1本、2本だけではない、いくつかある正しい日本刀の数え方

日本が誇る伝統美術工芸品の刀、武器としての使われることはほぼないですが、美しい刀身は見る者を魅了してくれます。一般的には「1本、2本」の数え方をする刀ですが、実は他にも数え方があることをご存じですか?刀の持つ魅力とともにご紹介させていただきます。

目次

  1. 正しい日本刀の数え方を知りましょう
  2. 上古代から続く刀の原型、太刀
  3. 室町以降、多くの武士に愛用された打刀
  4. 「揃」という独特の数え方の脇差
  5. 懐に忍ばせたりして使用した小刀、短刀
  6. 広く知られる代表的な名刀、天下五剣
  7. 数え方、由来からさらに楽しめる刀

正しい日本刀の数え方を知りましょう

困った人々

日本刀には大まかにわけて、太刀(たち)・打刀(うちがたな)・脇差(わきざし)・短刀(たんとう)の4種類が存在しており、形状や大きさも大きく異なり、その呼び方も様々です。この記事ではそれぞれの成り立ちなどとともに数え方についてもご紹介していきたいと思います。

上古代から続く刀の原型、太刀

「一口り」の原型となった直刀

古くは古墳時代から鉄製の刀はすでに精製されており、その頃は今の刀のように反り返った形ではなく、大きな直刀でした。これら大きめの刀のことを「太刀」と呼び、その数え方は、一口り(ひとふり)といい、別読みで一口(ひとくち)とも呼ばれました。これが後に一振り(ひとふり)言う数え方に変わったのだとされています。
ここから、一振り(ひとふり)または一口(ひとくち)などという数え方が定着したのでしょう。

平安以降、多く使用されるようになった湾刀

平安頃から直刀ではなく反りのある湾刀が多く作られるようになり、武士階級ものもが多く腰にこの刀を差すようになったことから、腰(こし)という数え方もされるようになってきました。徐々に刀とは武士が腰に差す武器というイメージができあがってきたために数え方も変化したのでしょう。

室町以降、多くの武士に愛用された打刀

武士階級の隆盛とともに数多く作られた打刀

室町・戦国時代を経て、刀とは武士の象徴ともいえる武器となり、名刀を持つことは武士にとってステータスとなりました。この頃になると刀を上向きにして腰に挟み込んだ差料(さしりょう)スタイルが一般的になっており、太刀よりも細く優美な曲線の現在の刀に近い打刀を使用するようになりました。
打刀はこれまでの刀の呼び方に加えてさらに、刀(とう)・剣(けん)・口(こう)などの数え方もあり、多くの武士にとってかけがえのない武器となったのです。

戦国・江戸・幕末と時代を経て変化した打刀

戦国時代は主に歩兵が使う武器として使用されてきた打刀も、平和な江戸期に入ると身分によって長さが規制され、刀身も小さくなってしまいました。しかし、幕末期になると志士たちはこぞって刀剣を買い集め、より実践向きの太刀並みの刀身を持つ打刀も作られるようになっていったのです。必要性に応じて刀身の長さを変化させていった打刀はまさに時代をうつす鏡といえるでしょう。

「揃」という独特の数え方の脇差

さて、前述してきた太刀や打刀は主として使う武器でしたが、腰にサブウェポンとして差していたのが「脇差」です。だいたい刃渡り2尺未満(約60㎤)の長さで、数え方も打刀と同様の「口」・「刀」・「振」や刀と合わせて「揃」(そろい)と呼ぶ場合もあります。また、いわゆる帯刀が許されていない身分の者が持っていた鍔なしの脇差や刀身の長い長脇差(どす)は「本」(ほん)の他にも「挺」(ちょう)といった変わった数え方もされます。

懐に忍ばせたりして使用した小刀、短刀

刀の分類の中ではもっとも短い武器である短刀は、刃渡り1尺未満であり、主に投擲用武器として使用されていました。刺刀(さすが)、懐刀、小柄がこれにあたり、「口」(く)・「丁」(ちょう)・「本」の数え方となります。緊急用の武装として、打刀の鞘内部の溝に装着するものもありました。

広く知られる代表的な名刀、天下五剣

酒呑童子を切ったという伝説の「童子切」

平安時代の刀工・大原安綱によって作られた名刀で、刃渡り80.3㎤、陣太刀様式の美しい拵えとなっており、大包平と共に「日本刀の東西の両横綱」とも絶賛されています。「童子切安綱」という名は源頼光が酒呑童子の首をはねたという逸話から名づけられたもので、その鋭い切れ味はまさに天下の剣に相応しいものでしょう。現在は国宝として東京国立博物館が所蔵しています。

一振りで銀を切った名刀「鬼丸国綱」

刀工・粟田口国綱によって鎌倉時代初期に製作された名刀で、刃渡り78.2㎤の大きく反り返った「輪反り」と呼ばれる刀身が特徴です。国宝であり、皇室所蔵の御物(ぎょぶつ)であるため、一般公開はされていません。
北条政子の父である北条時政が病を患った際、鬼丸国綱の精が夢にあらわれ「あなたを助けたいのですが、埃と錆びで刃が抜けず助けられません」と告げます。さっそく時政は刀の手入れをさせ抜き身のまま柱に立てかけると、刀はひとりでに倒れ火鉢の台にあった小鬼の銀彫物を切り倒してしまいました。その後、時政の病は回復に向かったのです。この逸話からもこの刀がいかに鋭い切れ味であることかがわかるでしょう。

優美な曲線が魅力の名刀「三日月宗近」

平安時代の刀工・三条宗近による「刀身に鎬と反りのある典型的な日本刀」としてはもっとも古いものひとつとされています。天下五剣の中でももっとも美しいと評される刀で、刀身に三日月形の打除けが多くみられることからこの名が付けられました。国宝に指定されている数少ない刀剣のひとつで、東京国立博物館に所蔵されています。

幅の広い刀身が特徴的な「大典太」

平安時代の刀工・三池典太光世(みいけでんたみつよ)の作で、刀身66.1㎤、深くそり込んだ幅広い堂々とした佇まいから「大典太」と名づけられました。三日月宗近と並び称される名刀で、こちらも国宝に指定されており、現在は石川県立美術館に保管・展示されています。

名工が作り上げた業物「数珠丸」

平安時代の刀工・青江恒次(あおえつねつぐ)の作とされてきましたが、その特徴から鎌倉初期に活躍した備前恒次(びぜんつねつぐ)の作ではないかとも言われています。刀身81.1㎤の太刀で、もともとは日蓮宗海藻の日蓮上人の懐刀で、破邪顕正の太刀とされていました。現在は兵庫県尼崎市の本興寺が所蔵しており、天下五剣の中で唯一、重要文化財となっています。

数え方、由来からさらに楽しめる刀

人々

日本刀の数え方および、その理由をご紹介してきました。博物館や美術館に展示されている刀はどれも、古い由来を持っており、その由来を知ることでより楽しむことができます。この記事で少しでも刀に興味を持たれた方はぜひ、展示に足をお運びになってください。実物を目の当たりにすることで、きっとより深い感動を味わえるでしょう。

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