日本でかつて広く見られた土葬 どのようにして「禁止」に?

土葬とは、文字通り故人の遺体を土に埋めて埋葬するやり方です。日本でも古い時代に見られた土葬ですが、現在では一般的に禁止されているという認識が広まっています。日本での土葬はどのようにして「禁止」といわれるようになったのでしょうか?

目次

  1. かつて日本で見られた土葬
  2. 日本では土葬はいつから行われていたか
  3. 土葬が禁止とされた理由
  4. どうしても土葬されたければ・・・
  5. おまけ:皇室の方の埋葬事情
  6. まとめ

かつて日本で見られた土葬

お墓

現在の日本では故人の遺体の処理の方法は火葬で行われています。
しかし、かつての日本では遺体をそのまま土に埋めて処理する土葬と呼ばれる方法も使われていました。

日本の歴史上、古墳や集団墓地などのように土葬が行われていた例が多くみられました。
上は皇室から、下は普通の庶民に至るまで長い間、土葬が行われていたのです。

しかし、その土葬も明治時代に入ってから、いろいろと事情が様変わりしてきました。
現在では「土葬は禁止である」という認識が一般的に広まっている状況ですが、はたして実際はどうなのでしょうか?

今回は、土葬の禁止をめぐる事情を見ていきます。

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日本では土葬はいつから行われていたか

お墓

大昔から見られた土葬

日本では土葬はいつごろから見られたのでしょうか?

時代をさかのぼりますと、大昔、それも旧石器時代から行われていました。
ただ、その頃の人々は移動生活が主であったため、集落というものはなく、あっても一時的な狩猟用のキャンプ程度のものでした。
そのため、誰かが亡くなればそのキャンプの近く、でなければ移動の途上で土を掘って埋葬したものでした。

その後、縄文時代に入り集落が形成されるようになっても、集落の住居の内部に埋葬する例や、のちの時代には集落から離れたところに集団で埋葬する例も出てきます。時代が下るにつれて、共同体ひいては国家のリーダーだけ他の人間とは別のところに豪華な形の墓を持つようになりました。
古墳時代に見られる古墳はその最たる典型です。

土葬での遺体の入れ方も様々

土葬では遺体の入れ方も様々でした。
例えば縄文時代では、遺体に邪悪な霊が入らないように、遺体の下半身を曲げて石などで押さえつけたあとで埋める「屈葬」というものも見られました。
なお、縄文時代の場合、棺というものがまだなかったため、そのまま土に埋めて埋葬していました。

後の時代になると、棺に入れて埋葬する方法も取られました。
日本の古墳でも、大王(天皇)など有力者の遺体を棺の中に入れたうえで、玄室と呼ばれる古墳の中の遺体を安置する区画に収めるという方法も取られていました。
この際の遺体の入れ方は、体を伸ばして仰向けの状態で寝かせる「伸展葬」と呼ばれるものでした。

いわゆる「棺桶」と呼ばれる形の棺が出てくるのは鎌倉時代より後のことです。
この時代には、樽の形をした棺が出現し、遺体をその中に入れたうえで土に埋めるようになりました。

ただ、土葬がこのように広く行われていた一方で、仏教の伝来とともに伝わった火葬も広く行われていました。いわゆる「荼毘に付す(死者を火葬で弔う)」という言葉も昔から火葬が行われてきた中で伝えられてきたものです。

土葬が禁止とされた理由

葬儀

明治政府による火葬禁止令と土葬

日本という国が生まれるはるか昔から行われていた土葬ですが、その土葬をめぐる事情は明治時代から様変わりするようになります。

それは、土葬そのものではなく火葬をめぐる議論から始まりました。
明治政府は天皇を頂点とした国家をつくるために国家神道を採用するなど神道寄りの立場に立っていました。その神道寄りの人々が仏教で昔から行われていた火葬に反対したことから、1873年に火葬禁止令を出しました。

もちろんのこと、仏教側からはこの禁止令に対する猛烈な反発が起こりました。
さらに、都市部での土葬用のスペースが足りなくなったことや衛生面からも火葬は好ましい葬礼の方法であるという意見も出されたため、1875年にこの法律は廃止になり、火葬が再び広く行われるようになりました。

ただ、その後昭和初期までは火葬場が整備されていなかったこともあって、それまでの方法で土葬が広く行われました。

実は日本の法律では土葬は禁止していない

誤解されているようですが、実は現在の日本の法律では土葬そのものは禁止してはいません。
日本の法律で土葬について触れているのは、1948年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)というものです。

この法律では、土葬も火葬と同じように取り扱われています。
土葬関係で禁止していることといえば、第3条の死体を原則24時間以内に火葬及び土葬してはいけないという規定くらいです。
ただしこれは火葬についても禁止ということなので、土葬だけを差別しているわけではありません。

このため、「日本では国レベルで土葬を禁止している」という認識は誤りといえるのです。

土葬の禁止規定は実は自治体の条例に

それでは、「日本では土葬は禁止」という認識はどこから出てきたものなのでしょうか?

ここでまた先ほどの墓埋法が出てきます。
その第10条に墓地の経営に関する規定があるのですが、それによれば墓地の経営には都道府県知事の許可が必要とされているのです。さらにその都道府県は墓地関係の条例を定めており、東京都や大阪府などでは土葬禁止区域を指定しているのです。

さらに、そのほかの地域でも地方自治体(市町村)や宗教法人などが自主的に墓地経営のルールを定めており、多くの場合土葬を受け入れない取り決めをしているのです。

このように日本国内では一般的に土葬をやりづらい環境であるため、「日本では一般的に土葬を禁止している」という認識が出てくるようになったのです。

特例的に土葬にしたケース

一般的に土葬をやりにくい状況にある日本ですが、実は特例的に土葬を行ったケースがありました。

それが、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。
地震や津波で多くの死者が発生したうえ、交通手段や燃料の問題もあったりして火葬だけでは遺体の処理が間に合わない状況に陥りました。

そこで特例的に土葬が行われることになりましたが、現地の葬儀業者も被災したため、遺体の運搬は建設業者のトラックで行われ、その後陸上自衛隊の手で埋葬されました。

どうしても土葬されたければ・・・

人々

地方自治体の条例や墓地を経営する団体の自主ルールなどで土葬をしづらいため、「土葬のできるところはあまりないのではないか」ということになりそうですが、実は土葬の方法がないわけではありません。

1つには、クリスチャン(キリスト教徒)やムスリム(イスラム教徒)になって墓地霊園を探すという方法です。
キリスト教やイスラム教では埋葬は基本土葬であるため、考え方としてはやりやすいかもしれません。

もう1つは、上記の地方自治体の条例や墓地経営団体の自主ルールによる土葬禁止の縛りのないところで土葬してもらうというものです。探すのは大変かもしれませんが。

おまけ:皇室の方の埋葬事情

お墓

さて、一般的に禁止という認識が広がるほどやりにくい土葬ですが、伝統的に行っている人々がいます。

それが皇室の方々です。
歴代の天皇や皇后は陵(みささぎ)と呼ばれるミニ古墳みたいなお墓を作り、そこに葬られます。
この時の埋葬の方法が土葬なのです。

ただし、現在では皇族の中には自ら希望して火葬で葬られるという方も増えてきています。

まとめ

お墓

日本でいわれている土葬の「禁止」についてみてきました。
一見すると国全体で禁止しているように見えるのですが、実は地方自治体の条例や墓地を経営する団体による自主ルールなどによって土葬を受け入れない環境が強すぎたことが原因でした。

このように日本国内では土葬がしづらい現状ですが、どうしても国内で土葬されたいのであれば土葬禁止の規定のない地域での埋葬を希望するか、あるいは土葬可能な宗教の信者になるなどかなり綿密に手を打たなければいけないといえます。

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