ビジネスの挨拶状はなぜ出すのか?

会社の挨拶状には、実に様々なものがありますが、忘れてはならない挨拶状があります。
会社を設立したときは、登記をしなければなりません。
この商業・法人登記の制度とは、会社等に関する取引上重要な一定の事項について法務局に申請し、登記官が審査した上でコンピュータに記録し、その記録を一般の方に公開することによって、会社等の信用維持を図るとともに取引の相手方が安心して取引できるようにすることを目的とするものです。
では、一体何を登記するかといえば、いわゆる登記簿に記載されている項目で、この内容が変わった場合、変更登記をする必要がありますが、その内容を取引先等に事前に通知し、ご挨拶することが取引先への儀礼となっており、この挨拶を怠ると会社の信用を落としかねないことになります。
会社の挨拶状は登記事項から?
では、登記事項でビジネスの挨拶状が必要と考えられる項目をピックアップしててみます。
・会社設立
・役員の変更(重任、辞任及び就任した時、代表取締役の変更)
・商号(社名)変更
・事業目的の変更(例:新規事業を開始したとき場合)
・本店移転(本社移転)
・合併
・支店
※ご参考(上記以外の登記事項)
挨拶状をまず出さないが、登記が必要な事項は下記のとおりです。
・設立時の取締役会設置または設置しない旨
・取締役会・監査役会の設置および廃止
・代表取締役の住所変更
・解散(清算人の選定)、清算結了
・株式の譲渡制限
・公告方法(例:官報、電子公告)
・募集株式の発行
・組織の変更(株式会社⇔合同会社)
・資本金の変更
・会社の継続(例・解散の登記後,事業を継続する場合)
・確認会社の解散事由の廃止
ビジネスの挨拶状には何があるのか?
前記の登記関係と重複する内容もありますが、一般的に出すビジネスの挨拶状を整理しますと次のようになります。
・季節の挨拶(年賀状・暑中見舞い)
・会社の設立、開業のご挨拶、支店・営業所・新工場開設、子会社設立など
・住所移転(本社、支店、営業所など)
・代表取締役就任
この場合、新任者の挨拶を二つ折りの右に、前任者の挨拶を左に併記して挨拶状を出すのが一般的です。
・株主総会後の経営体制(取締役、監査役)
役付取締役(代表取締役社長、専務取締役、常務取締役など)や従業員兼務であれば役職も付し(例:常務取締役人事部長など)、名前の下に( )書で新任を明記します。また監査役(常勤の場合は常勤監査役)もいれ、一覧にして代表取締役社長の名前で挨拶状を差し出します。
さらに執行役員制度を採用しているときは、執行役員名を経営体制の挨拶の中に入れるケースもあります。
・組織の変更
会社での組織変更は、日常的にあるので、その都度会社として通知することは、まずありません。新規事業などで新しい組織を作ったときには、会社の方針を示すということから出すケースは多いようです。
・退職や転勤(担当者交代)
役員でなくとも一定の役職者が、退職や転勤で交代する際にも、会社名で出すこともあります。また、退職者が取引先等に個人名で挨拶状を出すこともあります。
・事業の終了(清算・廃業)
ビジネスにおける挨拶状の書式
ビジネスにおける挨拶状は、会社として通知する正式なものですので、形式を整えて作成します。
ビジネスの挨拶状の基本は、ハガキとハガキ大の厚紙(カード)印刷し、封筒に入れるかのどちらかです。
内容によって判断すべきですが、儀礼的なものはハガキに直接印刷して出すというのは避けたいものです。
はがき大1枚では収まらない場合、2つ折りのサイズ、最大3つ折りのサイズまでで印刷します。したがって、2つ折り以上のサイズで作成する場合は、縦書になります。
ビジネス挨拶状の書き方のルール
ビジネスの挨拶状は儀礼的な文書ですので、省略せず、事柄にっよっては相手方に十分ご理解いただけるよう理由等も添えて、丁寧な文章にします。
1.まず前文です
前文=頭語(拝啓)+時効の挨拶+安否を気遣う挨拶+感謝の言葉、この感謝の言葉も忘れずに!
2.次に本文ですが、ここではお知らせしたい事柄だけでなく、その理由や背景などをについても書き、できる限り詳しい内容をお知らせします。
3.最後は末文です。
末文=結びの言葉+結語(敬具)ですが、結びの言葉には、相手先に「今後ともよろしく」というような内容を丁寧な言葉で表現します。
ビジネスの挨拶状の代表的参考例文
1.事務所移転の例文
事務所移転のお知らせ
拝啓 ○〇の候 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は
格別なお引き立てに預かり有難く厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社は、下記の通り事務所移転の運びとなりました。
これを機に、社員一同さらに社業に専心してまいる所存でございます。
つきましては、今後とも一層のご支援ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら、ご挨拶かたがたお願い申し上げます。
敬具
平成29年3月1日
株式会社○〇〇〇
代表取締役 ○〇〇〇
記
1.移転日 平成29年431日(月)
2.新住所 ○〇市○〇区○〇 ○〇ビル1階
3.電話番号________ FAX番号________
案内図(挿入)
(アクセス方法も記載)
以上
2.代表取締役就任・退任の挨拶状の例文
《(注)横書きの記載になっていますが、縦書きの文例です》
勤啓 ○〇の候 貴社ますますご隆盛のことと大慶に存じます。
平素は格別のご高配を賜り有難く厚く御礼申し上げます。
さて 私儀
このたび代位表取締役社長を辞任し、取締役会長に就任いたすこと
となりました。
社長在任中は、公私ともに格別のご懇情を賜り誠に有難く、厚く御礼
申し上げます。
なお、後任社長には、○〇〇〇が就任しましたので、今後とも私同様
一層のご厚情を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら、ご挨拶かたがたお願い申し上げます。
敬具
平成29年6月30日
株式会社○〇〇〇
取締役会長 ○〇〇〇
(折れ線)
拝啓 ○〇の候 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のご厚情を賜り、有難く厚く御礼申し上げます。
さて 私儀
このたび〇○○〇の会長就任に伴い、代表取締役社長に就任いたし
ました。
つきましては、社業発展のため、誠に微力ながら一意専心努力する
所存でございますので、前社長同様、ご指導ご鞭撻賜りますよう
お願い申し上げます。
早速拝眉の上ご挨拶するところではございますが、まずは略儀ながら
書中をもって新任のご挨拶を申し上げます。
敬具
平成29年6月30日
株式会社○〇〇〇
代表取締役社長 ○〇〇〇
3.役員連名(新経営体制)の就任挨拶状
謹啓
貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
平素は、格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
さて、◯月◯日の株主総会ならびに取締役会におきまして、下記の
とおり役員が選任され、それぞれ就任いたしました。
つきましては、何とぞご高承のうえ、今後ともいっそうのご指導ご
鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもってごあいさつ申し上げます。
敬具
◯◯◯◯年◯◯月◯◯日
株式会社□□□□
代表取締役社長□□□□□
記
代表取締役社長 ◯◯◯◯
取締役副社長 ◯◯◯◯
専務取締役 ◯◯◯◯
常務取締役 ◯◯◯◯(新任)
取締役 ◯◯◯◯
取締役 ◯◯◯◯(新任)
監査役 ◯◯◯◯
ビジネス虚礼
虚礼廃止が叫ばれて久しいですが、コストもかかり、手間もかかるビジネスにおける季節の挨拶状、とりわけ年賀状はいっこうに減りません。では、本当に虚礼なのでしょうか?合理性を優先するビジネスにおいて、虚礼ならば衰退していったはずです。そこには、取引先等との良好な関係を築くコミュニケーションツールとなっているのではないでしょうか。
一方、会社の情報もお知らせするビジネスの挨拶状ですが、情報公開が求められている現在、できる限りお知らせし、ご挨拶することがビジネスの理にもかなった方法ではないでしょうか。
今後ともビジネスにおける挨拶状は、儀礼的ではありますが、必要不可欠なものとして活用されることでしょう。