本当に108もあるの?「煩悩」の数の不思議と意味を解説

煩悩とは仏教で悟りを妨げる悪い心とされています。その個数が108であることはご存じの方もあるかと思います。しかし、108ある煩悩の内容を知っている方は少ないのではないでしょうか。そこで今回は気になる煩悩の数について調べてみました。

目次

  1. そもそも煩悩ってなんだろう
  2. なぜ108もあるの?
  3. 煩悩と除夜の鐘
  4. 煩悩と数珠
  5. まとめ

そもそも煩悩ってなんだろう

困った人々

ふだんの生活の中で「あいつは煩悩の多いやつだ。」「煩悩がありすぎて集中できない。」などという言葉を聞くことがあります。私たちは「欲」とか「余計な考え」といった意味合いでこの言葉を使っていますが、本来仏教で使われている意味とはどのようなものなのでしょうか。

煩悩のもともとの意味

仏教では、煩悩とは「人間の心身を乱し悩ませ、悟りに至る道を妨げる心の働き」と説明されています(門賀未央子,岩崎真美子『史上最強 図解 仏教入門』ナツメ社,2010年 pp,230)。もとの意味は心の働きですから、私たちがふだん使っている言葉よりも広い事柄を指しています。おごりたかぶる心や執着する心といったネガティブな感情も煩悩に含まれるようです。

煩悩はどこから生まれる?

煩悩はなかなかなくなりません。私たちが生きるうえで心が必要なように、心の働きである煩悩も私たちが生きている限りついて回ります。では、煩悩はどこからくるのでしょうか。仏教では無明(むみょう)という状態、それと三毒(さんどく)と呼ばれる心から煩悩が発生するとされています。

無明(むみょう)

無明とは、明かりが無いという字の通り、人間にとって暗い状態を指します。すなわち、分別がつかず何もわからなくなっている状態です。なぜ何もわからなくなるかといえば、欲やネガティブな感情に埋もれすぎているからです。
なぜ分別がつかないかは智慧(物事の理を見抜ける心)がついていないためであり、智慧を知ることによって無明を打ち破ることができるとされています。無明の状態はあらゆる苦の源であり、煩悩も無明から発生することがあります。

三毒(さんどく)

三毒とは、「貪欲(とんよく)」、「瞋恚(しんに)」、「愚痴(ぐち)」の三つの心をまとめて言った呼び方です。「貪欲」とは欲張って歯止めが無い心、「瞋恚」とは激しい怒り、「愚痴」とは真理を知らず愚かであることを指します。これら三つの心が人間を蝕む毒とされています。
これら三毒を根っことして、私たちを苦しめる悪い心、すなわち煩悩が生まれてくると言われています。

なぜ108もあるの?

煩悩は無明や三毒といった、数としては少ない原因から生まれるにもかかわらず108もあります。ここでは、その理由と内容を説明した説を紹介します。以下の説の名前は便宜上つけたものであり、公式の呼び名ではありません。

六根(ろっこん) 説

この説は人間の五感と心の働きが煩悩を生み出すもとになるという趣旨の説です。

六根とは?

 六根とは、人間の五感と心を一緒にした言葉です。すなわち眼(げん)・耳(に)・鼻(び)・舌(ぜつ)・身(しん)・意(い)の六つです。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感および意識と言い換えることができます。
 

六根が六塵(ろくじん)を生む

続けて六塵という考えがでてきます。六塵とは六根が働くことによって産み出される情報です。すなわち色(しき)・声(しょう)・香(こう)・味(み)・触(そく)・法(ほう)の六つが六塵になります。それぞれ映像・音声・におい・味・触感を指し、最後の法とは心の動きという意味です。

好(こう)・悪(あく)・平(へい)

六塵から生まれる情報は三種類の感情に分けられます。それが好・悪・平の感情で、それぞれ「良い」・「悪い」・「どちらでもない」という意味になります。

染(せん)・浄(じょう)

好・悪・平で分けられた感情はさらに二種類に分類されます。染とは汚い感情、浄とは清らかな感情という意味です。

過去・現在・未来

染・浄の区分がついた感情はさらに過去・現在・未来の三種類に分類されます。

分類された感情を合わせると108になる

ここで分類された感情の数を見てみましょう。分類されたパターンの数だけ感情があり、その感情はそのまま煩悩の数であると言えます。
感情は六塵(6)×好・悪・平(3)×染・浄(2)×過去・現在・未来(3)パターンだけ存在することになります。つまり、6×3×2×3=108となるわけです。これが煩悩が108ある理由です。

十纏・九十八結 説

この説は人間を苦しめる悪い心が煩悩のもとになっているという説です。上の六根説よりも精神的な部分に原因を求めていると思います。

十纏(じってん)とは

「纏」という漢字は「からみつく、縛る」という意味を持ちます。纏とは人間を苦しみに縛りつける煩悩のまた別の呼び名と思ってください。十纏とは「無慚(むざん)・無愧(むき)・嫉(しつ)・慳(けん)・悔(け)・眠(みん)・掉挙(じょうこ)・惛沈(こんじん)・忿(ふん)・覆(ふく)」の十種類の悪い心を指します。

十纏のそれぞれの意味

「無慚」とは間違いをおかした自分自身に全く恥じないこと、「無愧」とは間違いをおかしても他人に対して全く恥じないこと、「嫉」とは妬む心のことで、「慳」とは物惜しみする心、「悔」とはくよくよ後悔することです。「眠」とは体も心も眠らせてしまうこと、「掉挙」とはやたら騒いで落ち着きが無い状態で、「惛沈」は逆に気分を滅入らせてふさぎこむことです。最後の二つ、「忿」とは思い通りにならないものに怒りを抱くこと、「覆」とは過ちを隠して悔い改めようとしないことです。

九十八結(くじゅうはっけつ)とは

「結」という漢字はそのまま「結びつける」という意味です。これも人間を縛る煩悩のまた別の呼び方です。この結は細かく分けると九十八あるとされています。

纏と結をあわせると

10+98で108になります。これも煩悩が108ある理由になります。

四苦八苦 説

もともとの意味

四苦八苦ということわざも仏教から来ています。もともとの意味は人間につきものの八種類の苦しみを指しており、生(しょう)・老・病・死の根本的な四つの苦しみと「愛別離苦(あいべつりく、愛する存在と別れる苦しみ)」、「怨憎会苦(おんぞうえく、嫌いなものと出会う苦しみ)」、「求不得苦(ぐふとくく、求めるものが得られない苦しみ)」「五蘊盛苦(ごうんじょうく、五蘊(心身の苦痛)が盛んに起こる苦しみ)」の四つの人生の苦しみからなっています。

四苦八苦で108になる

この四苦八苦を読みかえて4×9+8×9という計算式にすると、答えは108になります。四苦八苦は煩悩の苦しみですから、煩悩が108ある理由というわけです。もっともこれは言葉遊びのようなものかもしれません。

十二月二十四節気七十二候 説

一年間の月数である12と、一年間の季節を24に分割した二十四節季、そして二十四節季を初候・次候・末候の三つに分けた七十二候を足すと、12+24+72で108になります。この説は人間の心は関係なく、数字が同じになるのでただ当てはめただけかもしれません。

煩悩と除夜の鐘

人々

108の煩悩と聞いて連想されるのが除夜の鐘ではないでしょうか。大みそかにつかれる108回の鐘の音が煩悩を表していることは有名です。

除夜の鐘をつく回数

除夜の鐘を一回つくごとに煩悩が一つ一つ消えていくと言われています。
今では年の瀬にしか108回つかれなくなりましたが、もともとは毎日朝夕108回ついていました。

煩悩と数珠

葬儀

真言宗用本式数珠 主玉の数は108(仏壇屋 滝田商店より)

数珠の玉も108個あることをご存じの方も多いかと思います。もちろんこれは煩悩の数を指したものです。また、一つ一つの玉がそれぞれ一尊の仏を指しているとも言われています。

数珠のなりたち

中国で東晋時代(317-420)に訳されたとみられる『木槵子経(もくげんじきょう)』の中の言い伝えでは、インドにある波瑠璃(はるり)国の王が釈迦に心の平安を得る方法を尋ねたことがあったそうです。その時に釈迦は108個のムクロジの実をつないで、仏宝僧を称えるごとに一つ一つ玉を繰る行いを百万回繰り返すことを勧めたと言われています。このエピソードが数珠のはじまりとされています。
ちなみに、数珠そのものは日本には鎌倉時代に伝わってきたようです。

玉の数

玉の数は108個を基本としていますが、決まりはありません。略式の数珠では玉の数が54個、36個など様々な数珠があります。

玉の名称

数珠は玉の種類によって親玉(おやだま、阿弥陀如来をあらわす)・主玉(おもだま、百八の仏あるいは煩悩の数)・四天玉(してんだま、四天王または四菩薩をあらわす)・弟子玉(でしだま、釈迦の十大弟子または十菩薩をあらわす)・露玉(つゆだま、弟子玉を留めるためのもの)・浄明玉(じょうみょうだま、菩薩をあらわす)といくつかの名称に分かれています。ちなみに紐は中通し紐といい観音菩薩をあらわすと言われ、表房・裏房という飾り房は特に意味するものはありません。

数珠のひもが切れたら

長く使う間に紐が切れてしまうことがありますが、これは吉兆ととらえましょう。数珠の玉は仏を象徴してもいますが、煩悩を象徴してもいます。そのため、数珠のひもが切れることは煩悩との縁が切れたとも読めるのです。
使い物にならなくなった数珠はお寺か買ったお店に相談して、引き取ってもらえるようなら引き取ってもらいましょう。

まとめ

人々

108つの煩悩をめぐる解説、いかがだったでしょうか。普段私たちは煩悩を意識する機会はありませんが、ふとした時にでも自身の心に横たわる煩悩に気づくかもしれません。その時にでも今回ご紹介した煩悩の原因を思い出していただくと、煩悩を理解し対処する手助けになるかもしれません。
正体を知って、煩悩とうまくつきあっていきたいものですね。

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