枕草子入門 冒頭の「春はあけぼの」から「冬はつとめて」まで

枕草子に出会った中学生の頃、古文を外国語のように思った人もいたことでしょう。。久しぶりに枕草子の冒頭を読み返してみましょう。授業と無関係に、今感じている季節感と清少納言が枕草子の冒頭に書いた内容を比べた時、大人になったからこそ気づくことがあるかもしれません。

目次

  1. 枕草子とは
  2. 枕草子 冒頭部分の書き出し 春はあけぼの
  3. 夏は夜
  4. 秋は夕暮れ
  5. 冬はつとめて
  6. 枕草子 冒頭部分について まとめ

枕草子とは

枕草子とはどのような作品か

枕草子は西暦1001年(長保1年)頃に草稿本ができたいわれる随筆です。
これは、方丈記・徒然草とともに日本の三大随筆とされています。

作者 清少納言

清少納言は学者・歌人の家系に生まれています。
生没年時は不明で、966年(康保3年)頃に生まれ1025年(万寿2年)頃没したという説があります。
若い頃に橘則光と結婚し一児をもうけましたが離婚し、藤原実方と親しい関係にあったとされます。
993年(正暦4年)に一条天皇の中宮定子のもとに出仕しました。

枕草子 冒頭ついて

「春はあけぼの」に始まる枕草子には、作者の美的な世界を体系的に分類し説明した段、随想の段、日記・自伝の段の3つに大きく分けられます。
非常に有名な冒頭の段は、美的な世界を体系的に分類し説明した段のひとつです。
枕草子の全体を流れるのは「をかし」の心です。
紫式部の「あはれ」が深いしみじみとした情趣と解釈されるのに対して、「をかし」は対象を知性的にとらえて批評することによっておこる興味、趣と解釈されます。
四季について、自身が感じる美しさや興味を述べている冒頭部分はとりわけ清少納言の「をかし」の心を象徴していると言えます。

枕草子 冒頭部分の書き出し 春はあけぼの

では、枕草子冒頭の「春はあけぼの」から順に「冬はつとめて」まで、原文のことばの流れをゆっくり味わったあと、その下に付け加えた現代語訳を読んで意味を確認してみましょう。

原文

春はあけぼの。
やうやう白くなり行く、山ぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたびきたる。

現代語訳

春は夜明けに心惹かれる。
次第に白くなっていく、空と山の稜線が交わるあたりが少し明るくなって紫色がかった雲が細く細くたなびいているのはとても風情がある。

ことば

枕草子冒頭の中でもあまりにも有名な部分です。
「あけぼの」とは、東の空が白んで開け始めている状態をいいます。
夜明け前のまだ暗いときをさす暁、日の出前の明るくなるときをさす朝ぼらけの間に位置します。
「やうやう」は、次第に、だんだんに、という意味の副詞です。

夏は夜

原文

夏は夜。
月のころはさらなり。
やみもなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。
雨など降るもをかし。

現代語訳

夏は夜に心惹かれる。
月の出ていない夜も、蛍がたくさん入り乱れて飛んでいるのがおもしろい。
また、たった一匹二匹などとほのかに光って飛んでいくのも趣深い。
雨などが降るのも趣深い。

ことば

「うち光る」の「うち」は接頭語です。
動詞について、語調を整えたり下の動詞の意味を強調したりします。
漢字にすると「打ち光る」「打ち聞く」となります。
うち光るは、ちょっと光って、といった意味です。

秋は夕暮れ

原文

秋は夕暮れ。
夕日のさして山の端いと近うなりたるに、からすの寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。
まいて雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。
日入りはてて、風の音、虫のねなど、はたいふべきにあらず。

現代語訳

秋は夕暮れが心惹かれる。
夕日がさして山の端にとても近くなっているところに、からすが寝どころに行こうと三羽四羽、二羽三羽などと飛び急ぐのも趣深い。
ましては雁などが連なって飛んでいるのが、とても小さく見えるのはしみじみとした情趣がある。
日没後に、風の音や虫の鳴き声などが聞こえるのも、いまさら言うまでもない。

ことば

枕草子冒頭の四季の中でも、秋の段落は特に情景が鮮やかに目に浮かぶ叙述です。
「まいて」は、副詞で「まして」のイ音便です。
漢字にすると「況いて」です。

冬はつとめて

原文

冬はつとめて。
雪の降りたるは、いふべきにもあらず。
霜のいと白きも、また さらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もてわたるも、いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。

現代語訳

冬は早朝が心惹かれる。
雪が降っている朝はいうまでもない。
霜のたいへん白い朝も、またそうでなくても非常に寒い朝に火を急いでおこして、炭を持ってまわるのもとても似つかわしい。
昼になってだんだん寒さがやわらいでくると、火桶の火も白い灰ばかりになってみっともない。

ことば

「つとめて」は早朝の意味です。
同じ枕草子で『雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまにをかし』(木の花は)と。
翌朝の意味で使われています。
これは『雨の降った翌朝などは、まととなく心惹かれる様子で趣深い』ということです。
「わろし」はく活用の形容詞です。
よくない、好ましくない、みっともない、つたない、といった意味です。

枕草子 冒頭部分について まとめ

いかがでしたか。
、枕草子の冒頭を、学校の授業を離れて読んでみて、何か新しい発見はありましたか。
これをいい機会に「すさまじきもの、昼吠ゆる犬。
春の網代。
三、四月の紅梅の衣」(第25段)や、「うつくしきもの。
瓜に描きたるちごの顔。
すずめの子の、ねず鳴きするに踊りくる」(第151段)など、他の段も味わってみてはいかがでしょう。
時代は違っても共感することが多かったり、作者の感覚を面白く感じたりすることでしょう。
古語辞典を傍らに置いておくのがベストですが、インターネットでも手軽に意味を調べることができますので、まずは古典の文法にあまり縛られずに、おおらかに楽しんでみましょう。
また、冒頭部分を春から冬まで暗記して、そらで言えるようにするとよいでしょう。
現代語で完璧に解釈できなくても、自然にくちをついて出てくるほどになれば清少納言が冒頭で言いたかったフィーリングのようなものが理解できてくるものです。
果たして、今あなたが日々感じている季節感と、清少納言が枕草子の冒頭で見事に語っている四季それぞれの所感は似通っているでしょうか。

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