熟年離婚の財産分与を真剣に考える

近年、熟年離婚という言葉をよく聞くようになりましたね。
長年連れ添った夫婦生活を営んできたけれど、どうしても耐えられない!
そんな思いをため込んだまま一生を過ごすよりは、自分に正直に生きたいですよね。
ですが、熟年離婚を考える時に一番気になる事が、熟年離婚後の生活についてではないでしょうか。
「離婚後の生活自体に不自由はないのか?」
「熟年離婚をする場合は、今まで築き上げてきた夫婦の財産はどうなるのか?」
そんなことが気になるかと思います。
そこで今回は、気になる熟年離婚の際の財産分与についてご説明します。
内容としては
- 財産分与を請求できる期間
- 一般的な財産分与の相場
- 税算分与するときに対象になる財産とは
- 子供に関わる財産の財産分与
- 年金はどうなるのか
この5点について詳しく解説していきたいと思います。
気になっても、聞くに聞けない熟年離婚。
実際にいざ離婚となったときに行うことになる財産分与の実態をご説明しますので、一緒に勉強していきましょう。
熟年離婚の原因

長年連れ添った夫婦が様々な理由から別々の道を歩む事になる熟年離婚。
そもそも熟年離婚とは、一般的に20年以上の結婚生活を共にした夫婦が離婚する事を指しているそうです。
その為、例えば50歳の時に結婚して65歳で離婚したとしても、世間的には熟年者ではありますが、結婚生活が15年なので熟年離婚とは呼ばないのだそうです。
ではそんなに長い間生活を共にしていた夫婦が離婚という結論に至るのには、いったいどのような原因があるのでしょうか?
大きな原因は5つ
熟年離婚の離婚原因は、一般的な通常の離婚の場合と大きな違いはありませんが、長年連れ添ったからこそ溜め込んだ理由というのもあるようです。
その5大要因となっているのが、
- 性格の不一致
- 子供の自立をきっかけに
- 親の介護がはじまった
- 夫の退職後の生活リズムの崩れ
- 妻の怠慢な態度
このような内容になっています。
わかるなぁと言ってしまうかもしれません。
それぞれ、具体的にどういった内容なのか見ていきましょう。
性格の不一致
元々他人だった二人が結婚するので、多少の価値観の違いはあるものです。
しかし、結婚とはそれらを受け入れながら生活をしていくことであり、長年連れ添う事が可能なのです。
今の若い世代の夫婦にとっては、性格の不一致は離婚の理由として第一位に挙げられます。
しかし、最近では性格の不一致という根本的な理由が熟年離婚の理由としても目立ってきました。
なぜなら、一昔前は離婚自体が恥ずかしい事だというイメージがあったので、結婚当初から大きく価値観が違っていたとしても、我慢をして生活をしていたからです。
その反動が長年連れ添った挙句に性格の不一致という理由で離婚に至る事があるようです。
子どもが自立した
子どもがいる場合は、その子供の自立が離婚の原因になる事があります。
「子は鎹(かすがい)」という事で、子どものために様々な事を我慢してきたが、子どもの自立が引き金になり、夫婦をつなぎとめる者がいなくなってしまう事が理由です。
また、子育てがやりがいになっていた喪失感から、ということも考えられます。
いずれにせよ、子どもを理由にした夫婦生活だとしたら、お子様も仲が悪くなったお二人を見るのは辛いのではないでしょうか?
親の介護が始まった
双方の両親が健在の場合、誰もが年老いていく上で考えなくてはならない介護の問題が、熟年離婚の大きな原因の一つになります。
年老いた両親の面倒は家族みんなで、と言ってもなかなかそうはいかないものです。
例えば、それが自分の両親の場合はまだ我慢も出来ますが、相手の親の場合は介護までしたくないと思う方も多いでしょう。
双方の両親の介護について、数年後どうしていくべきかを話し合う必要があります。
退職後、夫が常に在宅することがストレスに
定年退職した夫が常に家にいる事で、妻がストレスを感じ不満が募っていく事があります。
長年働いてきた夫からすれば、定年後はゆっくりと自宅で過ごしたいのかもしれませんが、妻側からすれば夫のいない生活パターンがすでに出来上がっているので、いるだけでストレスになってしまうのです。
妻の怠慢な態度
最近増えている熟年離婚の理由です。
以前は熟年離婚と言えば、妻が夫に三下り半を叩きつけ離婚に至るという事が定番でしたが、最近は少し変わってきているようです。
10年ほど前までは熟年離婚を望んでいたのは妻側で、その割合は8割程でした。
しかし昨今、離婚に踏み切る夫が増え、割合が4割を超えているのだそうです。
原因として一番多いのは、妻の女性としての意識にあるようです。
身なりもそうですが、夫はいつまでも妻には女性としての最低限の立ち居振る舞いを求めているのかもしれません。
かつての夫たちは、一人になった時に食事などを含め生活力に欠けるところがありました。
しかし最近では、スーパーやコンビニもシニア世代を意識した総菜作りに力を入れたり、家事代行のサービスを行う会社も数多くあります。
男性が年老いてから妻と別れ一人になっても困らない世の中が出来つつあるのかもしれません。
そもそも財産分与とは

離婚後の生活に関わる最も大切な財産分与についてご説明します。
共有財産をわけること
離婚時に分ける財産は、結婚生活中に夫婦で協力して作った財産の事です。
この財産を「夫婦の共有財産」として離婚時には分けるのです。
反対に個人個人が独自に取得した財産は、例え結婚生活中だったとしても「夫婦の共有財産」ではありませんので、財産分与の対象にはなりません。
親から相続した財産などがそれに含まれます。
結婚前の個人財産は分与対象にならない
財産分与の対象は、結婚生活中に協力して作った財産なので、結婚前の収入から積み立てていた貯金などは財産分与の対象にはなりません。
財産分与の請求可能期間は離婚成立から2年
離婚の際の財産分与の請求は、離婚が成立した日から2年間と決まっています。
離婚が成立してから2年が経過すると、財産分与の請求権がなくなってしまいます。
離婚の際の財産分与の話し合いは、財産が多ければ多い程長期化する傾向にあるので、ついうっかり2年が経過していたといった事がないように気を付けておきましょう。
離婚が成立してから2年間というのは、具体的には役所に離婚届を提出して受理された日からという事です。
財産分与の相場は?

実際に離婚をして財産分与を行う際、分ける財産に、夫側・妻側としての相場はあるのでしょうか。
お互いに半分ずつが多いとされている
基本的には夫側と妻側、それぞれ平等に半分ずつ分けるのが原則です。
例えば妻が専業主婦で収入が全くなかった場合でも、財産分与は半分ずつになります。
反対に妻がフルタイムで働いていて多くの収入を得ていたとしても、やはり財産分与は半分ずつです。
夫婦のどちらに多くの収入があるのかといった事は一切関係なく半分ずつに分けます。
アンペイドワークも職業扱いとなりつつある
夫婦生活の中で出来た夫婦の財産を、分ける事が財産分与です。
先ほども説明した通り、財産分与の原則は夫婦で半分ずつとなります。
ではその財産を作ったのは、夫なのかそれとも妻なのかと考えた時に、金銭的に提供していたのは夫の場合が多いです。
女性の社会進出が盛んにおこなわれるようになったと言っても、やはり一般的には男性が稼ぎ出す生涯賃金と、女性が稼ぎ出す生涯賃金では圧倒的に男性の方が多いのが現実です。
しかし、そこで考えなくてはいけないのが「アンペイドワーク」の存在です。
「アンペイドワーク」は賃金の支払われない労働を指した言葉です。
経済的な利益を生む「ペイドワーク」の反対の言葉として使われるようになりました。
アンペイドワークを家庭生活の中に置き換えて考えると、家事全般や育児、高齢家族のお世話や地域住民との交流などがそれに含まれます。
専業主婦の場合稼ぎ出すお金はありませんが、毎日の家事労働によって夫の労働を支えながら助け、夫婦の財産を作る事に貢献したと考えるのです。
その為、離婚の際には例え専業主婦で収入が全くなかったとしても財産分与の請求が出来るのです。
預金以外や話し合いで解決できない場合も
夫婦生活が破綻したために離婚をするので、離婚における財産分与の話し合いがスムーズに進み決定する事はめったにありません。
そして財産分与の対象の財産は、預貯金だけとは限らないのでさらに解決しにくくなるのです。
大抵の場合は夫側と妻側の主張の違いから、かなりの長期戦になるそうです。
しかし、先にもご紹介しましたように離婚における財産分与の請求には期限が設けられています。
その期限は離婚が成立してから2年の間なので、夫婦双方の主張の違いから話し合いでの解決が難航する場合は、早いうちに家庭裁判所に申し立てを行い、2年の期限を過ぎてしまわないように注意をしておくことが必要です。
財産分与の対象

では実際に財産分与の対象になる財産には、いったいどのような財産が含まれているのでしょうか?
預金だけではない分与対象一覧
財産分与の対象となる財産は、夫婦で生活を共にしていた期間に作り上げた財産の事です。
その為別居をしている場合は、別居をする前までに作った財産という事になります。
別居中に何らかの理由で大きな財産を手にしたとしても、それは財産分与の対象にはなりません。
では財産分与の対象になる財産のご説明をしたいと思います。
預貯金
預貯金は一番わかりやすい財産です。
夫婦が生活する上で使っていた貯金は全て財産分与の対象です。
夫や妻が持つそれぞれ個人の預金だったとしても、結婚生活中に金額が増えた分は財産分与の対象になります。
保険
保険のうち、生命保険が財産分与の対象になります。
一般的に財産性の薄い損害保険は対象になりません。
住宅
住宅は、財産分与するうち、すでに形となっているものの中では一番大きな財産と言えるかもしれません。
住宅は持ち家か借家かで分与の方法なども変わってくるでしょう。
詳しくは後程ご説明したいと思います。
株式
株式を保有している場合は、株式も財産分与の対象になります。
時価で計算をして換金をするかどうかはその時の判断になります。
自動車
自動車も財産分与の対象です。
売却して売れた金額を折半する場合と、自動車の評価格に応じて判断し、名義の変更で対処する場合があります。
退職金
近い将来退職金が支払われることが確実な場合は、退職金も財産分与の対象になります。
退職金を財産分与の対象とするかどうかは話し合いで決定しますが、離婚時に退職金の仮計算をして支払う場合と、離婚後退職金を実際に受け取ってから支払う場合とあります。
借金も同様に両者で分与する
余り知られていないことかもしれませんが、財産の中にはプラスの財産だけではなくマイナスの財産も含まれています。
このマイナスの財産はいわゆる借金のことを指し、ローンなども同じくマイナスの財産に含まれます。
結婚生活を送る中で生活のために作った借金は、離婚時に負の財産としてプラスの財産から差し引いて計算します。
個人的な借金は個人のもの
財産分与の対象になる財産は、基本的に生活の中で出来た財産なので、夫や妻のどちらか一方が自分のために作った借金に関しては、相続の義務がありません。
自分だけのために借り入れた借金に関しては、借り入れた本人に返済の義務が生じます。
家をどうするか

すでに形となっている財産分与の対象の中で、最も大きな分与対象となるであろう家の問題はどうすれば良いか気になりますよね?
今回は、
- 賃貸の場合
- 持ち家の場合
- 家賃収入のある物件の場合
この3つの場合にわけてご紹介したいと思います。
賃貸の場合
賃貸住宅に居住している場合は、基本的に財産ではないので財産分与の対象にはなりません。
しかし入居時の契約で、礼金や敷金などがある場合で解約時に返金される時には、その金額を折半します。
持ち家の場合
賃貸の場合は財産分与といっても敷金礼金ですみますが、持ち家は半分にわけることができませんよね?
では、現在生活している自宅が持ち家だった場合はどのようにすればいいのでしょうか?
どちらかの持ち家にする
どちらかの持ち家にする場合は、それ以外の車や株等の財産をもう一方が得ることで解決する場合が多いようです。
また、それ以外にすでに形としてあるもので分与するものがなく、話し合いがつかない場合には住宅査定を出して評価額分を預貯金から差し引いて折半するといった形がとられます。
お金に換算するならば
ローンが残っていない住宅の場合ですと、住宅評価格を査定して現金に変えて考えます。
さらに住宅を購入した時に双方または両方の両親からの援助があった場合や、独身時代に作った貯金を、住宅の購入資金のために使った場合は、その金額を差し引いて計算する事になります。
ローンが残っている場合は?
財産分与の計算で一番大きな問題になって来るのが持ち家住宅の多くは、ローンで払っている方がほとんどでしょう。
離婚時に住宅ローンが残っている場合は、住宅の売却時の予想金額からローンの残金を差し引いて計算する事になります。
この時に住宅の評価予想額よりも住宅ローンの残金の方が上回っている状態の住宅を「オーバーローン住宅」と言います。
もし、持ち家で住宅査定をしたくとも、ローンが残っている場合、特にオーバーローン住宅の場合はなかなか判断が難しくなってきます。
家賃収入のある物件の場合
家賃の収入がある場合は、その物件は財産分与の対象になるのでしょうか?
相続で得た物件の場合
家賃収入のある物件を所有している場合は、その物件が親からの相続で得た物件の場合は財産分与の対象にはなりません。
ただし、その物件を存続させて家賃収入を継続させるために夫婦で協力していた場合は、財産分与の対象になる場合があります。
夫婦で購入した場合
投資目的で夫婦で購入していた場合は、財産分与の対象になります。
この場合は、売却してその金額を折半にする方法と、その住宅の評価格を計算して財産分与分を清算する方法があります。
また、住宅自体は残して毎月入ってくる家賃収入を折半にする方法もありますが、相手からの支払いが滞る心配があります。
その他の家財道具などはどうすべきか

ではそれ以外に所有している物に関してはどのように計算をすればいいのでしょうか?
お金に換算しても価値がないことが多い
購入時には高額だった商品も、何年も使っていくうちに価値がなくなっていることが多いです。
リサイクルショップなどに持ち込んだり、引き取り業者に依頼したりと方法はいくつかありますが、出来るだけ高値で買い取ってくれるところに依頼して引き取ってもらう事がいいですね。
お互いに話し合って決めるケースが多数
家財道具はお金にならないことがほとんどです。
そのため、一番のおすすめは離婚後に始まる新生活のために夫婦で話し合って分け合うことでしょう。
結納金で買ったものは妻のもの
離婚時における財産分与は、結婚生活の中で出来た財産が対象なので、結納金で揃えた物は基本的に妻の所有物になります。
こどもが関わる財産分与について

離婚時に子供がいる場合は、財産分与に関してはどのように関係してくるのでしょうか?
財産分与においての生命保険
生命保険に関しては財産分与の対象になりますので、解約をして折半にするか、契約はそのまま継続をして、見合った分の現金を分与します。
子供のための保険
子供のために支払っている保険は財産分与の対象になるのでしょうか?
学資保険の支払い
子供のための学資保険だったとしても、契約者が両親の場合は財産分与の対象になります。
その場合は、子供の将来のことまで考えた上でどちらが子供を引き取るのか、どのくらい将来お金が必要なのかについても話し合う必要があります。
学資保険を解約することで、子供の将来に選択肢をなくすことが最も離婚において注意しておかなければならない点でしょう。
自治体の自動手当
自治体から支給されている児童手当も財産分与の対象になります。
児童手当は、児童を養育している人に支払われるものなので、財産分与の対象になるのです。
この場合も、学資保険と同様に子どもの今後を考えて分与をしましょう。
年金はどうなるの?
長年払い続けてきた年金は、どちらかが家庭にいることで配偶者の扶養となっているためにもらえる年金が将来少なくなるのではと心配になる方もいるでしょう。
この年金は離婚によってもらう事が出来なくなるのでしょうか?
共働きなら
年金に関しては財産分与ではなく、「年金分割制度」の利用が可能です。
この制度は厚生年金や共済年金に対する制度で、国民年金は当てはまりません。
共働きで夫婦どちらも厚生年金だった場合、それぞれの納付した金額の半分の請求が可能になります。
あくまでも支払った金額の半分で、将来もらえる予定の金額の半分ではありません。
専業主婦(夫)なら
配偶者が厚生年金や共済年金だった場合、専業主婦(夫)として家庭を支えていたので、ご自身は国民年金のみだったとしても、配偶者の厚生年金や共済年金が請求できます。
こちらもあくまでも払い込んだ金額の半分で、将来もらえる金額の半分ではありません。
配偶者が国民年金だけだった場合は、請求することは出来ません。
また、請求する本人に年金受給の資格がないと認められません。
配偶者の年金の半分を貰う場合がほとんど
「年金分割制度」は平成16年に導入された新しい法律です。
それまでは離婚によって配偶者は年金をもらう事が出来なくなるため、離婚後の生活を考えると離婚自体を躊躇する事が多かったのですが、この「年金分割制度」の登場によって、配偶者の払い込んだ年金の半分を請求する事が一般的になりました。
離婚したその後を考えてみる

子供も独立して年老いた夫婦二人になった時、パートナーの許せない部分ばかりが目に付くようになってきました。
煩わしいしがらみを全て捨て去り新しい生活を考えた時、一見バラ色の未来が見えてきますが、果たして本当にそうでしょうか?
実際に熟年離婚を考えている場合は、これから起こって来る財産分与などの面倒な部分をよく考えて結論を出すといいと思います。
熟年離婚の財産分与について まとめ

熟年離婚の財産分与についてご紹介しましたがいかがだったでしょうか。
今回の記事では実際に離婚する場合の財産分与の請求方法や、当てはまる財産についてご紹介しました。
- 財産分与を請求できる期間は、離婚成立から2年間。
- 一般的な財産分与の相場は半分ずつ。
- 財産分与する時に対象になる財産とは婚姻期間中に二人で作った財産のみ。
- 子どもに関わる財産の財産分与は可能。
- 年金は年金分割制度の利用が可能。
といった事が分かりました。
離婚は結婚よりもエネルギーが必要だという事をよく耳にします。
年数を重ねた夫婦ならなおさらの事です。
離婚によってバラ色の未来が待っている人もいますが、そうではない人もたくさんいます。
実際に離婚をお考えの場合は、今一度様々な事を天秤にかけて判断してみるといいですね。
この記事が参考になれば幸いです。