在しなくなるというわけです。

逆に言えば、お墓の処分も祭祀継承者がいなければできないことなので、今後、祭祀を継承していくことが難しいのなら、思い切って処分してしまうのも一つの方法かも知れません。

それぞれの個人の事情により継承したくない場合、また継承できない場合もあるでしょう。
その場合には、お墓をたたむ=墓じまいをすることになります。

長男でも継承放棄できる?

日本においては、すでに16世紀の頃に古くから跡目争いや財産の分散を避けるために、慣習として長子(多くの場合は男子を指します)が家を継ぐといった家制度がありました。

その家制度ですが、江戸時代に一般的になり、明治時代には家督相続制度として民法で明文化されましたが、戦後には廃止されています。
しかし、戦後70年経った今でも、多くの方に長男または長子相続の意識が残っており、地方に行くほど強くなる傾向があります。

そもそも、現代においては「長男でも継承放棄できる」どころか、長男が継承しなければならない義務自体が存在しません

一般的な相続財産は兄弟姉妹の間で均等に分割される時代なのですから、祭祀財産のみ長男が継承しなければならないとすること自体が、今の時代に即した考え方ではないのです。

長男である方が祭祀継承権を受け継ぐ意志をもたなければ、他の兄弟なり親族が継ぐことになるだけのことです。

お墓の継承権と相続権の関係

お墓

お墓は祭祀財産であること、また継承する人は一人であることが分かりました。

では、祭祀継承者は被相続人や親族に限られるのでしょうか?
また、親族がいない人のお墓は、継承されることはないのでしょうか?

ここでは、お墓の継承と相続権についてみていきましょう。

法廷相続人でなくともお墓の継承はできる

民法でいわれる相続財産は、亡くなった方の系譜に従って法定相続人に相続されますが、この祭祀財産に限っては、法定相続人でなくても相続することができます

法律による規定が何もないので、被相続人の遺言や指名があれば、他人となった前妻やその血のつながりのない子ども、また、極端な言い方をすれば、まったくの赤の他人でも継承することはできます。

また、被相続人の遺言や指名があれば、たとえ相続放棄をしても祭祀財産は継承しなくてはなりませんし、逆に、負の遺産から逃れるために相続放棄をした場合でも、祭祀財産は承継できるので、お墓は手放さずにすみます。

祭祀財産を相続するのは1人ですが、祭祀財産はお金に換金しにくいこともあり、承継者の相続分又は遺留分の算定の時にも相続財産には加えませんので、相続税の課税対象にもなりません。

そういう意味でも、誰が相続しても構わないということになります。

葬儀代は相続の対象ではない

葬儀は、追悼儀式を主宰した主催者=喪主が行うもので、基本的にその費用負担は喪主がすべてを負うものです。

基本的な考え方として、初七日までは追悼儀式であり喪主が費用を負担しますが、初七日からは祭祀にあたるので祭祀継承者が費用を負担します。
ただし、近年では、都合上、葬儀の日に初七日の法要を営まれることが多いので、その場合は初七日も葬儀費用に含めて考えるのが一般的になっています。

喪主と祭祀継承者は、多くの場合は同一であることが多いのですが、必ずしも同一である必要はなく、別でも構いません。
例えば、ご夫婦のうちのご主人がご両親より先に亡くなった場合など、喪主は妻で祭祀継承者は義理父という場合などがあります。

なので、その葬儀代を祭祀継承者が相続して負わなければならないという責務はありません
また、葬儀費用は相続が開始した後に発生する費用であるため、相続債務にもあたりませんので、相続人が応分して負担しなければならないということもありません。
あくまでも、儀式を執り行う主催者の負担ということになりますが、法的な決まりごとは何もないということを覚えておかれるといいでしょう。

ですから、故人が生前に葬儀会社と契約して、葬儀費用を用意している場合もありますし、相続遺産の中から支払うことも可能で、その場合には相続税の控除の申告もできますし、葬儀費用を加味した遺産分割をすることも可能です。

このように、葬儀と祭祀は別ものなので、分けて考えるとわかりやすいです。

お墓をたたむ手順

お墓

祭祀継承者になった方の判断で「お墓をたたむこと=墓じまい」ができることがわかりました。

墓じまいには、

  • お墓の改葬(移転)
  • お墓の処分(撤去)

がありますが、そのためには多くの手続きを必要とします。

お墓には遺骨が納められていますので、その遺骨をどうするかによって手続きが違ってきますが、一般的に

  • 改葬先の決定
  • 埋葬証明書の作成と発行
  • 改葬証明書の受領
  • 遺骨の取り出し
  • 納骨(散骨も含まれます)
  • 墓石の撤去

という手順に従って墓じまいを行います。
仏教であれば、遺骨の取り出しと納骨には閉眼供養(魂抜き)と開眼供養(魂入れ)の法要が必要になります。

祭祀継承者は、祭祀財産を自由に売却や処分をする権利を持つとはいえ、独自の判断で行う前に、親族間での話合いや了解を取り付けておかないと、後々の親族間トラブルに繋がります。

また、寺院墓地の場合には菩提寺である寺院の住職に相談して理解をいただかないと、こちらも離檀料などで金銭トラブルになることがあります。

墓じまいは、慎重に話を進める必要があります

檀家をやめるには

お墓が寺院にある場合、寺院は「菩提寺」であり、お墓の使用者は「檀家」という関係にあります。

祭祀を継承した場合、被相続人である故人が檀家であればそれも継承することになります。

寺院の行事や寄進なども継承することになるので、そのお寺の宗教や宗派と違う人が継承者となることは難しいことが多く、檀家をやめる=離檀も考えなければいけません。
また、お墓の処分(撤去)や改葬(移転)を考える時も、離檀することになります。

寺院の土地の一部を借りる形でお墓があるわけですから、お墓を移転したり撤去したりするには、寺院に土地を返す手続きとして、墓地使用契約の解除も必要になります。

改葬許可申請書は墓地納骨堂管理者の署名と捺印が、また、埋蔵証明書には埋蔵された方の氏名と死亡年月日、さらにそれを証明するために墓地管理者の署名と捺印が必要です。
どちらも菩提寺の住職に記入をお願いすることになりますので、遺骨を勝手に持ち出すことはできません

離檀がトラブルにならないように、菩提寺の住職によく相談し、やむを得ず檀家をやめる選択をしなければならない事情や状況などを伝え、十分にご理解を頂いてからその手続きを踏んでいきましょう。
今までお墓を守っていただいた寺院への感謝と敬意は忘れないでください。

菩提寺の住職から十分なご理解が頂ければ、離檀も円満に行うことができるでしょう。

お墓の権利放棄と墓じまい

お墓

身近だった方の遺骨や祖先の遺骨が納められているお墓ですから、できるだけ放棄しないで相続して継承するに越したことはないのですが、時代の流れとともにお墓の在り方なども変わってくるのは仕方がないことです。

お墓の継承が難しくなってきたからと言って、無責任に放置することなく、やむを得ないこととはいえ正しい手続きを踏んで放棄することは大事なことですし、今後はお墓を持つかどうかの判断も慎重にする必要がありそうです。

お墓の権利放棄を検討するなら、できるだけ祖先の霊を安らかに弔う方法を考えるのが、処分することで伴う心の問題の解決にもつながることでしょう。

墓じまいを考えるなら

  • 永代供養
  • 散骨
  • 樹木葬
  • 納骨堂
  • 手元供養

がありますが、納骨堂への安置は管理料の問題が、また手元供養は手元に遺骨が残るという問題があるので、後々に何も残らないようにしたいなら、墓じまいの方法として選択されない方が望ましいでしょう。

放棄したお墓は無縁墓地へ

お墓

お墓が身近にあり、法事やお墓参りなども含めた「祭りごと」が普段の生活の中に溶け込んでいれば、お墓の継承も何の問題もなくできるのでしょうが、なかなかそうはいかないケースがほとんどではないでしょうか。

社会問題となってきているお墓の放棄について、以下のことが分かりました。

  • お墓は祭祀財産と呼ばれ、分割できない相続財産である
  • お墓は一人の祭祀継承者にのみ承継され、祭祀継承者に選ばれたものは継承放棄はできないが、処分することで権利をなくすことができる
  • お墓を放棄するには、処分(撤去)または改葬(移転)の方法をとる

不動産が負動産とも呼ばれるようになった昨今、身近な人が亡くなり、遺品や遺産の整理をするうえで取り扱いに困るものの一つに「お墓」があげられるようになりました。

お墓も、以前なら「あれば安心」「跡継ぎはお墓の心配はいらない」と言われてきましたが、今ではお墓を相続すること自体が負担になりつつあるという状況も少なくありません。

相続する若年世代がお墓の管理を重荷に感じたり、また、先祖のお墓を相続してきた世代の方々が、次の世代である自分の子どもにそれを継承させることが難しくなり、終活の一つとして自分の世代でのお墓の放棄を考える、といったことが増えてきています。

お墓の放棄による相続人同士や寺院などとの金銭トラブル、業者による大量の墓石の不法投棄、また、相続したけれども、その後の継承者がいないため放置されて生じる無縁墓の撤去問題も含めて、お墓の放棄と放置は大きな社会問題になってきています。

いくら管理費を支払うことができても、手入れができそうにもなければ、今後はお墓というかたちではない他の供養の方法を検討してみることも、必要になってくるのかもしれません。

個人の土地にあるお墓以外は、お墓は所有権ではなくあくまでも使用権です。
使わなくなる、つまりお参りすることなどが無くなるのであれば、墓石や遺骨を撤去して、墓地の所有者=管理者に更地にして返す必要があります。

また、お墓も継承する方がいなければ、無縁墳墓となってしまいます
継承者が不明になってしまったお墓が、法律に従って1年間の公告を行った後に無縁墳墓と判断されれば、お墓は撤去されたうえ、土地は墓地管理者に返還されることになります。
そして、お墓の中にあった遺骨は、その墓地の無縁供養塔などの無縁墓地に合祀されることになります。

お墓は5千年前から存在していたとはいえ、支配者や権力者など特定の人のみが持つことができたもので、一般庶民に広がったのは江戸時代中期にキリスト教禁止令に伴い、檀家制度を広く行ったことにあるとされています。

それでも、今のような立派な石造りのお墓を持てるのは、財産をなした裕福な人のみであり、家制度によって受け継がれた「先祖代々の墓」という家墓が主流となったのは明治時代のことです。

その後、戦後に急激に核家族化がひろがり、その時代の人々にとって、マイホームを持ってお墓を立てることがステータスでもありましたので、現在の「一家に一つ」という個人で持つお墓の形ができたとも考えられています。

このように、今までもそれぞれの時代に即してお墓のあり方も変わってきたわけですから、現代は現代にあったお墓のあり方、また未来はその時代にあったお墓のあり方が求められていくのかもしれません。

終活の一つとして、元気なうちにご自身のお墓のあり方を考えるのは、大事なことです。
大事なことを考えていくうえで、この記事がお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

終活ねっとでは「お墓の権利の放棄」以外にも、終活に関する様々な記事を紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。

お墓を建てたいけどどうすればいいかわからない方へ...

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