古事記と日本書紀の成立はいつ?なぜ同じ物語が2つあるの?

日本の神話は大体「古事記」と「日本書紀」にまとまっていて、神社の祭神のほとんどが、古事記・日本書紀の両方またはどちらかに登場します。でも、そもそもなぜ、同じ時期に似た書物を2つも編纂する必要があったのでしょうか。

目次

  1. 「古事記」と「日本書紀」
  2. 古事記と日本書紀の成立
  3. 古事記と日本書紀の共通点と違い
  4. 古事記と日本書紀に登場する天皇
  5. 古事記と日本書紀のまとめ

「古事記」と「日本書紀」

神社の祭神の多くは古事記や日本書紀に由来し、古事記も日本書紀も天皇家の祖先の人や神を中心に据えた物語です。そして、その内容に描かれている時代やあらすじも、成立した時期もほぼ同じなのです。
しかも、神名や人名に矛盾があったり、ストーリーの細部や設定に微妙なズレがあったりして、「綻びが出るのになぜわざわざ2つ書いたんだろう?」と思ってしまいますよね。

しかし、古事記と日本書紀には語り口に違いがあり、そこから見えてくる編纂の目的にも差があります。そうした違いに着目して、古事記と日本書紀について解説したいと思います。

古事記と日本書紀の成立

古事記も日本書紀も着手時期は飛鳥時代、成立時期は奈良時代です。

時代背景

乙巳の変

飛鳥時代は争いごとの多い時代でした。飛鳥時代の初期、推古天皇の頃、つまり聖徳太子が活躍していた頃、大王(おおきみ)は豪族達の協力を得てやっと政(まつりごと)を行える存在で、絶対的な力はありませんでした。
それが変わるのが、乙巳の変に始まる大化の改新です。乙巳の変では、それまで実権を握っていた蘇我馬子が滅ぼされ、それに伴い蘇我氏の屋敷に保管されていた多くの書物が焼けました。
この出来事でそれまで伝わっていた神話や歴史の記録が失われてしまったのです。

壬申の乱

飛鳥時代のもう1つの争いごとといえば、壬申の乱。天皇主権の政治をスタートした天智天皇が崩御してすぐ、弟の大海人皇子と子の大友皇子が皇位を巡って争います。
内乱を制して即位した天武天皇(大海人皇子)は、山積みの国家事業をスムーズに進めるために、自身の正統性を周囲に納得させる必要があったのです。

命じた天皇

失われた神話や歴史に代わるものをつくるため、また、正統性を印象付けるために、古事記と日本書紀の編纂を命じたのは、天武天皇でした。ただ、その命令には妻の持統天皇の意向が反映されていると考える歴史学者も多いです。
この2人は、兄であり父である天智天皇がやり残した国家事業を次々と実現した優秀な為政者でした。

成立時期

記録上の成立時期は、古事記は元明天皇の時代の712年、日本書紀は元正天皇の時代の720年です。元明天皇は天武天皇から見て息子の妃、元正天皇は孫(元明天皇の娘)に当たります。
壬申の乱は672年なので、半世紀弱かかった大掛かりな作業だったことがわかります。

古事記と日本書紀の共通点と違い

記紀とまとめていわれることの多い古事記と日本書紀は、共通点もありますが、違いもあります。

共通点

既に紹介したように、古事記と日本書紀には、失われた記録を復活させること、天皇の正統性を主張することという2つの目的と、編纂から成立までの時期が共通しています。
また、カバーしている年代も神代から飛鳥時代までとほぼ一致しており、人民のことではなく天皇家と藤原氏のストーリーというのも一緒です。

違い

古事記と日本書紀の違いは、物語の細部だけではありません。

文体

歴史書には紀伝体と編年体という2つの形式があります。前者は「誰の時代に何があった」という書き方で、後者は「何年に何があった」という書き方です。古事記は紀伝体、日本書紀は編年体です。
また、当時は仮名文字の発明がまだだったため漢字表記なのは共通ですが、古事記は万葉仮名のように漢字を無理やり和文で読ませるような文体で、日本書紀は漢文で書かれています。

読み手

この文体から、古事記は国内に向けて書かれ、日本書紀は海外に向けて書かれたことがわかります。
といっても、今とは時代が違いますから、古事記は字が読める豪族クラスの人々に天皇の正統性を誇示するため、日本書紀は東アジア文化圏の国々のトップに「うちはこういう事情で天皇がトップだからよろしく」と示すためと考えてください。

編纂者

日本書紀は、天智天皇の子の川島皇子が最初に編纂を命じられ、多くの人々がその作業に加わり、最終的に天皇に奏上したのは天智天皇の子の舎人親王です。他に編纂に関わった人物として、藤原不比等の存在も指摘されています。
一方の古事記は、稗田阿礼(ひえだのあれ)が暗唱して太安万侶(おおのやすまろ)が編集したといわれていますが、どちらも謎の多い人物で詳しいことはわかっていません。

物語の時代

物語の始まりが、天地開闢(てんちかいびゃく)というのは古事記・日本書紀共通ですが、古事記は推古天皇の時代まで、日本書紀は持統天皇の時代までをカバーしています。約70年分の差があります。

古事記と日本書紀に登場する天皇

日本書紀は一応歴史書とはいっても、そのまま信じるわけにはいきません。それは、古代天皇(大王)の寿命を考えれば明らかで、第16代とされる仁徳天皇までの天皇たちは200~300歳くらいまで生きたことになってしまいます。
そして、日本書紀には朝鮮半島に出兵して戦勝したということが度々書かれていますが、中国や朝鮮半島の記録や発掘調査の結果とは矛盾しているのです。このように、当時の天皇家や、持統天皇の時代から力をつけつつあった藤原氏によって、都合よく潤色されているのが古事記と日本書紀なのです。
今のところ、歴史学上も第10代崇神天皇以降は実在したと考えられていますが、飛鳥時代以前の天皇の功績はほぼ謎です。

古事記と日本書紀のまとめ

いかがでしたか?
古事記と日本書紀について共通点や違いを紹介しました。今は専門書だけでなく挿絵入りの本や漫画の古事記や日本書紀も出ています。興味を持った方は、ぜひ本屋さんでチェックしてみてください。

「古事記・日本書紀」に関連する記事

この記事に関するキーワード

ランキング

シェアする

関連する記事

「古事記・日本書紀」についてさらに知りたい方へ

古事記の作者は結局、誰?稗田阿礼と太安万侶の役割は?のサムネイル画像

古事記の作者は結局、誰?稗田阿礼と太安万侶の役割は?

天照大御神だけじゃない~日本神話に登場する華麗なる女神たちのサムネイル画像

天照大御神だけじゃない~日本神話に登場する華麗なる女神たち

実は権威が高かった!江戸時代の天皇の様子とは?のサムネイル画像

実は権威が高かった!江戸時代の天皇の様子とは?

聖徳太子は別名だった?歴史の教科書も変わっていた!のサムネイル画像

聖徳太子は別名だった?歴史の教科書も変わっていた!

墓地・霊園の歴史について古代から現代までまとめました!のサムネイル画像

墓地・霊園の歴史について古代から現代までまとめました!

意外と知らない神社の教え「神道」ってなに?のサムネイル画像

意外と知らない神社の教え「神道」ってなに?

知らないと恥ずかしい!?【神道で学ぶ日本の文化】のサムネイル画像

知らないと恥ずかしい!?【神道で学ぶ日本の文化】

神武天皇のお墓はどこにある?アクセスや参拝できる時間をご紹介!のサムネイル画像

神武天皇のお墓はどこにある?アクセスや参拝できる時間をご紹介!

奈良時代の貴族・仏教文化「天平文化」をご紹介しますのサムネイル画像

奈良時代の貴族・仏教文化「天平文化」をご紹介します

古事記の作者は結局、誰?稗田阿礼と太安万侶の役割は?のサムネイル画像

古事記の作者は結局、誰?稗田阿礼と太安万侶の役割は?

人気のキーワードの記事一覧

キーワード記事一覧へのリンクです

ランキング

よく読まれている記事です

神社参拝の正しい作法・仕方とは?参拝に適した時間や服装も紹介!のサムネイル画像

神社参拝の正しい作法・仕方とは?参拝に適した時間や服装も紹介!

1
神社のお賽銭はいくらがいいの?起源や相場・正しい作法まで解説!のサムネイル画像

神社のお賽銭はいくらがいいの?起源や相場・正しい作法まで解説!

2
年賀状はいつまでに出せば元旦に届く?販売期間や投函期間も解説!のサムネイル画像

年賀状はいつまでに出せば元旦に届く?販売期間や投函期間も解説!

3
神社と寺の違いって?それぞれの定義や参拝方法・建物の違いを解説のサムネイル画像

神社と寺の違いって?それぞれの定義や参拝方法・建物の違いを解説

4
年賀状の正しい書き方を知っていますか?立場別に文例をご紹介!のサムネイル画像

年賀状の正しい書き方を知っていますか?立場別に文例をご紹介!

5

関連する記事

「古事記・日本書紀」についてさらに知りたい方へ

古事記の作者は結局、誰?稗田阿礼と太安万侶の役割は?のサムネイル画像

古事記の作者は結局、誰?稗田阿礼と太安万侶の役割は?

天照大御神だけじゃない~日本神話に登場する華麗なる女神たちのサムネイル画像

天照大御神だけじゃない~日本神話に登場する華麗なる女神たち

実は権威が高かった!江戸時代の天皇の様子とは?のサムネイル画像

実は権威が高かった!江戸時代の天皇の様子とは?

聖徳太子は別名だった?歴史の教科書も変わっていた!のサムネイル画像

聖徳太子は別名だった?歴史の教科書も変わっていた!

墓地・霊園の歴史について古代から現代までまとめました!のサムネイル画像

墓地・霊園の歴史について古代から現代までまとめました!

このページの先頭へ

終活ねっと 〜マガジン〜  Copyright© 株式会社 終活ねっと