能にはどんな物語があるの?有名な演目をご紹介します

能楽堂に行かれて能をご覧になられた方、テレビ放送で能をご覧になられた方もたくさんいらっしゃるでしょう。舞台の上を役者がしずしずとすり足で歩き、能独特の台詞で物語が演じられていきます。ここでは能の演目の分類についてと、有名な能の演目をご紹介したいと思います。

目次

  1. 能の演目にはどんな物語があるのでしょう
  2. 能の演目の数は?
  3. 能の演目の分類、五番立能
  4. 平家物語をもとに書かれた能の演目
  5. 能の演目について、まとめ

能の演目にはどんな物語があるのでしょう

能の演目にはどんな物語があるのでしょう?古典でよく知られる源氏物語の中の「葵上」、平家物語の登場人物「敦盛」「清経」なども能の演目の題材となりました。有名な「道成寺」などは、一度は耳にされたことがあるかもしれませんね。また新しく書かれた能の演目はほとんどなく、室町時代から受け継がれてきた演目が、今も伝統を守り演じられています。

特別な能「翁」

能の演目の中でも「翁」は特別です。「能にして能にあらず」といわれるほど「翁」は神聖視されています。能の原点とも言える儀式性、神事性の高い演目です。神の御加護を讃え、国家の平和と繁栄を祈ってこの能を舞うのです。平安時代には「翁」はすでに存在しており、最も古い能とされています。

能の演目の数は?

現在、演じられている能の演目は約250番あり、そのほとんどが室町時代末期までに出来たものです。現在でもその基本を変えることなく、伝統を大切に受け継ぎ演じられています。

明治以降に新たに書かれた能の台本(謡本)を新作能と言います。免疫学者の故多田富雄氏が、生前から能を通じて深い交流のあった故白洲正子氏の供養のために書いた能「花供養」も新作能になります。白洲正子氏は能にも造詣が深く、ご自身も能の舞台に立たれました。

能の演目は5つに分類されます。まずは能の分類について見てみましょう。以下から能の演目の分類をご説明していきます。

能の演目の分類、五番立能

能は一日に五曲を上演することが正式とされています。上演順に分類したものが五番立能(ごばんだてのう)です。能に登場する主役となる人物(シテ)の役柄や、物語の趣向(曲趣)によって分けられています。ただ、五番すべてを演じると大変な時間がかかるため、現在では一日に五番の能を演じることはほとんどありません。現在演じられている能の演目(現行演目)は、ほぼこの分類に分けることができます。順に、神、男、女、物狂い、鬼と分けられています。

神を讃える能、初番目物

様々な神が主人公(シテ)として登場します。神の恩恵を祝福する縁起の良い内容の演目です。能の演目「翁」に次いで上演されるべき演目です。「翁」の脇に置かれる曲という意味で脇能(わきのう)とも呼ばれます。「高砂」「老松」「賀茂」などが有名です。

祝言の能「高砂」

「高砂」は結婚式の場で謡われる祝言の謡としてよく知られていますね。高砂は兵庫県の地名(高砂市)で、古くは相生(あいおい)と呼ばれました。播州高砂の浦の老松は妻、摂州の国住の江の老松は夫であり、遠く離れていても愛情を交わし、共に白髪になるまで変わらぬ夫婦の愛と長寿のめでたさを祝福します。世阿弥の代表作でもあり、脇能らしい気品と清浄感に満ちています。

"四海波静かにて、国も治まる時つ風、枝を鳴らさぬ御代(みよ)なれや、あひに相生の松こそめでたかりけれ。”
高砂の台詞より

己の業に懊悩する武士を描く、二番目物

戦に身を捧げ、修羅道に落ちても過酷な運命を背負う武士をシテとします。「敦盛」「清経」「敦盛」「頼政」など源平合戦にゆかりのある登場人物の霊が現れ、自らの最期を再現したり、死してなお苦しむ姿を演じるものが多く、これらも世阿弥の残した名作です。

恋慕の修羅能「清経」

「清経」では、戦という大義名分の為に命を懸ける夫と、生きてほしいと命を願う妻、二人の気持ちのすれ違いが描かれています。男性の視線から見た「清経」、女性の視線から見た「清経」、能の鑑賞の感想に正誤はありません。

能「清経」の一場面。
清経は柳ヶ浦の沖で入水して最期を迎え、妻の元に、清経の形見の髪が届けられます。
男女の思いのすれ違いが悲しい能の演目です。

人気の演目が多い三番目物

三番目物は優美な女性の霊がシテとなり、典雅で美しい曲趣の演目が多いジャンルです。鬘能(かつらのう、かずらのう)とも呼ばれます。優雅な歌舞を存分に盛り込み、能ならではの「幽玄の美」が最もよく感じられる演目が揃っているので、大変人気があります。初めて能をご覧になる方にもお勧めかもしれませんね。

二通りの曲趣があり、主人公(シテ)が生きている人で、主人公と同時進行で物語が展開する「現在能」と、主人公がこの世の人ではなく(すでに亡くなった女性、花木の精、天女)が、旅人や僧(ワキ)などの夢の中に現れて物語を語り、優雅な舞を見せる「夢幻能」があります。

天女が優美な舞を見せる「羽衣」

「羽衣」は、美しい天女が三保の松原から天界へと帰っていく物語です。軽やかに可憐舞う天女の姿、風光明媚な白砂青松に観客は魅了され、清々しさを感じられる演目です。

”或は天つ御空の緑の衣、または春立つ霞の衣、色香も妙なり少女(おとめ)の裳裾、左右左。左右颯々の、花をかざし天の羽袖、なびくも返すも、舞の袖。”
「羽衣」の台詞より

有名な演目の多い四番目物

雑能とも呼ばれ、他の4つの分類に当てはまらない演目がここに分類されます。愛しい者との別れや、死別などにより、狂ったようになってしまう女性をシテに書かれた、いわゆる物狂いの能も四番目物とされます。「葵上」「井筒」「隅田川」「砧」などの演目があります。その他にも、「安宅(あたか)」「自然居士(じねんこじ)」など様々な能が四番目物に含まれます。

一途な思い故に蛇に姿を変える女「道成寺」

恋した男を思う一途な思いの果てに情念の化身となり、蛇体に姿を変えてもなお思いを遂げようとする女の物語「道成寺」。能の中では有名な演目です。物狂い、などと呼ばれると怖いイメージが湧きますが、一途な女性の心が描かれている演目と思うと、切ない気持ちになりますね。

鬼退治や悪人成敗、五番目物

鬼や天狗、龍神など、人間以外の異形の物がシテを演じる演目です。切能(きりのう)とも呼ばれます。「鞍馬天狗」「土蜘蛛」「安達ケ原」「船弁慶」、などがあります。一日の最後に演じられる演目で、豪華絢爛、派手な舞台回しが特徴です。

能は優雅に演じられる演目だけでなく、五番目物のように威勢のよい演目もあるのです。見ている観客も、えいやっ、と鬼退治の場面では盛り上がりそうですね。その他の五番目物の演目、「融(とおる)」では、優美な舞を主体として演じられます。

平家物語をもとに書かれた能の演目

能「敦盛」のあらすじについて

二番目物には世阿弥の残した名作が多くあります。平家物語を題材にした「敦盛」は、須磨を舞台に、若い命を散らした平家の平敦盛と、我が息子と年の頃も同じ敦盛、その敦盛の命をわが手で奪った源氏方の武将、熊谷直実の二つの魂が永い呪縛から救われる様を演じます。

一ノ谷の戦いを回想し須磨の浜辺にたたずむ蓮生法師の前に、敦盛の亡霊が美しい武者姿で現れ、平家一門の哀しい末路を語り舞を舞う。やがて討たれた恨みを思い出し、刀を蓮生(熊谷直実)に向けるが…

"同じ蓮(はちす)の蓮生法師(れんじょうほうし)、敵にてはなかりけり”

この言葉に、二人の武将の魂は永い呪縛から自由になり、敦盛は重ねて蓮生に回向を願うのです。

源平合戦にゆかりの深い須磨寺

兵庫県神戸市須磨区には、源平合戦にゆかりの深い寺院があります。須磨寺内の源平の庭には、平敦盛と熊谷直実の一騎打ちの像があり、わずか16歳の若い命を散らした敦盛の無念、彼を助けたくとも出来なかった熊谷直実の胸の内を思うと、二人の武将の悲しみに満ちた像のように思えてきます。

敦盛が死の間際まで大切にしていた青葉の笛、敦盛公錦絵など貴重な宝物も所蔵されています。また敦盛塚(首塚)、敦盛首洗いの池などの史跡もあります。

能の演目について、まとめ

平家物語を元に書かれた「清経」や「敦盛」、源氏物語の登場人物「葵上」など、古典文学で馴染み深い名前の能の演目がいくつも出てきましたね。また、能の分類をみていると、実に様々な曲趣の能の演目があって、どの分類の能も見てみたくなります。

能の演目について事前に少し調べてから能を鑑賞すると、より深く能の世界に触れることができると思います。能は難しそう、そんなふうに構えたりしなくても大丈夫ですよ。日本の誇る古典芸能、能をもっと身近に感じてみましょう。

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