反りが合わないと大変!日本刀と鞘の密接な関係

「反りが合わない」や「元の鞘に納まる(収まる)」ということわざがあります。ご存知の方も多いと思いますが、実は日本刀と鞘の関係が語源になっているのです。日本刀と鞘との関係がどれほど密接だったのか、紐解いていきたいと思います。

目次

  1. 日本刀と鞘について
  2. 名称
  3. 修理の仕方
  4. 抜刀と納刀
  5. 日本刀についてのまとめ

日本刀と鞘について

日本刀

日本刀と鞘は必ず一対になっています。
時代劇を見ていても、日本刀だけで持ち歩いている人も鞘だけで持ち歩いている人はいません。
自身は勿論、周囲を不必要に傷付けないためにも、そして日本刀そのものを傷や破損から守るためにも、鞘はとても大切なものになります。

それぞれの材料

日本刀の材料となる物は「鉄」です。
ですが、溶鉱炉を用いて高温で一気に還元する鉄とは違い、「タタラ」と言われる作業で低温でゆっくりと還元して作られる物で「和鉄」と言われています。
和鉄は砂鉄から作られますが、私たちが想像する川の砂鉄や砂の砂鉄とは違います。
川や砂の砂鉄は採取量が少ないため、山を切り崩して採取する山砂鉄が素材となります。
その砂鉄を数日間タタラで吹いて低温還元すると、少量の玉鋼と包丁鉄・ずくなどの品質の違う鉄が出来上がりますが、この中でも玉鋼が日本刀の原材料となります。
しかし、玉鋼は多くの砂鉄からほんの少量しか採取できないので、そこに包丁鉄などを混ぜて「卸し鉄」を作り、それが日本刀の材料となります。

鞘の材料は「木」が多いです。
古い時代には牛革や竹を用いたものもあり、後には「朴木」製の物が多く薄造です。
その後には厚みを加えて、革包鞘、漆塗鞘などが多く用いられました。
中世の太刀拵には金銅、銀などが用いられていて装飾性が高いものになっています。
他にも錦包鞘、蛭巻鞘、籐巻鞘などもあります。

作り方

日本刀

工程を追って日本刀の作り方をご紹介します。(ここでは玉鋼のみを材料にした作り方です)
①水へし―玉鋼を赤くなるまで熱し打ち延ばし、水に入れて急冷し焼きを入れる。
②選別―打ち延ばし板状になった玉鋼を2~3㎝大に小割していき、硬さなどで分けていきます。
③積み沸かし―「てこ棒」という鉄の棒の先端に玉鋼の欠片を積み、和紙で包み、藁灰と水に溶いた粘土を掛けて「ほど」に入れ、1300~1500℃近くまで温度を上げて、叩いて鍛接します。
④折り返し鍛錬―塊になったものを形を整えながら長方形に延ばし、切れ目を入れて折り曲げる。これを再び「ほど」で熱し鍛接し延ばし、切って折って曲げてという工程を繰り返します。
⑤造込み―数種類の硬さや粘りの違う鉄で内部の構造を作ります。
⑥素延べ―延ばした材料をざっくりとした日本刀の形にしていきます。
⑦火造り―日本刀の形に鍛造整形をします。
⑧荒仕上げ―専用の道具を使い、火造りでできた形を更にシャープに整えていきます。
⑨土置き―仕上げた刀身に焼刃土を塗り、刀身の中に硬度差をつけていきます。この工程で刃紋が浮かび上がります。
⑩焼き入れ―刀身を700℃後半~900℃前後まで熱して急冷することで日本刀の「反り」を作ります。
⑪鍛冶押し―刃紋を確認して、粗く研ぎながら形を整えていきます。
⑫刀身彫刻―刀身に彫刻で装飾を施していきます。この工程がない場合もあるます。
⑬茎仕立て―刀身と柄を固定する「目釘」を差す穴をあけます。
⑭銘入―柄で隠れる部分に鍛冶師の名前や制作年月日などを彫ります。

以上の工程によって刀身が出来上がります。

鞘には「白鞘」と「拵」があります。
白鞘は「休め鞘」とも言われ、日本刀の保存用の鞘です。
一方拵は戦闘用の鞘である程度丈夫に作られています。
ここでは白鞘の作り方をご紹介します。

①2枚に切断した板全体に鉋をかけて、表面を平らにしていきます。
②刀身を板にのせて鞘の大きさや柄の位置を決めて「けがき」します。
③2枚の板を刀身の2分の1の深さまで彫ります。
④刀身に油を塗って、板に合わせて当たる部分を確認する。板に油が付いていれば刀身の当たっているので、この部分を削り落としていきます。
⑤④の工程を繰り返しスムーズに抜き差しできるようになれば、刀身に油を塗った状態で納刀して置き当たりがないか確認します。
⑥「はばき袋」の作製。刀身にはばきを付けテープで固定し、はばきを「けがき」し彫っていきます。
⑦刀身を鞘に納めた状態で柄を彫る。この時に板に目釘穴を開けておきます。
⑧続飯(ご飯をすり潰したもの)を使い柄を接着する。
⑨柄とはばき、鞘と柄がそれぞれぴったり合わさるように鉋で切り出します。
⑩鞘を続飯で接着します。
⑪接着した鞘の側面に刀身の形を「けがき」して、鉋で切り出します。
⑫鞘の外観を楕円に近い丸みのある8角形に軽軽していきます。
⑬刀身と鞘を固定する目釘と作成します。

以上のような工程で白鞘の完成です。
拵の場合は柄は別に作り、鞘自体に「栗形」や「鐺」などが付いています。

名称

日本刀の刀身も鞘も様々な部位があります。
刀身で少なくとも21の部位があり、鞘は拵の種類により部位の数が様々です。
装飾性の高い太刀の拵は凝ったものになり、通常戦闘などで使う刀の拵は実用性を兼ねたものになります。

日本刀

主な部位9ヶ所をご紹介します。

①刀身―刀の切先から、柄に隠れている茎までの範囲。
②切先―刀の先端。鋭く尖った部分のみを言うことも、先端から3寸(約9㎝)の幅を言うこともある。
③刃―言わずもがな斬れる部分です。
④刃先―刃の中でも鋭くなっている部分。
⑤物打―実際に刀で斬る時に中心的に使う部分。
⑥峰(棟)―刃の反対側にあり、斬れず厚さがある部分。
⑦鎬―刀身の断面を見た時に、峰寄りの所にある張っている部分。
⑧茎―柄に隠れている部分で、ここに銘があります。
⑨目釘穴―刀身と柄を固定する「目釘」を通すための穴です。

拵の部位は実践向きなものになります。
その中で主な7ヶ所をご紹介します。

①鐔―刀身と柄の間にあるもの。柄を握る手を守るもので、透かし彫や蒔絵などの技法が施されているものがあります。
②栗形―下緒を通す部分。
③鐺―鞘の先端の部分。
④下緒―帯刀した際に帯に結んで固定するための紐。
⑤柄巻―柄の周囲を巻いている糸、または革のこと。
⑥目貫―元々は目釘のことだったが、目釘と分離して柄の目立つ部分に据えられた飾り金物のことをさすようになった。
⑦柄頭―柄の先端にある金属の部分。

修理の仕方

現代ではそうそうあることではないですが、戦闘で日本刀を柄っていた時代は疵ができたり、刃こぼれが起こったり、鞘が削れたりということは十分おこっていたと思います。
その度に日本刀を買い替えていたら、使い慣れる間もなく交換することになるかもしれませんし、何よりお金がかかってしまいます。
そのため修理されることが多いと思われます。
現代でも刀剣の修理を行う専門店があり、家の蔵から出てきた日本刀の修理を依頼する方があるそうです。

日本刀の修理内容

日本刀の修理で一番行われるのは「研ぎ」です。
戦闘によって欠けてしまったりした刃を蘇らせるには研師の手が必要不可欠で、昔の戦には研師が従軍していたそうです。
日本刀の研ぎは包丁や鎌の研ぎとは全く違うものになります。
包丁や鎌は刃先を鋭く尖らせ物が切れるようにしますが、表面はそこまで磨かずピカピカにはなりません。
しかし、日本刀の研ぎは刃先を鋭く尖らせるだけでなく、刀の全体をピカピカに磨き上げる必要があります。
その研ぎ方は一様ではなく刃・峰・切先・地(平らな部分)と全て研ぎ方や磨き方が違います。

なお、刀身を研いでいくと少しずつではありますが、刃は細く薄くなっていきます。
ですので刀にとってはダメージになってしまいます。

鞘の修理内容

鞘は木製の物が多いので、削れてしまったりヒビが入ってしまったり、割れてしまうことがあります。
刀の抜き差しをしてると一番最初に削れてきてしまうのが、鯉口です。
ここが削れてしまうと、刀を納めた時にしっかりと納まらず傾けると簡単に刀が抜けてしまいます。
これは自身や周囲の怪我にも繋がりますし、刀を破損してしまうので修理は必ず必要です。
鯉口の削れは、薄い木材を貼り付ける方法が主です。

抜刀と納刀

時代劇を見ていると、敵に囲まれた主人公がサッと刀を抜き敵を倒し、スッと刀を納めるシーンがよくありますよね。
あそこまでスムーズに抜刀・納刀ができるのには、技術もありますが刀の長さも関係してきます。
刀が長すぎるとうまく抜けずに引っ掛かってしまいますし、鞘に納めるのにも一苦労です。
逆に短いと抜刀も納刀も簡単ですが、見ていて格好が付きません。
ですので、自分に合った長さの刀を使うことが一番大切です。

また、刀の種類によって刀の帯び方が違うので抜刀や納刀の仕方が違います。
太刀と打刀で大きく変わるので、この2つをご紹介します。

太刀

太刀は刃を下に向けて、帯に紐で結びぶら吊るすように下げます。
太刀をよく使用していた時代は馬上で刀を抜き戦う機会が多かったので、馬上でも刀が抜きやすいように刃を下に向けていたそうです。

太刀は刃が下に向いている上に反りが深いので、そのまま抜刀すると体が前傾になってしまうので鞘を横に倒し刃を外側に向けてから刀を抜きます。
そして刀身が長いので切先を鞘に入れた後、柄を持った右手を右から左へ大きく動かして納刀します。

打刀

打刀は日本刀の一種ですが、「刀」というと大抵の場合打刀のことをさします。
主に徒歩で行う戦闘(徒戦)で使うために作られています。
徒戦はともすれば1対多数の乱戦になる可能性があり、そんな時は大きな太刀よりも少し短くて抜刀をしてからすぐ攻撃に移ることのできる打刀の方が有効に使うことができます。

抜刀

剣術の流派によって様々なやり方があり、大きく分けると①鞘を倒して刃を外側に向けて斬り付けも行える抜刀、②刃を上にしたまま柄を前方に出し上から斬り付けられる抜刀の2種類に分けられると思います。
剣術は「抜刀=攻撃」という概念が大きいです。
実際の戦場では、剣道のように剣を抜き向かい合ってから戦いが始まることはまずありません。
ですので即座に敵の攻撃に対応できるよう、抜刀にも攻撃の動きが含まれています。

納刀

納刀も抜刀と同様に流派により様々な形があります。
①鞘を左に傾け、鯉口を握る手の親指の付け根に刀の峰を置き、柄を前方に出して切先を鞘に納めて納刀する方法
②鞘の向きは変えず、鯉口を握る手の親指の付け根に真上から刀の峰を置き、柄を前方に出して切先を鞘に納めて納刀する方法
の2種類がよく見る納刀方法だと思います。

敵を倒し納刀している間にも、何かがあれば再び刀を抜けるように周囲に気を配っています。
納刀をする際の柄を握る右手は、柄を握り込むのではなく添えるように握っています。

日本刀についてのまとめ

日本刀

日本刀は1振1振手作りで鍛錬されます。
そして鞘はその日本刀に合うようにオーダーメイドで作られるので、冒頭で述べたように日本刀と鞘は一対になっています。
ことわざの「反りが合わない」は、反りの形が合わない日本刀と鞘はうまく納まらないことが語源になっています。
「元の鞘に納まる(収まる)」は、抜刀した日本刀が本来納まっていた鞘に納まることが語源です。
「日本刀」と「鞘」には切っても切り離せない密接な関係性があります。

近年、博物館で刀剣を目にする機会が増えてきていると思います。
実際に目の当たりにすると刀身の輝きや刃の鋭さ、鞘の装飾などどこかに魅かれる魅力があるはずです。
博物館に行かれた際には是非じっくりと日本刀を見てみて下さい。

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