情緒的な冬の短歌あれこれ。百人一首から現代まで

万葉の昔から短歌は日本人に愛されてきた抒情詩です。俳句や川柳に比べて、短歌はちょっとハードルが高い印象でしょうか。四季を詠んだ歌も多い短歌。その中でも冬を詠んだ短歌をセレクトして紹介したいと思います。これらの短歌からどのような冬を感じますか?

目次

  1. 短歌とは
  2. 後世に残る有名な歌
  3. 冬をうたった短歌
  4. 百人一首の冬の歌
  5. 古今和歌集の冬の短歌
  6. 短歌をぐっと身近にしたサラダ記念日
  7. 現代の若者たちの短歌
  8. 歌人の冬の短歌
  9. 冬の短歌を詠む心情
  10. まとめ

短歌とは

日本に古くから伝わる詩の形式に和歌がありますが、和歌には短歌、長歌、旋頭歌などの種類があったのですが、平安時代以降、短歌のみとなりました。

短歌の決まり

短歌は大変自由な抒情詩で、唯一のルールは、五七五七七の五句三十一音の定型だということだけです。内容は作者の自由になっています。恋、日常生活、社会問題などどんなテーマでもOKです。

季語はいらない

俳句・川柳は短歌より短い五七五の十七音です。俳句には季語が必用です。川柳と短歌には季語は必要ありませんが、川柳が風刺的意味合いが多いのに対し、短歌は抒情詩であり、作者の心情を表すものとなっています。

後世に残る有名な歌

短歌は天皇や武士、高貴な人などが、死ぬ間際に詠んだものも多くあります。この死への旅路の前に詠んだ歌を「辞世の句」といいます。

・身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂       吉田松陰

・おもしろき こともなく世に おもしろく すみなすものは 心なりけり   高杉晋作

志半ばで倒れた人の人生の終わりに詠んだ歌は、後に残す人たちのために詠まれた惜別の歌であると同時に、自分自身の人生の幕引きのための歌であったと思われます。

冬をうたった短歌

今も昔も短歌の中には冬を詠んだものが数多くあります。どんな冬が詠まれているか見てみましょう。

百人一首の冬の歌

短歌といって最初に思い浮かぶのはやはり百人一首ではないでしょうか。百人一首に詠まれている冬の歌は五つあります(六つという説もあります)。

・田子の浦に うちいでてみれば 白妙の富士の高嶺に 雪は降りつつ  山部赤人(男)

田子の浦の海岸に出てみると、雪をかぶったまっ白な富士の山が見事に見えるが、その高い峰には、今もしきりに雪がふり続けている。(あぁ、なんと素晴らしい景色なのだろう)

・かささぎの 渡せる橋に おく霜の白きをみれば 夜ぞふけにける 中納言家持(男)

かささぎが渡したという天上の橋のように見える宮中の階段であるが、その上に降りた真っ白い霜を見ると、夜も随分と更けたのだなあ。

・山里は 冬ぞさびしさ まさりける人目も草も かれぬと思へば 源宗行朝臣(男)

山里はいつの季節でも寂しいが、冬はとりわけ寂しく感じられる。尋ねてくれる人も途絶え、慰めの草も枯れてしまうのだと思うと。

・心当てに 折らばや折らむ 初霜のおきまどはせる 白菊の花 凡河内躬恒(男)

無造作に折ろうとすれば、果たして折れるだろうか。一面に降りた初霜の白さに、いずれが霜か白菊の花か見分けもつかないほどなのに。

・朝ぼらけ 有明の月と見るまでに吉野の里に 降れる白雪 坂上是則(男)

夜が明ける頃あたりを見てみると、まるで有明の月が照らしているのかと思うほどに、吉野の里には白雪が降り積もっているではないか。

五つとも男性が詠んだ歌というのが興味深いですね。いずれの歌も冬の厳しくも美しい風景を詠んでいます。

百人一首

古今和歌集の冬の短歌

古今和歌集とは平安時代前期の最初の勅撰和歌集です。古今和歌集の「冬部」歌は全部で29首あります。その中で「雪」が詠まれた歌は、22首もあります。冬は花が咲きませんので、花の代わりに雪が詠まれたと思われます。

・雪ふれは 冬ごもりせる 草も木も 春に知られぬ 花そさきける (紀貫之)

雪を花(梅)に見立てています。「春に知られぬ花」というのが表現が素晴らしです。

・冬ながら 空より花の ちりくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ (清原深養父)

「花を運んできた雲、あなたは春なのでしょうか?」雪は降っていても春は近いと感じているのでしょうか。冬来たりなば春遠からじですね。

短歌をぐっと身近にしたサラダ記念日

1987年に俵万智さんが出した歌集が「サラダ記念日」です。それまでの短歌のイメージを打ち破った斬新な作品が収められています。その中の一句

・「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

からタイトルがとられています。この歌集が出たことで短歌が若い人のぐっと身近になりました。

サラダ記念日の冬の歌

その新しい短歌の形としてミリオンセラーとなったサラダ記念日の中にもいくつか冬の歌があります。

・「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

・たっぷりと君に抱かれているようなグリンのセーター着て冬になる

・母の住む国から降ってくる雪のような淋しさ東京にいる

・白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる

百人一首の冬の歌とは全く違った感じになっています。五句三十一音の定型をかろうじて保っていますが、五七五七七というリズムが崩れつつあります。

現代の若者たちの短歌

短歌を詠む文化は現在も続いており、学校の授業で短歌を作らされたり、またはツイッターなどのSNSで短歌を詠んでいる若者も多いようです。若い人たちの詠む冬の短歌はどんな感じでしょうか。

女子高生の冬の短歌

壊れた女子高生という名でいくつもの短歌をネットにアップしている女子高生がいます。
彼女の詠む短歌はどんな冬でしょうか。

・前頭葉ブルースクリーン 僕たちは冬の静けさに錯乱している

・でもそれが宿命だとでもというように3ページ目が折れた雪国

短歌というよりは、詩という感覚で書かれているような気もします。若い人独特の感性で冬をとらえています。

一般学生の冬の短歌

・クリスマス 一人になれば 悲しくて 雪が降りそな ただの一日 

・冬が来た 今年もやっぱり やって来た 冬は嫌いだ どっかに行けよ

・「あけましておめでとうご」を書き切らず道頓堀に沈むスマホは

詠み人はわかりませんが、どれも男性が詠んだように思われる短歌です。壊れた女子高生の歌に比べて、直接的表現で、心の内や、あった出来事をストレートに詠んでいます。

歌人の冬の短歌

明治以降の歌人や作家もいくつかの冬の歌を残しています。

・こころよき 寝覚なるかも冬の夜の あかつきの月玻璃窓(はりまど)に見ゆ  若山牧水

・寂しくて 布団の上ゆ仰ぎ見る 短日の陽は傾きにけり           島木赤彦

・水盤に わが頬をうつす若水を また新しき涙かと見る           与謝野晶子

冬はやはりいつの時代も、寂しく静かな感じのする季節なのですね。歌からしんと静まり返った冬の情景が浮かびます。

冬の短歌を詠む心情

いろいろな時代や作者が詠んだ冬の短歌を見てきましたが、特徴としては、やはりどの時代も冬は寂しいもの、静かで済んだ空気のものというとらえ方が多いようです。加えて、寒いからこそ人の温もりが嬉しいという表現や、春が待ち遠しいという感情が出てくるようです。

まとめ

俳句や川柳に比べて、短歌はなかなか発表する場も少ないようですが、短歌はどんな事象を詠んでもよい、とても自由な歌ですので、情景なり、心情なりをあなたの言葉で31音に託してみてはいかがでしょうか。冬も終盤、春はそこまで来ていますが、春を前に冬の歌を一つ作ってみるのも楽しいと思います。

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