遺産の相続放棄について解説!何からすればいいの?

遺産の相続放棄とは、ふだんの生活ではなかなか耳にする機会のない用語です。今回は遺産の相続放棄について、そのメリットとデメリット、相続放棄の申立ての手続きなどを詳しく解説していきます。いざという時に役立つ、私たちの暮らしに大切な知識です。

目次

  1. 遺産の相続放棄について
  2. 遺産の相続を放棄すべきケース
  3. 遺産の相続放棄メリット
  4. 遺産の相続放棄のデメリット
  5. 遺産相続放棄方法
  6. 遺産相続放棄の必要書類
  7. 遺産相続放棄の手続きの流れ
  8. 相続人が全員相続放棄した遺産はどうなる?
  9. 相続放棄と車の関係
  10. 死亡退職金は遺産扱いになる?
  11. 生活保護を受けている場合の相続放棄
  12. 遺産相続放棄について まとめ

遺産の相続放棄について

お金

大切な方とのお別れには悲しみがつきものです。
遺族の方々は葬儀や法要で故人の旅立ちを見送り、供養をします。
それらを済ませると、手をつけなければならないのが相続関係の手続きです。

一般的に相続関係の手続きは、まず相続財産をすべてリストアップしてから、相続人全員で分割協議を行います。
しかし、亡くなった方に財産ではなく負債が多く残った場合や、相続を完全に辞退したい相続人がいる場合は、相続を希望しないというケースがあり得ます。
分割協議の席上で「相続をしない」旨を述べても、遺産相続の持ち分を放棄したことにはなりません。
法律の規定に基づいて「相続をしない」ことを明言する、正式な相続放棄の手続きが必要となってきます。

相続放棄とは、ふだんの生活では耳にすることが少ない用語です。
まして相続放棄の具体的な手続きについては、なかなか知る機会がないのが事実です。

そこで今回は、相続放棄の詳しい仕組みと手続きの流れについて解説いたします。
今回の記事を読んでいただくことで

  • どんなケースで相続放棄を行なうべきか?
  • 相続放棄のメリットとデメリット
  • 相続放棄の具体的な方法
  • 相続放棄の手続きの流れ
  • 車の相続放棄
  • 死亡退職金は遺産扱いになるか?
  • 生活保護を受けている場合の相続放棄

といった知識をご理解いただけると思います。
ぜひ最後まで目を通し、いざという時にお役立てください。

遺産の相続を放棄すべきケース

お金

相続放棄の規定は民法で定められています。
民法939条では、「相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされる」と規定しています。
相続放棄とは、本来相続財産を引き継ぐはずの相続人が、遺産のすべてを放棄することです。

では、相続放棄は具体的にはどのような場面で行なわれるのでしょうか?
まずは、相続放棄を行なった方がよいと考えられる事例を一つずつ確かめていきましょう。

被相続者が多額の借金を抱えていた場合

これは被相続人(亡くなった方)が貯金(財産)でなく借金(負債)を多く遺して亡くなった場合です。
借金はいわばマイナスの財産であり、負債にあたります。
もし被相続人が、財産より多額の借金が残して亡くなった場合は、相続自体に魅力がないケースと言えます。
そこで第一の選択肢として挙げられるのが、相続放棄の手続きです。

借主が亡くなっても、借金はそのまま相続人に引き継がれます。
被相続者が多額の借金を抱えていた場合は、相続人がそれぞれの持ち分で借金を引き継ぐ形となってしまいます。
この場合は、相続放棄を行なうべき事由に十分に該当します。

相続者同士もめるのを避けたい場合

何度も話し合いを重ねても、相続人どうしの分割協議がまとまらないケースは多々あります。
相続のことを争続(そうぞく)と書く造語があるほどです。

相続人同士がもめる事例は、相続財産の多寡に関わりません。
相続財産が、けして多くない時でも、相続人同士がもめる事例があり得ます。
相続財産には、現金や預貯金だけでなく、土地建物といった分割が困難な財産も含まれます。
従って、多額でない財産であっても、分割することの困難さから、もめる可能性があります。

なかには、親が亡くなった後に相続の協議でもめることで、それまで仲の良かった兄弟姉妹が絶縁状態になってしまうケースもあるそうです。
こうした事態を未然に防ぐために、あらかじめ相続放棄を行なう場合があります。

未成年の相続人が借金を相続する場合

通常の相続の場合、相続人は財産と借金のすべてを相続します。
これは相続人が未成年であっても変わりません。

こうした場合、未成年が親の借金を引き継がなくて済むように、相続放棄を行ないます。
相続人が未成年者の場合でも、相続放棄することは可能です。

被相続人と疎遠で借金額が不明瞭な場合

生前から疎遠になっていて、亡くなった方(被相続人)の負債の額がよくわからない場合も、相続放棄を行なう事例に該当します。
これは、相続人どうしが、かねてより疎遠でいまさら会いたくないという場合や、生前から被相続人との交流が全くなく借金の手がかりもつかめないといった場合です。

この場合、被相続人の住所地や本籍地が遠方だと、相続関係の手続きにさらなる労力を要することになります。
そこまでして相続の苦労をしたくないと思うのも当然です。

こうした場合も相続放棄を行なう事由に該当します。

家業を子孫が継ぐ場合

これは、家族経営の事業を行なっている場合に多く見られる相続放棄の事由です。

相続人のうちの誰か一人が家業を継ぐ場合に、家業の事業権利を複数の相続人で分割して引き継ぐと、事業の経営がやりにくくなってしまいます。
そこで、相続人の一人を後継者として事業権利の相続を集中させることで、家業の引継ぎとその後の経営がスムーズに行なえます。
その際に、他の相続人たちは相続放棄の手続きが必要になるというわけです。

このように、多額の借金がある場合以外にも、相続放棄をするケースはあります。

遺産の相続放棄メリット

お金

遺産を相続放棄することで、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。

被相続人の残した借金から免れる

相続放棄を行なうことで、亡くなった方(被相続人)の残した権利関係(借金、債務、負債)の一切から免れることができます。
なお、この場合の借金には保証債務も含まれます。

また、相続放棄を行なうと、最初から相続人でない立場となり、相続全体の手続きに一切関わる必要がなくなります。
相続に関する争いから一切身を引くことができる点も、相続放棄のメリットの一つです。

遺産の相続放棄のデメリット

お金

メリットの一方で、相続放棄にはデメリットもあります。
相続放棄の手続きを始める前には、次のようなデメリットも確かめておきましょう。

財産調査が甘いと損してしまう

いったん相続放棄を行なうと、撤回することはできません。
もし仮に撤回ができるとなると、相続人全員に混乱を招く原因になるためです。

相続放棄をした後で、それまで気づかなかった高額の遺産の存在に気づいたとしても、まさに後のまつりです。
相続財産の調査には念を入れる必要があります。

また、相続放棄とは負債だけでなくプラスの財産もすべてまるごと放棄する方法です。
借金などのマイナスの財産だけでなく、動産と不動産の全ての権利がなくなります。

ちなみに、もしプラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐことができる場合は、「限定承認」という方法があります。

相続放棄を取消せる期間が決まっている

原則として、一度行なった相続放棄を取消すことはできません。
ただし、詐欺や脅迫によって相続放棄をした場合や未成年者が法定代理人に無断で相続放棄をした場合は、例外として相続放棄を取消すことができます。

相続放棄の取消しは、相続放棄の手続きと同様に家庭裁判所で行ないます。
取消しができる期間は定められており、だまされて相続放棄してしまったと気づいた時から6か月以内に行なう必要があります。
この6か月を経過した場合と、相続放棄をしてから10年が経過した場合は、相続放棄の取消権が時効によって消滅します。

遺産相続放棄方法

書類

相続放棄の手続きは、弁護士などの専門家に依頼することもできますが、自分自身で行なうこともできます。

すべての相続財産を確認したうえで相続放棄を行なうことを決めたら、家庭裁判所に相続放棄の申述の申立てをします。
ここからは相続放棄の具体的な手続きについて説明していきます。

相続放棄の申述者

相続人本人が申述者になります。
もし申述する相続人が未成年者の場合は、その法定代理人が代理して申述します。

なお、相続放棄の申述(しんじゅつ)とは、家庭裁判所に対して相続放棄の申し出をすことを意味します。

相続放棄の申立先

申立先は、亡くなった方の住所地(住民票の届出のある場所、亡くなった方の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所は、各都道府県の県庁所在地と函館市、旭川市及び釧路市に本庁が設けられ、また、全国主要都市に支部あるいは出張所が設けられています。

住所地を管轄する家庭裁判所は、裁判所のホームページで確認できます。

相続放棄の費用

相続放棄の申立を自分で行なう場合、費用の目安は3000円ほどです。
費用の内訳は、家庭裁判所に提出する申述書に貼付する印紙代(800円)、被相続人の除籍謄本(750円)、郵便切手代などです。

弁護士や司法書士に申述の申立ての代行を依頼する場合は、30000円から50000円が相場となります。

相続放棄期間

相続放棄の申述はいつでもできるというわけではありません。

民法915条では承認・放棄の期間として、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と規定されています。
相続放棄の申述ができる期間は限られているので、注意が必要です。

遺産相続放棄の必要書類

書類

管轄の家庭裁判所に提出する書類は、以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 亡くなった人の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 亡くなった人の住民票除票または戸籍の附票
  • 申立てをする人の戸籍謄本
  • 郵便切手

家庭裁判所に書類を提出すると、受付窓口の担当者は書類にもれがないことを確認して受領します。
提出する書類に不備のないように事前にきちんと用意することが、スムーズな手続きにつながります。

また、もし追加の書類が必要となった場合は、裁判所の担当書記官から連絡が入ることがあります。
その場合には指示された書類を追加して提出すれば問題ありません。

相続放棄申述書

相続放棄申述書は決まった様式があり、申述書用紙は家庭裁判所でもらうことができます。
また、裁判所のホームページからダウンロードすることもできて便利です。

気をつけたいのは、申立人が20歳以上なのか、20歳未満なのかで様式が異なる点です。
申立人が20歳未満の場合には、申述書用紙に法定代理人を記入する欄があります。

申述書の相続人の氏名欄には押印の必要があります。
この押印は認め印を使用して問題ありません。
また、申立人の欄には、連絡先として平日の日中に連絡がつく電話番号を記入しましょう。
もちろん携帯電話で大丈夫です。

申述書の右側には「申述の理由」を書く欄があります。

  • 被相続人から生前に贈与を受けている
  • 生活が安定している
  • 遺産が少ない
  • 遺産を分散させたくない
  • 債務超過のため
  • その他

以上の理由から当てはまる番号に〇をつけましょう。
1から5に該当しないときは、6のその他として理由を明記します。
さらに、相続財産の概略として、負債を含めた遺産をおおまかに記入しておきます。

亡くなった人の死亡の記載のある戸籍謄本

相続放棄申述書に添付する書類として、まず第一に挙げられるのが、亡くなった人(被相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本です。

これは、被相続人の最後の本籍地を確認するために必要な書類です。

最後の本籍地が記載されていればよいので、必ず戸籍謄本であるとは限りません。
在籍している人がすでにいなくなった状態の除籍謄本、あるいは旧式である改製原戸籍謄本に最後の本籍地が記載されている場合は、それらを取り寄せて提出します。

ちなみに、戸籍謄本や除籍謄本は本籍地のある市町村役場で請求します。
手数料は全国共通で、戸籍謄本が450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本が750円です。

なお、戸籍謄本のことを戸籍全部事項証明書、除籍謄本を除籍全部事項証明書と呼ぶ場合もあります。

亡くなった人の住民票除票または戸籍の附票

これは、亡くなった時の住所地がわかる書類として添付します。

死亡届が提出されると、住民登録が抹消されます。
この住民登録が抹消されたことを表す書類が、住民票の除票です。
住民票の除票は、被相続人が亡くなる直前に住んでいた市区町村役場で取得ができます。

また、戸籍の附票は本籍地のある市町村で取得できる書類で、その者の住所地の異動が記録されています。

住民票の除票と戸籍の附票は、どちらも相続放棄の申述の申立ての添付書類として有効です。
なお、実際では取得のしやすさから、住民票の除票を添付するケースが多いようです。

申立てをする人の戸籍謄本

申立てをする本人の戸籍謄本を添付します。
これは申立人と被相続人の相続関係を証明するために必要となります。
戸籍謄本のことを戸籍全部事項証明書と呼ぶ場合もあり、意味は同じです。
戸籍謄本は本籍地の市町村役場にて請求します。

郵便切手

郵便切手は連絡用として家庭裁判所が使います。
家庭裁判所によって、切手の金額と内訳が多少ですが異なります。
詳細については管轄の家庭裁判所に確認するとよいでしょう。

遺産相続放棄の手続きの流れ

人々

ほとんどの人にとって、家庭裁判所は馴染みのない場所です。
相続放棄の申述をするにあたり、初めて足を運ぶ場合、緊張してしまうかもしれません。
スムーズな申立てのために、ここでは遺産相続放棄の手続きの流れを頭に入れておきましょう。

相続放棄申述書をコピー

家庭裁判所に提出する相続放棄申述書は、記入が済んだらコピーを取っておくと安心です。

相続放棄申述書には申立人の押印が必要となります。
実印の必要はなく、認印でOKですが、コピーを取っておくことでどの印を押したのかがすぐにわかります。

また、後日、家庭裁判所から照会書(回答書)が届いた際に記載した理由を確認できます。
照会書(回答書)は申立てから1~2週間後に家庭裁判所から郵便で届きます。
内容は相続放棄に関する質問がいくつかあり、申立人はこれに回答することで相続放棄の意思確認が行なわれます。
こういった点からも、相続放棄申述書は手元の控えとしてコピーを取ることがおすすめです。

戸籍謄本の収集

相続放棄の申述の際に添付する被相続人の戸籍謄本は、亡くなった方と自分がどのような関係だったのかによって異なってきます。

相続放棄をする人が亡くなった人の子どもである場合は、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)だけを添付します。

しかし、相続放棄をする人が、亡くなった人の父母である場合や兄弟姉妹・おい・めいである場合は、その戸籍謄本だけでは足りません。
この場合は、被相続人が出生してから亡くなるまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本・改正原戸籍謄本)をそろえる必要があります。
市町村役場で戸籍を請求する際に、出生から全ての戸籍が必要な旨を伝えるとわかりやすいでしょう。
多く見られるのが、結婚などのタイミングで、本籍地が市外や県外に移っているケースです。
その場合は、移った先の本籍地の市町村役場で戸籍謄本を請求します。
本籍地の移動先が途切れないように、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本をそろえてから家庭裁判所に提出します。

また、相続放棄に関する戸籍は、必ず「謄本」が必要になります。
原本の内容すべてを写している「謄本」にたいし、「抄本」とは原本の内容の一部を抜粋して写しているものを指します。
戸籍抄本を取り寄せても、相続放棄の申立ての添付書類として使うことはできません。
注意しましょう。

切手・印紙を購入

相続放棄の申述には、収入印紙800円が必要です。
相続放棄申述書の上部に貼付欄があるので、そこに収入印紙を貼り付けます。

また、収入印紙と合わせて、連絡用の郵便切手を添付する必要があります。
申述の際に添付する郵便切手の金額と内訳は、家庭裁判所によって異なりますが、申述人一人につき150円~460円くらいのようです。
詳細については、相続放棄の申述を行なう家庭裁判所で確認しましょう。

なお、ほとんどの家庭裁判所には売店があり、そこで郵便切手や収入印紙を購入することもできます。

相続放棄申述書の作成

相続放棄申述書は様式が決まっています。
全国どこの家庭裁判所でも同じ用紙を使いますので、どこの家庭裁判所でも受け取ることができます。

様式にさえ沿っていれば、自分で相続放棄申述書を作成することも可能です。
しかし、自分で作成すると記載漏れや書き間違いのもとになるので、おすすめできません。
家庭裁判所まで自宅から距離があるという場合には、裁判所のホームページ「相続放棄の申述」から申述書をダウンロードできます。
裁判所のホームページには記入例も掲載されているので、それらも参考に相続放棄申述書の記載を行ないましょう。

家庭裁判所へ相続放棄へ必要書類提出

家庭裁判所への書類の提出は、自らが出向いて書類を提出する、もしくは家庭裁判所へ郵送する、いずれかの方法で行なうことができます。
家庭裁判所の家事受付では、書類一式を預かり、個別の番号を振ってから担当部署に書類を回します。

相続放棄の申述にあたり、もし必要な書類の準備について、心配な点がある場合はどうしたらよいでしょうか?
家庭裁判所によっては、家事手続案内のコーナーを設け、書類の提出に関する質問を受け付けています。
案内のコーナーの有無について、最寄りの家庭裁判所に電話で問い合わせてみてもよいでしょう。

家庭裁判所からの受理通知書を受け取る

相続放棄申述書と添付書類一式を提出すると、1~2週間後を目安に、家庭裁判所から照会書(回答書)が届きます。
これは、あなたは本当に相続放棄をしますか?という意思確認の意味です。

照会書(回答書)に記入、押印後に家庭裁判所に返送すると、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
この受け取りをもって、相続放棄の手続き自体は完了となります。

相続人が全員相続放棄した遺産はどうなる?

お金

遺産には、資産も借金も含まれることはすでにご説明しました。
では、相続人全員が相続放棄の申述をした場合、遺産はどうなってしまうのでしょうか?

全員が相続放棄をすると、相続人は誰一人いないことになります。
この場合、遺産は「相続財産法人」としてまとまった形となり、相続財産管理人によって管理、清算されることになります。
相続財産管理人は、相続に利害関係を持つ者(主に亡くなった方の債権者)が家庭裁判所に申し立てることで選んでもらえます。
具体的には、相続財産管理人に選任されるのは弁護士の場合がほとんどのようです。

相続財産管理人は法律に沿って、遺産の整理に着手します。
遺産を分ける相続人がいないかを調べたり、借金を返済したりする手続きです。
これらを済ませた後に財産が残るのであれば、その財産は国庫に帰属します。

相続放棄と車の関係

自動車

相続放棄をした後に、亡くなった方(被相続人)が乗っていた車を処分することは可能なのでしょうか?
車は動産にあたりますが、その価値の高さや登録制度、取引の頻度などから、例外的な位置づけである動産と言えます。

実は、被相続人名義の車の処分については、相続人が相続放棄をした場合の明確な規定はありません。
しかし規定がないからといって、被相続人名義の車をそのまま放置しておくことは、現実的には支障が出ます。
ここでは相続放棄と車との関係について、ご説明していきます。

財産的価値のない車

相続放棄をした場合、被相続人が持っていたすべての資産を放棄することになります。
この資産には当然に車も含まれるため、相続放棄の手続き後は車に関する権利も放棄されたものと見なされます。
被相続人が所有していた車を処分することも許されない、という考え方です。

しかし、この考え方では、乗る人がいなくなった車をいつまでも置いておくことになります。
そこで、財産的価値のない車に限り、相続放棄をした後でも車の処分を行なうことができるとする考え方があります。
これは、自動車に価値がないため資産には該当しないとする理由からです。

初度登録からおおむね6年以上が経過している場合、その自動車は既に財産的価値が無いとみなされます。
従ってこの場合、相続人の側で自動車の処分をしても、財産の処分にはあたらず、特に問題はないと考えられています。

財産的価値のある車

反対に、初度登録から6年未満で財産的価値のある車の場合はどうでしょうか?

車の名義変更は手続き上必要なものなので、問題ないとする意見があります。
その一方で、名義変更は遺産の処分にあたるとする意見もあります。

被相続人から、相続放棄をした本人に車の名義変更をすることが可能かどうかは、判断が分かれているのが事実です。
また、明確な規定もありません。
この場合は、自分で判断をせずに、弁護士や司法書士といった専門家の判断をあおぐのが得策のようです。
財産的価値のある車の場合は、名義変更をする前に必ず専門家に相談しましょう。

ローン支払い中の車

相続における遺産とは、資産だけでなく負債も含まれます。

従って、被相続人が自動車ローンを返済中に亡くなった場合でも、支払い中のローンが消滅することはありません。
ローンの残債は、そのまま相続人に引き継がれることになります。

しかし、相続放棄をすることで、自動車ローンの相続もないものとなります。
自動車ローンを相続したくない場合や車がいらない場合には、相続放棄をして車にまつわる権利を放棄することができます。

死亡退職金は遺産扱いになる?

お金

被相続人が死亡退職した場合に支給されるのが、死亡退職金です。
死亡退職金は、残された家族の生活保障を目的としています。

では、死亡退職金は遺産に含まれるのでしょうか?
ここでは3つのケースを見ていきましょう。

退職金規定に決まりがある会社

死亡退職金の受け取り人が、会社の退職金規定によって具体的に定められている場合、死亡退職金は遺産に含まれません。
遺産分割の対象とはならないケースです。

しかしこの場合、死亡退職金は相続の対象にはならないが「みなし相続財産」として相続税の対象にはなる、という点に注意しましょう。

退職金規定に決まりがない会社

一方で、死亡退職金の受け取り人が、会社の退職金規定によって定められていない場合、あるいは退職金規定そのものがない場合、死亡退職金は遺産となります。
この場合に相続人が死亡退職金を受け取るためには、遺産分割協議を経ることが必要です。

国家公務員の場合

被相続人が国家公務員の場合、国家公務員退職手当法の規定に基づいて死亡退職手当が支払われます。
これによると、死亡退職手当は遺族に支払うとされており、法定相続人とは異なる人を遺族として定めています。
死亡退職手当の支給の目的は、被相続人の収入で生活していた家族の生活を保障することです。

従って、国家公務員の場合の死亡退職手当は遺族である受給者に属する財産とされ、遺産には該当しないこととなります。

生活保護を受けている場合の相続放棄

お金

生活保護を受けている人も、当然に相続をする権利があります。
それでは、生活保護を受けている場合の相続放棄は可能でしょうか?
ここでは生活保護を受けている場合の相続放棄について解説します。

生活保護を受けている方が保有できる資産

生活保護を受給している場合でも、当然に相続を受けることができます。

ただし、生活保護を受けている方が保有できる資産は、次の通りに限られています。

  • 居住用に必要な資産
  • 事業用に必要な資産
  • 処分ができない資産
  • 処分がほぼ困難な資産

もし相続によって、これら以外の資産を取得した場合は、生活保護の受給資格を満たさなくなることも考えられます。

特例でない限り相続放棄は困難

生活保護を受けている方が相場放棄を行なうということは、本来受け取れるはずの遺産の取得を自ら放棄することを意味します。
生活保護制度の主旨からいっても、活用できる資産は活用するのが原則です。
従って、生活保護を受けている場合、活用できる資産を自ら放棄する相続放棄は困難となっています。

ただし、相続する遺産に負債が多いなど、特例の場合には相続放棄が認められる場合もあります。

遺産相続放棄について まとめ

お金

以上、遺産の相続放棄について説明してきましたが、参考にしていただけたでしょうか。
最後に今回の内容をまとめると

  • 被相続者が多額の借金を抱えていた場合や相続者同士もめるのを避けたい場合などは相続放棄をすべきケース
  • 相続放棄には被相続人が残した負債から免れるメリットがある
  • 相続放棄にはデメリットもある
  • 相続放棄の手続きの仕方と必要書類
  • 相続放棄の手続きの流れ
  • 相続人が全員相続放棄した場合、相続財産管理人が遺産を整理する
  • 相続放棄と車の関係
  • 死亡退職金は遺産扱いになる場合とならない場合がある
  • 生活保護を受けている場合の相続放棄

などのことがおわかりいただけたと思います。

相続の財産には、プラスにあたる資産だけでなくマイナスにあたる負債も含まれます。
相続放棄は、相続人間の単なる口約束では行なうことができません。

相続放棄について正しい知識を理解することで、亡くなった人に多額の借金があった場合でも慌てずに済みます。
また、相続放棄を経て誰か一人が相続人になることで、各種の資産がまとめやすくなり、介護資金などが捻出しやすくなります。

これらは、知っていて損はない相続放棄に関する知識です。
今回の記事をいざという時にお役立てください。

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