能面の種類と、その秘められた意味を探る!

能面は能楽によって使われる面ですが、その歴史は能楽の発展と共に多くの面師により打たれ、その種類の基本は60種といわれています。また同じ名前の面でも打つ面師によりの能面の表情や意味も微妙に違っています。今回はそんな能面の種類や意味についてご紹介していきます!

目次

  1. 能面の歴史
  2. 能面の意味
  3. まず「五番立」の「神」で使われる能面!
  4. 2番目「男」で使われる能面!
  5. 3番目の「女」で使われる能面
  6. 4番目の「狂」で使われる能面
  7. 5番目「鬼」で使われる能面
  8. 能面の意味、まとめ

能面の歴史

能面の基本形は約60種と言われ、長い年月を経てそこから派生して少しづつ変わった面として約250種類まで広がったと言われています。
能楽が発生した室町時代から安土桃山時代に打たれた面を本面と呼び、その後現在にいたるまで、多くの面師により打たれ続けられています。
能面の「面」は「おもて」と呼ばれ、主に檜(ヒノキ)を使って彫られ、顔料(がんりょう)で彩色して仕上げられています。
瞬間的な表情を写したものや、中間表情とか無限表情を表わして彫られており、一つの面で、光と影や見る角度から、深く様々な表情を見せることができ、能の演出を大きく支えています。

能面の意味

能は、主人公が演じる役柄によって「神(しん)、男(なん)、女(にょ)、狂(きょう)、鬼(き)」の5つのカテゴリーに分けられ、この順番どおりに演じられることを「五番立」(ごばんだて)といい、江戸時代から行われていた伝統あるプログラムでした。
また能面もそれに従って使われています。
能で使われる能面は同じ名前の面でも、面師によりその表情は微妙に違っており、また、能の五流、観世、宝生、金春、金剛、喜多流各流派により、同じ能の演目で使われる面も異なる場合もあります

まず「五番立」の「神」で使われる能面!

神を主人公にした能で、登場した神が平和、幸福、長寿、五穀豊穣を約束するという「おめでたい」演目で、多くは能の前半は神の化身として老翁などが現れ、後半は神体となって現れます。「高砂」「老松」「養老」などの演目があります。

小牛尉(こうしじょう)

この面は、多くの人にも馴染みがある結婚式などでよく謡われる『高砂(たかさご)』という曲の前半で使われるもので、主人公の老人が着ける小牛尉という面です。
面打師、小牛に因んで付けれた名前で、尉面の中で最も品格が高く、引き締まった面立ちで鼻下には髭を彫り入れるだけで、植毛せず、歯も上だけを見せています。

邯鄲男(かんたんおとこ)

「高砂」の後半の主人公が、明神となって現れる時に着ける面です。
旅の僧侶が、月夜に船を出し住吉(すみのえ)の浜辺にやってくると、西の波間から住吉(すみのえ)明神(みょうじん)が現れます。
明神は長寿を誇る松のめでたさを称え、夫婦の長寿と平和な世を祝福する舞を舞います。

能「邯鄲」の為に作られた専用面で、気品のある憂いを含んだ若い男の面のですが、宮人や神などの面としても用いられ、この「高砂」でも使われています。

2番目「男」で使われる能面!

男性が主人公となる演目で、シテは武将の亡霊など死者が多く「修羅物」と呼ばれます。
平家物語から題材を得ている亡霊武者の能が多く代表的演目となっています。
死後も修羅道で苦しむ武将たちが現世に現れ、僧侶らに救いを求めるという筋書きです。
「敦盛」「清経」「屋島(八島)」「巴」などがこの分類の演目です。

「敦盛」で使われる能面の意味

能の敦盛の後半に使われる面「敦盛」です。その後半のストーリーは、
”平家の敦盛の霊が、今は出家している自分を討った熊谷直実に出逢い、最期を迎える前夜の陣内での酒宴のさまを想起した舞を見せます。
そして一の谷で舟に乗ろうと波打際まで進んだところで、直実に呼び止められて一騎打ちとなり、討たれた戦いの場面を見せます。
今では出家した直実に敵ではなく法の友であると告げ、回向を頼んで去っていきます”

この面は、若くして討死した敦盛の、若さと憂いを表わしています。

「蝉丸」で使われる能面の意味

能「蝉丸」で使われる面「蝉丸」は盲目を表わしています。そのあらすじは、
”天皇の子という高貴な身分に生まれながら、盲目の為、華やかな暮らしを享受できず、逢坂山に捨てられた蝉丸。
また姉の逆髪(さかがみ)は、皇女に生まれながら、逆さまに生い立つ髪を持ち、狂人となって辺地をさ迷う身となり、奇しくも逢坂山で弟の蝉丸と巡り会います。
悲運の二人が、しみじみとお互いの身の上を語り合い、涙ながらに別れ行くというストーリーです”

活発で躍動的な能ではありませんが、人物や場面設定、展開などよく考えられており、非常に深いテーマの静かな秀作です”

3番目の「女」で使われる能面

女性が主人公の能で、五番立の中心的な能となっており、主人公の多くは死者になっていて、テーマは恋愛や煩悩、その苦悩が中心で、物語の多くは女性の亡霊の恋する想いが、成仏出来ずにこの世に漂っていて、僧侶などに回向を頼むという設定のお話が多いです。
「井筒」「松風」「定家」「羽衣」などの演目がこの分野です。

「井筒」で使われる面「若女」

能「井筒」で使われる「若女」は、気品のある若い美女に用いられる面です。

「井筒」のあらすじ
”諸国を旅する僧が、大和の国の在原(ありわら)寺に立ち寄りました。
里の女が現れ、僧の問いに在原業平と紀有常(きのありつね)の娘の恋物語を語り、女は自分がその有常の娘であると告げて、古塚の蔭に姿を消します。
夜も更け、僧が仮寝をしていると、夢の中に井筒の女の霊が現れ、業平の形見の冠(かんむり)、直衣(のうし)を身に付け現れます。
業平を恋い慕いながら舞い、さらには、井戸の水に自らの姿を映し、そこに業平の面影を見るのでした。
やがて夜が明け、井筒の女は姿を消し、僧も夢から覚めます”

業平を模して男装をした妻が付ける面「若女」の美しさと、男装の凛々しさがよくマッチした、この能の作者、世阿弥も最高級の作と自賛する、夢幻能の傑作です。

多くの能で使われる「小面(こおもて)」

能面といえば誰もが思い起す、代表的な女面ですね!
「小」は可愛らしい、可憐で、若くて美しいという意味で、もっとも若い女の面です。口の形が魅力的ですね!
小面を使って演じられる曲も、羽衣、 藤、 三輪、 胡蝶、 葛城、 東北、 巴、 月宮殿、 鶴亀、 山姥、 松風、 班女、 杜若など多数あります。

4番目の「狂」で使われる能面

ここでの能の「狂い」は所謂物狂いを主人公とする能で、「狂女物」「狂い物」とも呼ばれます。ここでいう「狂い」は、病的なものはなく、何かを思いつめて心乱れた様子を表わしています。
「隅田川」「百万」「鉄輪」「道成寺」などが有名です。

「隅田川」で使われる面「深井」

隅田川のあらすじ
”我が子を人買いにさらわれ、狂女となった母が子供を探して隅田川まできて舟守から、子供が既に死んでいることを告げられます。
塚に詣でた夜に子供の亡霊が現れ、母は抱きしめようとしますが、子の幻は腕をすり抜け、母の悲しみは一層増すばかりです。
やがて夜が明け、子供の亡霊の姿は消え、母はただ草ぼうぼうの塚の前で涙にむせぶばかりでした”

この「深井」の面は、子供に生きて会えなかった母の底知れぬ悲しみを表わしていて、この、あまりにも悲しい物語は、人々の心を捉え続け、その後歌舞伎や浄瑠璃にも取り入れられました。

「道成寺」で使われる「般若(はんにゃ)」

道成寺のあらすじ
”紀伊の国、道成寺では再興した釣り鐘の供養が行われることになりました。一人の白拍子の女が供養の舞を舞わせてほしいと寺男に頼み込み、供養の場に入り込みます。
女は舞いながら鐘に近づき、鐘を落としてその中に入ってしまいました。
それを聞いた住職は、鐘にまつわる恐ろしい物語を語り始めます。
それは昔、庄屋の娘が、好きになった山伏に裏切られたと思い込み、大蛇となって、道成寺の鐘に隠れた山伏を、恨みの炎で鐘もろとも焼き殺してしまったというものでした。
僧達が祈祷し鐘を引き上げると、中からは蛇体に変身した女が現れます。
僧達は法力を尽くして祈った末、毒蛇は自らの炎でわが身を焼き、日高川の底深く姿を消していくのでした”

大蛇に変身した女が着ける「般若」の面。
女の嫉妬、怨念、悲しみ、嘆き、怒り、これらをひとつの面の中に集約した面で、2本の角を持ち、眉間をしかめて、頬を硬直した女の究極の怒り狂いを表現した相貌です。

5番目「鬼」で使われる能面

鬼神を表わす「大飛出(おおとびで)」

「大飛出」は眼が大きく飛び出していることからその名が付いています。
眼を見開き、口を大きく一杯に開いた、敏捷な鬼神の面で、昔は飛天と書かれ、天翔ける神霊を表し、荒ぶる神威をもって疾風する、天上界の鬼神にふさわしい相貌です。
能の演目では「嵐山」に使われます。

龍神を表わす「黒髭(ころひげ)」

これは水中に棲んで雨水をつかさどるという龍神の面で、昔から信仰の対象でした。
しゃくれて突き出した下顎は力強さが溢れ、目や歯に施された金色は超人的な鬼神の霊力を示して、表情全体からダイナミックに動き回る鬼神が感じられます。
能の演目では、「竹生島」、「 岩船」などに使われます。 

能面の意味、まとめ

いかがでしたか? 能面には色々の種類がありますね!どの能面を採っても、能の演目を引きたてる重要な役割を担っており、その芸術性も高いですね! そんな能面を今後は少し違った切り口で見ていってください!

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